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夏のインフルエンザが増えています-首都圏でも流行開始の水準に

[2026.08.25]
首都圏でインフルエンザの報告数が増え続けています。神奈川県は8月20日に「流行が始まった」と発表しました。昨年より1か月半ほど早い時期です。埼玉県もすでに流行開始の目安を超えており、東京都・千葉県でも数字が上がっています。まだ冬のような大きな流行ではありませんが、「夏だからインフルエンザではない」とは言えなくなりました

最終更新:2026年9月1日(初回掲載:8月25日)

9月1日 追記 この記事のあと、8月17〜23日の1週間で全国の報告数が流行開始の目安を超え、8月28日に厚生労働省が流行入りを発表しました。当院のワクチン接種の開始時期(9月下旬を予定)とあわせて、続報「インフルエンザが8月に流行入り-当院はワクチン接種を9月下旬に前倒しします」にまとめています。

1.首都圏でも流行開始の水準に達しました

神奈川県は8月10〜16日の1週間で1.37となり、昨年より1か月半早く流行開始の目安を超えました。

 インフルエンザの流行は、全国約5,000か所の「定点医療機関」から毎週報告される患者数で把握されています。1つの医療機関あたり何人の患者さんが報告されたかを示す数字を「定点当たり報告数」といい、この値が1.0を超えると流行の始まりとみなすのが一般的な目安です。

 この夏、その1.0を超える地域が首都圏に広がってきました。神奈川県は8月10〜16日の1週間で1.37となり、流行開始を発表しています。昨年は9月下旬に1.0を超えたので、1か月半ほど早い流行入りです。埼玉県もその前の週(8月3〜9日)にすでに1.09に達していました。

どの地域も、4週続けて数字が上がっている

表1 インフルエンザ定点当たり報告数の推移(2026年7月13日〜8月9日・週ごと)

地域 7/13〜19 7/20〜26 7/27〜8/2 8/3〜9
全国0.200.240.370.52
千葉県0.270.340.470.55
東京都0.230.330.720.84
神奈川県0.340.310.510.93
埼玉県0.250.230.891.09
沖縄県0.861.822.202.30

出典:国立健康危機管理研究機構 感染症発生動向調査(IDWR速報データ)。赤い行は1.0を超えた地域

図1 インフルエンザ定点当たり報告数の推移(2026年7月13日〜8月9日・週ごと)

出典:国立健康危機管理研究機構 感染症発生動向調査(IDWR速報データ)

 表1のとおり、全国の値も0.20→0.24→0.37→0.52と4週続けて増えました。患者報告数でみると749人から1,926人へ、3週間でおよそ2.6倍です。全国平均としてはまだ1.0に届いていませんが、増え方ははっきりしています。神奈川県はこのあと、8月10〜16日に1.37まで上がりました。

お盆の時期は休診の医療機関が多く、報告数が実際よりも少なめに出ることがあります。8月3〜16日の数字は、実際の流行より控えめである可能性を含んで見ておくのが妥当です。

2.お住まいの地域はどうか

同じ県のなかでも、地域によって数字はかなり違います。

 流行は都道府県単位でも、さらに細かい保健所の管内単位でも差が出ます。東京都は全体では0.84ですが、都内6か所の保健所ではすでに1.0を超えています。「県全体の数字が低いから大丈夫」とは限りません。

 当院のある千葉県を例に、保健所の管内ごとに分けてみます。

同じ県内でも、1.0を超えた地域とそうでない地域がある

表2 千葉県内の保健所管内別 定点当たり報告数(2026年8月3〜9日)

保健所管内定点当たり報告数流行開始の目安(1.0)との比較
印旛1.09上回っている
海匝1.00目安に達している
松戸0.70下回っている
市川0.69下回っているが県平均より高い
千葉市0.67下回っている
県全体0.55下回っている

出典:千葉県感染症情報センター 感染症週報(速報値)

 県全体は0.55ですが、印旛と海匝はすでに1.0に達しています。当院のある市川保健所管内は0.69で、県平均を上回っています。市川市は江戸川をはさんで東京都と隣接し、都内への通勤・通学で日常的に人が行き来する地域です。県境で流行が止まるわけではありませんので、東京都(0.84)や神奈川県(すでに流行開始)の数字も合わせてご確認いただくことをおすすめします。

 なお千葉県の迅速検査の結果では、8月3〜9日に報告された70例のうち約86%がA型でした。当院でも8月に入りインフルエンザ陽性の方が見られており、8月25日時点ではA型の方ばかりです。いま関東で優先して考えるべきは、まずA型インフルエンザの可能性が高いでしょう。

3.夏でもインフルエンザにかかります

 「インフルエンザは冬の病気」という印象が強いと思いますが、これは日本の冬の乾燥した空気がウイルスの生き残りに適していることや、人が屋内に集まりやすいことによるものです。ウイルス自体は一年を通じて存在しており、条件がそろえば夏でも人から人へ広がります。

 冷房のきいた閉め切った室内で過ごす時間が長いこと、帰省や旅行、夏のイベントで人が集まって移動することも、夏の広がりやすさにつながります。流行している地域からウイルスが持ち込まれるという経路も、この時期には無視できません。

今の首都圏の水準は、冬の大流行と比べればまだごく小さいものです。過度に心配する必要はありません。しかし、実際の発生状況を踏まえると、8月であってもインフルエンザの可能性を視野に入れておきたいところです。

4.夏かぜや新型コロナとの見分け方

 この時期は、ヘルパンギーナや手足口病といった「夏かぜ」、そして新型コロナウイルス感染症も流行します。症状が重なる部分が多く、見た目だけで区別するのは簡単ではありません。それでも、症状の出方には次のような傾向の違いがあります。

