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RSウイルスワクチン(アブリスボ)ー妊娠中の接種で生まれてくる赤ちゃんを守る

[2026.04.02]

 RSウイルスは、赤ちゃんの細気管支炎や肺炎の原因になる代表的なウイルスです。特に生後まもない時期は重症化しやすく、入院が必要になることもあります。2026年4月から、妊婦さんを対象としたRSウイルス母子免疫ワクチン(アブリスボ)が定期接種の対象になりました。ここでは、ワクチンの対象者・効果・副反応のほか、出産予定日から接種時期の目安がわかる計算ツールもご案内します。

 

1.RSウイルスは、なぜ妊婦さん向けワクチンの対象になったのか

 RSウイルスは、2歳までにほぼすべての子どもが少なくとも1回は感染するとされるほどありふれたウイルスです。ただし、生後まもない乳児では、細気管支炎や肺炎などの下気道感染症を起こしやすく、呼吸状態が悪くなって入院を要することがあります。

 

 生まれたばかりの赤ちゃんは、自分で十分な抗体をつくる力がまだ未熟です。出生時点でどれだけ抗体をもっているかが、重症化の多いRSウイルス感染症対策として重要になります。そこで、妊婦さんが妊娠中にワクチンを受け、母体でつくられた抗体を胎盤を通じて赤ちゃんへ移行させる「母子免疫」という考え方が、RSウイルス対策として用いられるようになりました。

 

2.定期接種の対象と接種時期

 ・対象: 接種時点で妊娠28週0日~36週6日の妊婦の皆様

 ・回数: 1回(筋肉内注射)

 ・ワクチン名: アブリスボ(組換えRSウイルスワクチン)

 ・目的: お母さんご自身の感染予防ではなく、赤ちゃんを出生直後から守るためのワクチンです

 ・費用: 市川市では、対象の妊婦さんは自己負担なし

 ・過去の妊娠で接種済みの方: 今回の妊娠であらためて対象になります

 ・持ち物: 予診票、本人確認書類、母子健康手帳

 

3.RSウイルスワクチンの接種時期はいつ?妊娠週数から自動計算

 接種後14日以内に出生した乳児での有効性は確立していません。そのため、出産予定日の14日前までに接種を済ませておくことが望ましいとされています。

 RSウイルスワクチン(RSワクチン、RSVワクチン)をいつ打つのかわからない方は、下記の計算ツールをご利用ください。出産予定日を入力すると、RSウイルスワクチンの推奨接種期間を自動計算します。

 

RSウイルスワクチン 接種時期チェック

出産予定日を入力すると、接種対象期間の目安がわかります

出産予定日

 

 

4.ワクチンの効果

 このワクチンは、妊婦さんご本人のRSウイルス感染予防を目的にしたものではなく、出生後の赤ちゃんの下気道感染症を減らすことを目的としています。臨床試験(MATISSE試験)では、以下の予防効果が示されています。

 

受診を要した下気道感染症(MA-LRTI)

 ・生後90日まで  約57%

 ・生後180日まで   約51%

 

重症下気道感染症

 ・生後90日まで  約82%

 ・生後180日まで   約69%

 

 ここでいう重症下気道感染症は、単なる咳や鼻水ではなく、頻呼吸、SpO2 93%未満、高流量酸素投与や人工呼吸器の使用、4時間を超えるICU管理、無反応や意識障害などを伴う重い状態として定義されています。つまり、このワクチンは「かぜを少し減らす」というよりも、入院や重症化につながるRSウイルス感染症を減らすという意味合いが大きいと考えるのがよいでしょう。

 

5.副反応と安全性

 主な副反応は、注射部位の痛み、頭痛、筋肉痛です。接種部位の赤みや腫れがみられることもあります。頻度は高くありませんが、ショックやアナフィラキシーの可能性があるため、接種後は院内でしばらく経過をみます。

 

 妊婦さんへの接種で報告されている主な副反応は、注射部位の痛みが40.6%、頭痛が31.0%、筋肉痛が26.5%です。接種部位の赤みや腫れは10%未満です。妊娠高血圧症候群との関連については、海外の一部報告で議論がありますが、アブリスボの承認時臨床試験(MATISSE試験)ではリスク増加は認められていません。ただし、妊娠高血圧症候群のリスクが高い方やこれまでに診断歴がある方では、接種の可否や時期を産科主治医と相談しながら判断するのがよいでしょう。

 

6.接種を受けられない方・注意が必要な方

 このワクチンの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方は接種できません。発熱している方や、重い急性疾患にかかっている方も接種を延期する必要があります。

 

