ヨウ素が多い食品一覧と甲状腺への影響
1.ヨウ素とは
ヨウ素(英語:iodine)は、ハロゲン族に属し、化学記号Iで表される元素です。人体において、ヨウ素は甲状腺ホルモン(T3、T4)の構成成分として重要な役割を果たしています。成人の体内には約15~20mgのヨウ素が存在し、その約70~80%が甲状腺に集中しています。
日本人は、食生活において海藻類の摂取により豊富なヨウ素を摂取しています。一方で、過剰摂取による甲状腺機能低下症のリスクも指摘されています。適切なヨウ素摂取量を理解し、バランスの取れた食生活を心がけることが甲状腺の健康維持に重要です。

甲状腺は首の前部にある内分泌器官で、体の新陳代謝を調節する甲状腺ホルモンを分泌します。ヨウ素はこの甲状腺ホルモンの必須成分であり、適正量のヨウ素摂取が甲状腺機能の正常な維持に不可欠です。甲状腺ホルモンは基礎代謝率の調節を行い、体温や心拍数の維持に重要な役割を果たします。特に胎児期や乳幼児期の脳の発達には不可欠で、タンパク質合成の促進により成長と発育を支えています。
1)厚生労働省の食事摂取基準(2025年版)によるヨウ素の摂取目安
厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、ヨウ素の適正摂取量について以下の基準が設定されています。
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年齢 |
推定平均必要量(μg/日) |
推奨量(μg/日) |
耐容上限量(μg/日) |
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成人男女(18歳以上) |
100 |
140 |
3000 |
|
妊婦 |
175 |
250 |
2000 |
|
授乳婦 |
200 |
280 |
2000 |
|
乳児(0-5か月) |
- |
100(目安量) |
250 |
|
乳児(6-11か月) |
- |
130(目安量) |
350 |
推定平均必要量100μg/日は、甲状腺へのヨウ素蓄積量の研究に基づいて設定されており、推奨量140μg/日は個人間の変動を考慮して算定されています。一方、日本人の実際の摂取量は平均1,000~3,000μg/日と推定されており、これは推奨量の7~22倍に相当するきわめて高い値です。
2)日本人特有のヨウ素の摂取状況
日本人のヨウ素摂取は、海藻類(特に昆布、ひじき、わかめ)を主要な供給源としています。摂取量は日によって変動が大きく、500μg/日未満の日もあれば、昆布を含む献立では3,000~10,000μg/日に達することもあり、平均摂取量は1,000~3,000μg/日程度です。
ただし、昆布由来のヨウ素は、ヨウ化物と比較して吸収率が70%未満と低く、さらに大豆製品に含まれるイソフラボンがヨウ素の吸収・利用を阻害することも報告されています。このため、摂取量は多くても実際の体内利用量は抑制され、日本人は長年の食習慣により高ヨウ素摂取に適応していると考えられています。しかし、極端な過剰摂取(特に昆布の連日大量摂取)は避けることが望ましいでしょう。

日本人の食生活において、海藻類は主要なヨウ素の供給源となっています。
成人(18歳以上)のヨウ素の推奨量は140μgとされていますが、海藻類にはそれをはるかに上回る量のヨウ素が含まれています。ここでは、主な食品のヨウ素含有量を以下に紹介していきます。
昆布類
- 真昆布(10,000~25,000μg/100g)
- 日高昆布(8,000~15,000μg/100g)
- 羅臼昆布(12,000~20,000μg/100g)
昆布加工品
- おしゃぶり昆布(15,000~30,000μg/100g) → 1片(約2~3g)で300~900μg
- 塩昆布(5,000~12,000μg/100g) → 小鉢1杯分(約5g)で250~600μg
高いヨウ素含有量(100~1000μg/100g)
- ひじき(1,500~4,500μg/100g) → 煮物1人前(乾燥ひじき3g)で45~135μg
- めかぶ(800~1,500μg/100g) → 1パック(約40g)で320~600μg
- わかめ(300~800μg/100g) → 味噌汁1杯分(乾燥わかめ1g)で3~8μg
中程度のヨウ素含有量(10~100μg/100g)
- のり(50~120μg/100g)
- 寒天(30~80μg/100g)
- 魚類(10~30μg/100g)
加工食品・調味料
- だし昆布使用の調味料(500~2,000μg/100g)
- 昆布茶(1,000~3,000μg/100g)
- 昆布エキス入り食品(300~1,500μg/100g)
以上の数値を見ると、乾燥した海藻類のヨウ素量が高い傾向にあることが分かり、乾燥による水分除去でヨウ素濃度が大幅に高まるため、生の状態と比べて少量でも多量のヨウ素を摂取することになるため注意が必要です。

