2022年のインフルエンザ流行予測-大流行・コロナ同時流行はあるのか-
昨今、2022年はインフルエンザは大流行するのではないか、インフルエンザとコロナが同時流行するのではないかということが懸念されています。7月では大阪で季節外れの感染者数増加が見られ、9月は沖縄でも感染者数の増加がすでに見られました。北海道札幌市でも約3年ぶりにA香港型のインフルエンザウイルスが検出されたとされています。いずれも感染拡大には至らず、東京都・千葉県・神奈川県・埼玉県の首都圏でも9月までの時点では感染者はほとんど見られていませんが、2022-2023年は予断を許さない状況と考えられています。
さて、ここでは今年のインフルエンザ流行予測/流行予想についてご紹介します。
7.コロナの新規変異株 BQ.1株、BQ.1.1株、BF.7株
2022年、日本の夏が近づきつつある頃、冬を迎える南半球のオーストラリアではインフルエンザの流行が見られていました。北半球と南半球は季節が逆になるので、日本の夏がオーストラリアでのインフルエンザの流行時期にあたります。図1はオーストラリアの過去数年間でのインフルエンザと診断された数を示しています。2022年の流行時期が例年(5年間平均の黄色のグラフ)と比べると3カ月弱ほど早いことがわかります。
特筆すべきは、コロナ禍真っ只中の2020年、2021年はほとんどインフルエンザが見られていなかったことです。昨年、一昨年の日本の状況も同様にインフルエンザの全国的な流行はなかったとみてよいでしょう。一方、2022年のグラフをご覧いただきますと、ピークが急峻であり、かつ早い時期にピークが見られていることがわかります。ピークが急峻であることは、2022年7-8月のBA.5株を中心とした日本でのコロナ感染拡大(いわゆる第7波)を思い出していただくとわかるように、一斉に発熱やのどの痛み、関節痛などの症状を呈する方が増えるということを意味します。
コロナ第7波では、多くの医療機関が感染対策をして診療を行うために診療できる患者数に限りがあり、医療関係者もコロナに罹患して多くが自宅療養せざるをえなくなり診療の規模も縮小するという事態が起きました。結果として、「なかなか医療機関に電話がつながらず、どうやって対応すればよいかわからない」、「つながったとしても予約がいっぱいで受診できない」という医療ひっ迫につながりました。救急搬送が通常時のようにはできなかった地域もあり、ある種の医療崩壊といってよいかもしれません。2022年7-8月時点でのコロナ感染時の自宅療養期間に比べるとインフルエンザ罹患時の自宅療養期間はやや短めではありますが、2022年の秋から冬にかけてインフルエンザが流行すれば、同様の医療ひっ迫が起きかねないと言えます。
図2は東京都におけるインフルエンザ患者報告者数(人数)を示しています。例年のインフルエンザの流行る時期は、12月から始まり、1-2月にピークを迎えることがわかります。ただし、2019-20年については12月中にすでにピークがきており、二峰性になっている、つまり、感染が比較的長期間にわたって続いていたことが見てとれます。この傾向、つまり2019年がピークが早めにきて長い期間感染蔓延が続いた傾向は、図1のオーストラリアでも見られていました。
さて、日本ではいつから流行るのかを考えてみましょう。図1をみると、オーストラリアでは例年より2.5カ月程度早く流行が始まっています。図2で東京ではいつ流行るかを当てはめてみると、予想される2022年の流行状況は、11月下旬から12月頃にピークになるのではないかと考えられます。もちろんマスク・手洗い・アルコールによる手指消毒の有無や国内の状況、海外からの観光客の状況などによって、インフルエンザ流行期や感染状況は変わってくる可能性があります。
このように、オーストラリアの冬の時期のインフルエンザの発生状況がその年の北半球・日本での発生状況と類似しているため、2022年は早い段階でインフルエンザの感染が始まるのではないかということが危惧されるわけです。2022-23年、いつから流行が始まるのかと疑問を持たれている方も多いかと思いますが、本邦においてもインフルエンザ感染は早い段階から起こる可能性が考えられています。
アメリカのCDC(Centers for Disease Control and Prevention;アメリカ疾病予防管理センター)の報告によると、2022年10月の時点でインフルエンザA陽性の件数・割合共に増加傾向とのことです。詳細なデータは図3をご覧ください。日本は入国制限も大幅緩和された状況ですので、米国を含む諸外国でインフルエンザの流行が起きれば時間差が少なく日本国内でも流行が始まることが考えられます。
