アメリカ合衆国における鳥インフルエンザ(H5N1)の感染状況
2024年春、アメリカ合衆国テキサス州で高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスのヒトへの感染が確認されました。鳥インフルエンザに感染が疑われる乳牛と接触し、その後H5N1鳥インフルエンザ陽性を示したとのことです。この患者は目の充血(結膜炎)という症状がありましたが、抗ウイルス薬による治療を受けたということでした。
6.今後の注意点
鳥インフルエンザは、主に鳥に影響を与えるウイルスですが、稀に人間にも感染することがあります。感染が人間に広がるケースはまれで、一般の人々に対する健康リスクは低いとされていますが、鳥やその他の動物との直接的な接触がある場合は特に注意が必要です。
潜伏期間はおよそ2日~9日で、感染初期には発熱、咳、全身倦怠感、筋肉痛など全身症状などを示します。重症化すると肺炎や全身の臓器が異常な状態(多臓器不全)になり、死亡することもあります。
厚生労働省によりますと、鳥類の感染事例は、2024年3月現在、欧州、アジア、北米、南米において報告が続いています。ヒトでの感染事例は、2003年から2024年2月26日時点までに東南アジアを中心に報告されています。
図1.世界におけるこれまでの鳥インフルエンザの発生状況
アメリカ合衆国では、2024年5月12日時点で、乳牛や家禽類を中心に高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)ウイルスが拡大しています。ヒトへの感染も2例報告されており、1例目はテキサス州で乳牛から感染したとされ、2例目はコロラド州で家禽から感染したとされています。
5月に入り、米国疾病管理予防センター(CDC)は、鳥やその他の動物の保護区で働く人々、養鶏場や酪農場の労働者、鳥の飼育にかかわる人々、鳥インフルエンザの発生に対応する人々に対して、「手袋、N95 マスクまたはフェイスマスク、目の保護具 (例: ゴーグル) などの保護具」を使用するようにと通達を出しました。また、手洗いや汚染された保護具は速やかに廃棄するなど、徹底した感染対策を進める必要があることも発表しました。これらの通達は感染がより拡大していることを示しており、今後さらに注意が必要であることを示しています。
米国CDCの2024年5月12日時点での情報によりますと、図2の9つの州でのH5N1鳥インフルエンザの感染が確認されています。乳牛や鳥類、ネコなどにも感染が確認されています。
図2.アメリカでの鳥インフルエンザの州別発生状況
現在は動物→ヒト感染が2名確認されています。通常のインフルエンザや新型コロナウイルスの検査では鼻やのどのぬぐい液で検査をしていますが、今回の鳥インフルエンザのヒトへの感染で結膜炎の症状もあったことから、眼球綿棒でのぬぐい液を用いた検査も検討されています。また、アメリカの国家備蓄としての個人防護具の使用も検討されているようです。
図3.鳥インフルエンザの感染段階
現時点では図のようにヒトからヒトへの感染は確認されていませんが、新たな変異に加わることにより、ヒトからヒトへ感染するようになる可能性も危惧されています。新たなインフルエンザウイルスでは感染が蔓延する可能性も少なくなく、今後の発生状況に十分注意が必要です。また、発生地域から帰国された方に発熱などの症状がある場合は、医療機関を受診する際、鳥インフルエンザの発生地域に渡航していたことをお知らせください。