インフルエンザは「急に」「全身から」始まる

表3 インフルエンザと夏かぜの症状の出方の傾向

項目インフルエンザ夏かぜ(ヘルパンギーナ・手足口病など)
熱の出方急に38℃以上まで上がることが多い比較的ゆるやかで、高熱にならないことも多い
全身の症状関節痛・筋肉痛・強い倦怠感が目立つ全身症状は比較的軽い
のど・口の中のどの痛みは熱のあとから出ることが多いのどの奥の水疱や口内炎が主役になりやすい
咳・鼻水発熱に少し遅れて出てくることが多い初めから出ることが多い
その他皮膚の症状は基本的になし手足の発疹をともなうことがある

 ただし、これはあくまで傾向です。とくに新型コロナウイルス感染症は、急な発熱・のどの痛み・倦怠感といった症状がインフルエンザとほぼ重なるため、症状だけで区別することはできません。どちらであるかで治療法が変わってきます。はっきりさせるには検査が必要です。

5.検査と受診を考えるタイミング

 この時期でも、次のような場合はインフルエンザの検査を組み合わせて考えます。受診の際は、熱が出た日時と、周りに同じような症状の方がいるかどうかをお伝えください。

急に38℃以上の熱が出て、関節や筋肉が痛むのどの痛みや咳より先に、全身のつらさが目立つ場合です。
家族・職場・保育園や学校に、似た症状の方がいる身近に同時期の発熱者がいるときは、うつり合っている可能性を考えます。
帰省・旅行・イベントのあとに発熱した報告数が多い地域との行き来があった場合は、とくに念頭に置きます。
新型コロナの検査が陰性でも、症状が強いコロナが陰性であることは、インフルエンザではないことを意味しません。
インフルエンザの薬は、発症からおおよそ48時間以内に飲み始めることで効果が期待できます。熱が出てから何日も様子をみると、薬を使う意味が小さくなります。受診を迷われる場合は、熱が出た日を目安にご判断ください。

 なお、発熱してすぐは検査で反応が出ないことがあります。当院では、発熱してからの時間と症状を踏まえて、検査の時期をご相談しながら決めています。

6.重症化しやすい方は早めにご相談ください

 インフルエンザは多くの方で数日から1週間ほどで回復しますが、次のような方では肺炎などを起こしやすく、持病そのものが悪化することもあります。

65歳以上の方体力や免疫の働きが下がり、肺炎を起こしやすくなります。
5歳未満のお子さん(とくに2歳未満)症状の進み方が早く、脱水や熱性けいれんを起こすことがあります。
妊娠中の方妊娠中は肺への負担が大きく、重症化しやすいことが知られています。
ぜんそく・COPDなど慢性の呼吸器の病気がある方気道の炎症が強まり、発作や呼吸困難の引き金になります。
心臓病・糖尿病・腎臓病・透析中の方、肝臓の病気がある方発熱や脱水で全身の状態が崩れやすく、持病の悪化につながります。
ステロイド・免疫抑制薬・抗がん剤を使っている方感染に対する抵抗力が下がっており、回復にも時間がかかります。
息が苦しい、呼びかけへの反応が鈍い、水分がとれない、けいれんを起こした——こうした場合は、時間帯にかかわらずすぐに医療機関を受診してください。とくにお子さんと高齢の方では、急に悪化することがあります。

 持病があり、いつもの薬を飲みながら熱が出た場合、薬を自己判断で中止したり量を変えたりしないでください。とくに糖尿病・心不全・腎臓病などで水分や塩分の指示を受けている方は、発熱時の水分のとり方などご相談ください。

7.今からできる予防とワクチンの時期

 特別なことは必要ありませんので、まずは日頃の基本的な感染症対策を改めて意識して過ごしていくことが大切です。

外出後と食事の前の手洗い石けんと流水で20秒ほど洗います。
症状があるときのマスク自分がうつさないための対策として有効です。
冷房中の室内も定期的に換気する閉め切った室内で人が集まる時間を短くします。
熱が出たら無理をして出勤・登校しない職場や学校での広がりは、ここで止められます。

 学校保健安全法では、インフルエンザと診断された場合、発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまでを出席停止の期間としています。熱が下がった翌日にすぐ登校できるわけではない点にご注意ください。

ワクチンは夏の流行には間に合いません

 インフルエンザワクチンは、例年10月から接種が始まり、効果が出るまでに接種から2週間ほどかかります。今回の夏の増加に間に合わせることはできませんが、本格的な流行期である秋から冬に向けての備えとしては変わらず有効です。今シーズンは流行の立ち上がりが例年より早いため、とくに上に挙げた重症化しやすい方は、接種が始まり次第、早めに受けられることをおすすめします

 (9月1日 追記)当院では今シーズン、自費(任意接種)の開始を例年より前倒しし、9月下旬を予定しています。開始日はワクチンの入荷状況によりますので、決まり次第ホームページ・インスタグラム・Xでお知らせします。詳しくは「インフルエンザが8月に流行入り-当院はワクチン接種を9月下旬に前倒しします」をご覧ください。

まとめ

 2026年8月現在、インフルエンザの報告数は全国で増え続けています。神奈川県は8月10〜16日の1週間で1.37となり、昨年より1か月半早く流行開始の目安を超えました。埼玉県もすでに1.09に達しており、東京都・千葉県でも数字が上がっています。県全体の数字が低くても、お住まいの地域はそうとは限りません。

 急な高熱と全身のつらさがあるとき、身近に同じ症状の方がいるとき、報告数の多い地域との行き来があったときは、この時期でもインフルエンザを考えます。薬は発症から48時間以内が目安ですので、様子をみすぎずご相談ください。

参考文献・参考情報

 

 

【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)

市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医

 

略歴

2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修

2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科

2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学

2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業

2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教

2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任

その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任

 

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