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尿糖が陽性―A1c高値と糖尿病以外の原因

 健診や人間ドックで「尿糖が陽性」と聞くと、糖尿病ではないかと考えてしまうことと思います。しかし、尿糖(尿中のブドウ糖)と糖尿病の指標であるHbA1c(A1c)は見ている時間軸も役割も異なり、糖尿病以外の理由で尿糖が陽性になることも少なくありません。

 

1.尿糖陽性の概要

2.糖尿病以外が原因の場合

 1)薬剤性(SGLT2阻害薬)

 2)腎性糖尿

 3)近位尿細管障害・尿細管間質障害

 4)妊娠

 5)検査・検体条件

3.糖尿病が原因の場合

 1)A1cの意味

 2)尿糖とA1cの違い

4.受診を急ぐ目安

 

 

1.尿糖陽性の概要

・尿糖は、採尿前後の比較的短い時間に血糖が腎臓の再吸収能力をこえると現れます。腎臓の再吸収能力には個人差や病態によって差があります。妊娠では腎臓での糖の再吸収能力は低く、心不全や高齢では逆に高くなる傾向が知られています。

・A1cは、過去1〜2か月の平均的な血糖の状態を反映し、糖尿病の診断・経過観察の指標です。

・糖尿病がなくても尿糖が陽性になる状況があります。SGLT2阻害薬内服、腎性糖尿、近位尿細管障害、妊娠などです。

 

2.糖尿病以外が原因の場合

1)薬剤性(SGLT2阻害薬)

 SGLT2阻害薬は、近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑え、意図的に尿へ糖を排泄させる薬です。糖尿病の有無にかかわらず、慢性腎臓病(英語:Chronic kidney disease, CKD)や心不全で処方されることがあり、尿糖陽性はSGLT2阻害薬の薬効の一部として見られます。DAPA‑HF、EMPEROR‑Reducedなどの大規模試験では、心不全においては糖尿病の有無を問わずSGLT2阻害薬により転帰の改善が示されています。CKDでも、IgA腎症など蛋白尿が見られる疾患を中心に糖尿病の有無を問わず有効性が示されています。

 つまり、CKDや心不全がありSGLT2阻害薬を内服中に尿糖が陽性の場合、異常ではなく薬の効果として見られるわけです。

 

2)腎性糖尿(英語:renal glucosuria)

 血糖は正常(正確には基準範囲内といいます)なのに、腎のブドウ糖再吸収に先天的な低下があり、慢性的に尿糖が出る体質です。SLC5A2(SGLT2遺伝子)の変異が原因として知られ、他に尿細管機能異常を伴わないこともあります。通常は良性の経過をたどりますが、他の原因がないかを確認するため、血糖・A1cや尿所見を見ておくのがよいでしょう。

 

3)近位尿細管障害・尿細管間質障害

 腎臓の中で主に糖分を再吸収するのが近位尿細管です。近位尿細管の機能低下があると、血糖が正常でもグルコースの再吸収が不十分になり、尿糖陽性が見られます。代表的な病気がファンコニー症候群(Fanconi症候群)で、リン・尿酸・アミノ酸・重炭酸などさまざまな物質の再吸収低下を合併します。薬剤性や中毒、移植後、遺伝性疾患などが原因になります。急性尿細管間質性腎炎(英語:Acute tubulo-interstitial nephritis, ATIN)でも、非糖尿病性の尿糖陽性から診断されることがあります。

 

4)妊娠

 妊娠では腎臓での糖の再吸収能力が低下し、尿糖が出やすくなります。なお、妊娠糖尿病の診断は別途、血液検査で評価します。

 

5)検査・検体条件

 大量のビタミンC(アスコルビン酸)内服や検体の放置時間などで、偽陰性となることがあります。偽陰性というのは、本来は尿糖陽性であるのに、ビタミンCの還元作用や長く放置されることでブドウ糖が分解されるため、尿糖陰性という結果になるというものです。

 

3.糖尿病が原因の場合

1)A1cの意味

 A1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映し、糖尿病診断の基準に含まれます。判定は血糖値と組み合わせて行い、両者が一致しない場合は再検や追加検査で確認します。特に貧血・溶血・輸血直後・透析中などでは実態とA1cの値が乖離することがあるため、グリコアルブミン等の別の指標を参考にすることもあります。

 

2)尿糖とA1cの違い

 尿糖はそのときの血糖値の上昇を反映し、A1cは過去1〜2か月の血糖値の平均像を反映します。この時間軸の違いなどもあり、下記のように尿糖とA1cが一致しないことがあります。

尿糖陽性かつ血糖・A1cが正常

 食後短時間の高血糖、SGLT2阻害薬内服中、腎性糖尿、近位尿細管障害など

・A1c高値だが尿糖陰性

 糖尿病はあるものの空腹時で血糖値が高くないタイミングで採尿、など。

 

4.受診を急ぐ目安

・口渇・多飲・頻尿・体重減少などの症状がある場合

・妊娠中に尿糖陽性を指摘された場合

・SGLT2阻害薬を内服中で、倦怠感・悪心・腹痛など体調の変化を自覚される場合

 

 

【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)

市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医

 

略歴

2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修

2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科

2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学

2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業

2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教

2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任

その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任

 

最新の医学知識をわかりやすく発信し、地域の“かかりつけ医”として健康を支えます。
本記事は一般情報です。診断・治療は必ず医師の診察をお受けください。

 

 

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