Q.1日にどのくらいのヨウ素を摂取すればよいですか?
A.厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、成人の推奨量は1日140μgです。これは甲状腺へのヨウ素蓄積量の研究(100μg/日)に個人間変動を考慮して設定されています。しかし、日本人は海藻類の摂取により平均1,000~3,000μgと推奨量の7~22倍を摂取しているのが現状です。むしろ過剰摂取に注意し、海藻類の摂取量を適正に調整することが重要です。
Q.どのくらい摂取すると危険ですか?
耐容上限量は成人で1日3,000μg、数値確認妊娠・授乳期は2,000μgです。この値は日本人の平均摂取量(1,000~3,000μg/日)で甲状腺機能低下や甲状腺腫の発症が極めて稀であることから設定されています。しかし、昆布だし汁から28,000μg/日を約1年間摂取した事例では甲状腺機能低下が報告されており、継続的な極端な高摂取は避けるべきです。
Q.海藻類を全く食べないとどうなりますか?
海藻類を食べない日本人のヨウ素摂取量は平均73μg/日にすぎないと報告されており、推奨量(140μg/日)を下回ります。意図的に海藻類の摂取を継続的に避けることは、いずれの年齢層においてもヨウ素不足につながる可能性があります。ヨウ素不足は甲状腺ホルモンの生成を妨げ、成長障害、代謝低下、妊娠中は胎児の中枢神経系の発達障害を引き起こすため、適切な量の摂取が重要です。
Q.めかぶダイエットは健康に良いのですか?
めかぶにはフコイダンなどの有効成分が含まれており、適量摂取すれば健康に有益です。しかし、「めかぶダイエット」として大量摂取することは推奨できません。めかぶ100gには約800~1,500μgのヨウ素が含まれており、毎日大量摂取すると甲状腺機能低下のリスクがあります。ダイエット目的でも1日50g程度に留めることが安全です。甲状腺疾患の既往がある人、妊娠中・授乳中の女性、高齢者、甲状腺機能低下症の家族歴がある人などには特に推奨されません。

1)昆布類の摂取について
Q.おしゃぶり昆布はどのくらい食べても大丈夫ですか?
おしゃぶり昆布は非常に高濃度のヨウ素を含むため、1日1~2片(約2~5g)程度に留めることをお勧めします。市販されているものは1袋10g、お徳用では54g程度です。習慣的に大量摂取すると、1日のヨウ素摂取量が推奨量の数十倍になる可能性があります。

2)海藻類の調理法によるヨウ素減少効果
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調理法 |
ヨウ素減少率 |
効果的な食材と調理のポイント |
|
水に浸す |
20~40% |
わかめ、ひじきを30分以上水に浸すことでヨウ素が溶出 |
|
茹でる(茹で汁を捨てる) |
40~70% |
ひじき、わかめなどを茹でた後、茹で汁を使わない |
|
塩もみ後水洗い |
30~50% |
わかめなどを塩もみ後、十分に水で洗い流す |
|
酢の物にする |
10~20% |
酢酸によりヨウ素の一部が除去される |
3)適正摂取の目安
週3~4回程度の摂取
- わかめの味噌汁:1日1杯程度
- ひじきの煮物:週2~3回、1回約20g
- めかぶ:週2~3回、1回約30g
- のり:毎日2~3枚程度
控えめに摂取すべきもの
- 昆布:だし用として週1~2回使用
- おしゃぶり昆布:1日1~2片
- 昆布茶:週2~3杯程度
Q.海藻以外でヨウ素を摂取する方法はありますか?
魚類、乳製品、卵にも適量のヨウ素が含まれています。これらの食品からの摂取により、海藻類を控えめにしても必要なヨウ素を確保できます。
|
食品群 |
ヨウ素含有量 |
摂取のポイント |
|
魚類 |
10~30μg/100g |
週3~4回の摂取で適正量を確保 |
|
乳製品 |
15~25μg/100ml |
牛乳コップ1杯で約20μg |
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卵 |
20~35μg/個 |
1日1個で適正量の一部を補給 |
|
海塩 |
1~5μg/g |
通常の調理で使用する程度 |