日本感染症学会からも「2022-2023年シーズンは、インフルエンザの流行の可能性が大きい」という提言が出されています。この提言には、A香港型の流行が予想されること、インフルエンザワクチン接種を推奨することも含まれています。2022年9月下旬の時点で、コロナに対してはオミクロン株対応ワクチンの接種が開始されました。厚生労働省の見解では、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンとの同時接種も認められています。体温を含めて体調面で問題がなければ、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの近い日程での接種も可能です。副反応の発熱が見られる場合を考慮して、接種間隔は数日程度はあけるなどを考えておくのが無難でしょう。接種スケジュールについては、当院ブログ内の「新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種」をご参考になさってください。
インフルエンザワクチンは接種後効果が出るまで2週間ほどかかります。4週間後にウイルスに対する抗体の量はピークとなり、その後ゆるやかに減少していきます。いつ打つかを迷っておられる皆様は、効果発現までの時間を逆算し、接種時期を考えるのがよいでしょう。一方、効果はいつまで続くのかというと、5-6か月程度続きます。
インフルエンザワクチンを接種したけれどもかかってしまったというお話を耳にされたことがあるかもしれません。しかし、これだけでワクチンは効果なし、あるいは打つとかかるのではないかと結論づけるのは正しくありません。神谷らの報告によりますと、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者へのインフルエンザワクチンの効果は、34-55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止したとしています。その年によって効果にばらつきのある可能性はありますが、重症化抑制効果が見込まれるといってよいでしょう。インフルエンザ自体は空気感染するわけではないので、マスクや手洗いといった予防策も重要です。
古くからインフルエンザの流行はあったと記載されていますが、科学的に確認されているのは1900年頃以降です。厚生労働省のHPによると、毎年の流行の他に過去には数回の世界的大流行が起こっています。下記が大流行した年です。
1918年- 「スペインインフルエンザ(原因ウイルス:A(H1N1)亜型)」
1957年 「アジアインフルエンザ(A/(H2N2)亜型)」
1968年 「香港インフルエンザ(A(H3N2)亜型)」
2009年 「インフルエンザA(H1N1)pdm2009」
1918年から始まった通称「スペイン風邪」では、死者数は全世界で2000-4000万人ともともいわれ、日本でも約40万人の死亡者が出たと推定されています。新型コロナウイルスの日本での累計死亡者数は、厚生労働省の統計によると2022年10月の段階で45000人余りです。1918年頃と現在の日本では、衛生状況も人口も異なるので単純な比較はできませんが、「スペイン風邪(スペインインフルエンザ)」は相当な感染症だったことがわかります。
インフルエンザの流行予想やワクチンについてをこれまで見てまいりました。一方、新型コロナウイルスの最新の状況はどうなっているのでしょうか。
図3は、アメリカにおける新型コロナウイルスの変異株検出割合の推移を示しています。2022年10月になり、アメリカではBA.5株の派生型である、新規変異株 BQ.1株やBQ.1.1株、BF.7株の割合が急速に増加しています。新規変異株はドイツや韓国でも検出され、感染力がBA.5株よりも高い可能性が懸念されているところです。日本では北海道や東北地方の各県では、感染者数が底を打ち、上昇の兆しが見られています。これらを総合すると、2022年から2023年にかけての年末年始以降の時期に第8波となる可能性やインフルエンザと同時流行する可能性がありますので、十分ご注意ください。
当院は、インフルエンザの予防接種を2022年10月1日(土)より開始いたしました。コロナワクチンとは異なり皮下注射でご予約不要です。費用は1回 3500円 (税込)で承っております。詳細は、「インフルエンザ予防接種のご案内」をご覧ください。
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