 血小板減少症、凝固障害、抗凝固療法中(いわゆる血液サラサラの薬を内服中)などで筋肉注射に注意が必要な方は、事前に医師へご相談ください。重いアレルギー歴のある方、妊娠高血圧症候群のリスクが高いと判断される方も、接種の可否を個別に検討します。

 

7.他のワクチンとの同時接種

 アブリスボは不活化ワクチンです。多くのワクチンと同時接種が可能で、異なる種類のワクチンとの接種間隔に一律の制限はありません。ただし、接種するワクチンの種類や体調により、個別に医師が確認します。

 

 ただし、百日咳の成分を含むワクチン(日本では三種混合ワクチン=DPTワクチンが該当します)との同時接種で、百日咳に対する免疫応答が低下したとの海外での報告があります。現在の日本では、成人の妊婦さんにDPTワクチンを接種することがほとんどないため、多くの方にとっては直接関係しません。直近で百日咳ワクチンの接種歴がある方や接種予定の方は、個別にご相談ください。

 

8.帝王切開や早産リスクがある場合

 帝王切開の予定がある方は、手術日から逆算して接種時期を決められるのが利点です。ワクチンの効果を確保するには、接種から出産まで14日以上の間隔が必要です。たとえば、38週0日に帝王切開を予定している場合、36週0日までに接種すれば14日間を確保できます。切迫早産の可能性を指摘されている方は、予定より早い出産になることも想定して、対象週数に入ったらなるべく早めに接種を検討するのがよいでしょう。

 

 いずれの場合も、産科主治医の先生と接種時期を相談したうえで、当院にお越しいただくのが確実です。

 

9.よくあるご質問

Q.前の妊娠でRSウイルスワクチンを受けました。今回の妊娠でも受けられますか。

A.はい。毎回の妊娠ごとに対象になります。移行抗体は時間とともに減少するため、前回の妊娠で得た抗体が次の赤ちゃんを十分に守れるとは限りません。定期接種として毎回公費で受けられます。

 

Q.36週に入ってからでも受けられますか。

A.対象期間内(36週6日まで)であれば接種は可能です。ただし、出産までに14日以上の間隔が確保できないと、赤ちゃんへの抗体移行が十分でない可能性があります。接種を検討されている場合は、出産予定日をお伝えください。なお、市川市では、対象期間内であれば、出産予定日が14日以内に迫っている場合でも、説明と同意のうえ定期接種として接種可能と案内されています。

 

Q.妊婦健診を受けている産科からの紹介状は必要ですか。

A.当院のアブリスボ接種では、産科からの紹介状(診療情報提供書)は必要ありません。ただし、妊娠経過に特別な注意事項がある場合(妊娠高血圧症候群のリスク、切迫早産など)は、産科主治医にワクチン接種について確認しておいていただくと安心です。母子健康手帳をお持ちください。

 

Q.赤ちゃんを守る方法はワクチンだけですか。

A.出生後の乳幼児に対するモノクローナル抗体製剤(シナジス、ベイフォータスなど)という選択肢もありますが、現時点では定期接種の対象ではありません。適応は小児科や産科で個別に判断されます。

 

10.少し専門的なお話

 RSウイルスワクチンの開発では、prefusion F(融合前F)蛋白が重要な標的です。RSウイルスは細胞へ侵入するときにF蛋白の立体構造が変化しますが、融合前の構造のほうが中和抗体を誘導しやすいことがわかっています。アブリスボは、RSV-AとRSV-Bの両方の融合前F蛋白を抗原として含む二価ワクチンで、赤ちゃんに移行する中和抗体を高める設計になっています。

 

 また、母体接種から出産までの期間が14日未満の群や14日から29日の群では、30日以上の群と比べて出生児の中和抗体価が低いことが示されています。そのため、対象週数に入ったら遅くなりすぎる前に接種を検討することが大切です。

 

11.接種をご希望の皆様へ

 妊娠週数、出産予定日、産科での指摘事項、他のワクチン予定などによって、適切な接種時期は少しずつ異なります。ご希望の方は、母子健康手帳をご用意のうえ、オンライン予約ではなく、お電話でのご予約をお願いいたします(TEL 047-702-5508)

 

 

※ 本ページは、2026年4月の厚生労働省、PMDA、市川市の公表情報をもとに、患者さん向けにわかりやすく整理したものです。制度や運用は変更されることがありますので、最新情報は自治体および医療機関で必ずご確認ください。

 

 


 

【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)

市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医

 

略歴

2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修

2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科

2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学

2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業

2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教

2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任

その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任

 

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本記事は一般情報です。診断・治療は必ず医師の診察をお受けください。

 

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