Q.ヨウ素サプリメントは必要ですか?
日本人の一般的な食生活では、海藻類から十分なヨウ素を摂取しているため、サプリメントは通常必要ありません。むしろ、サプリメントによる追加摂取は過剰摂取のリスクを高める可能性があります。医師の指導なしにヨウ素サプリメントを摂取することは避けてください。
Q.うがい液を飲んでしまったらどうなるの?
うがい液には殺菌・消毒のために「ポビドンヨード」という成分が含まれており、これはヨウ素を有効成分としています。そのため、ヨウ素を体に取り込むことになります。少量を誤って飲んでしまった程度であれば、多くの場合は大きな問題になりません。
ただし製品によって差はありますが、1回の使用量でおよそ2~5mg程度のヨウ素が含まれており、これは食品に換算するとおしゃぶり昆布1袋10gに相当します。大量に飲んでしまったり、繰り返し摂取したりすると、甲状腺機能に影響を与える可能性があるため注意が必要です。

Q.原発事故などの際、海藻類を食べれば甲状腺を守れますか?
海藻類での防護は推奨されません。2011年の福島第一原発事故の際にも話題になりましたが、以下の理由から適切ではありません。
・摂取量が不安定
防護に必要な安定ヨウ素量(成人で100mg)を昆布で摂取しようとすると、400~1,000gもの量が必要で現実的ではありません。
・吸収が遅い
昆布のヨウ素は吸収率が70%未満で、緊急時に必要な速やかな甲状腺飽和が期待できません。
・副作用リスク
大量摂取により消化器症状や甲状腺機能異常を起こす可能性があります。
Q.原子力災害では、どのような対策が正しいのですか?
原子力災害時には、行政の指示に従い、配布される安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム:KI)を服用することが推奨されます。医薬品として品質・含有量が保証されており、速やかに吸収されます。安定ヨウ素剤のヨウ素が甲状腺を飽和させるため、追加の放射性ヨウ素が入り込めなくなるというわけです。
日本で備蓄されている安定ヨウ素剤には、錠剤(ヨウ化カリウム丸50mg)とヨウ化カリウム内服ゼリー(16.3mg、32.5mg)があります。安定ヨウ素剤の用量は、年齢によって異なり、成人では100mg(ヨウ素として76.9mg)を1回服用します。
・13歳以上 ヨウ化カリウム丸50mg×2錠
・3~12歳 ヨウ化カリウム丸50mg×1錠
・1か月~2歳 内服ゼリー32.5mg×1包
・1か月未満 内服ゼリー16.3mg×1包
Q.原発事故などの際には、事故直後に急いで内服したほうがよいのですか?
原発事故発生=放射性ヨウ素放出と限ったわけではありません。内服するタイミングとして、被ばくする数時間前〜直後(2〜8時間以内)が最も効果的とされていますが、安定ヨウ素剤の効果は24時間程度とされています。つまり、早く内服しすぎると、内服の効果が切れたタイミングで被爆するということもありえるのです。その他、風向きや到達時間なども考慮する必要があります。このように個人で判断できるレベルをこえているため、行政からの指示に従いましょう。
【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)
市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医
略歴
2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修
2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科
2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学
2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業
2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教
2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任
その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任
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