熱中症の症状・応急処置・予防法
1.2025年データで見る ― いつ・誰に・どこで起きたか
過去最多の搬送。ピークは7月、患者の約6割が高齢者、最も多い発生場所は「家の中」でした。
総務省消防庁の確定値によると、2025年(令和7年)5〜9月に熱中症で救急搬送された人は全国で10万510人にのぼり、調査開始(2008年)以来もっとも多くなりました。「いつ・誰に・どこで・どれくらい重く」起きたのかを、データで順に見ていきます。
図1 月別の救急搬送人員(2025年・全国)
出典:総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値)」をもとに作成
熱中症は6月より増加し、7月が最も救急搬送が多いという結果でした。急に気温が上がってくる時期の6月にも、すでに相当数の搬送例があることがわかります。7-8月の真夏の時期にはもちろん十分な注意が必要です。また、救急搬送に至らない軽症の方も含めると、かなりの人数にのぼります。
次に、搬送された人の年齢です。
図2 年齢区分別の救急搬送人員の割合(2025年・全国)
出典:総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値)」をもとに作成
高齢者が約6割を占めていますが、注目すべきは働く世代も全体の3分の1を占めるということです。仕事やレジャーで外出をする、あるいは空調が十分に効いていない屋内で作業するなどの場合も注意が必要です。他人事とせず、すべての世代で注意を要することがわかります。
起きた場所はどうでしょうか。
図3 発生場所別の救急搬送人員の割合(2025年・全国、上位5項目)
出典:総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値)」をもとに作成
住居での発症して救急搬送される例が4割を占めることがわかります。暑い日に自宅にいる際は、エアコンを使用するようにしましょう。また、道路のアスファルトは太陽熱を吸収しやすく、暑い日には表面温度が50~60℃とかなりの高温になることも珍しくありません。屋外でも水分摂取や涼しい場所に退避するなど、対策をとるようにしましょう。
搬送された人のうち、入院が必要だった方(中等症・重症)は合わせて約36%にのぼり、亡くなった方も117人報告されています。「軽い症状」と思われがちですが、3人に1人以上が入院を要した点は軽視できません。
表1 重症度(初診時の傷病程度)別の内訳(2025年・全国)
| 重症度 | 内容 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 軽症 | 外来診療で済んだもの | 63,447人 | 63.1% |
| 中等症 | 入院が必要だったもの | 34,399人 | 34.2% |
| 重症 | 3週間以上の入院を要したもの | 2,217人 | 2.2% |
| 死亡 | 初診時に死亡が確認されたもの | 117人 | 0.1% |
出典:総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値)」。「その他」330人(0.3%)は省略。
2.どんな日に起こりやすいか(気温だけではない)
最高気温が高い日だけではありません。「急な暑さ」「高い湿度」「熱帯夜の翌日」が要注意です。
「猛暑日でなければ大丈夫」と考えがちですが、実際には次のような日にも熱中症は多く起こります。気温そのものより、体が暑さに慣れているか、汗が蒸発しやすいかが重要だからです。

人の体は、暑い環境に3〜4日いると汗が早く出るようになり、3〜4週間ほどで暑さに慣れていきます(暑熱順化)。逆にいえば、まだ体が暑さに慣れていない時期は、それほど高くない気温でも熱中症になりやすいのです。梅雨の合間に急に気温が上がった日や、梅雨明け直後は特に注意が必要です。2025年6月の搬送が前年の2倍以上に急増したのも、記録的に早い梅雨明けと急な高温が重なったためと考えられます。
汗は、蒸発するときに体の熱を奪うことで体温を下げます。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体に熱がこもります。そのため、晴れていなくても、湿度の高い日は危険です。気温・湿度・日差し(輻射熱)をまとめて評価する指標が「暑さ指数(WBGT)」で、環境省が毎日公表しています。
表2 暑さ指数(WBGT)の目安と注意点
| 暑さ指数(WBGT) | 区分 | 注意すること |
|---|---|---|
| 28以上 | 厳重警戒〜危険 | 外出はなるべく避け、涼しい室内へ。搬送がこの水準から急増します。 |
| 25〜28 | 警戒 | 運動や激しい作業では、こまめに休憩と水分を。 |
| 25未満 | 注意 | 一般に危険は小さいが、激しい運動時などは油断しない。 |
参考:環境省 熱中症予防情報サイト、日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針」。WBGTが33以上と予測されると「熱中症警戒アラート」が発表されます。
夜になっても気温が下がらない熱帯夜が続くと、睡眠中も体が休まらず、疲れが残ったまま翌日を迎えます。寝不足や体調不良も熱中症のリスクを高めます。夜間もがまんせずエアコンを使い、しっかり休むことが予防につながります。
3.症状の現れ方と重症度(Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度)
熱中症は自分では気づきにくく、じわじわ進みます。「意識がおかしい・自分で水が飲めない・けいれん」はためらわず119番です。
熱中症の怖いところは、本人がなかなか異変に気づけない点です。暑さやのどの渇きを感じにくくなっているうえ、初期の症状は「少しだるい」「立ちくらみがする」「足がつる」といった、ありふれた不調と区別しにくいからです。「これくらい大丈夫」と動き続けているうちに、気づかないあいだに進んでしまうことが少なくありません。
症状は、おおまかに次のように移りかわります。はじめは、立ちくらみ・めまい、手足の筋肉のつり、大量の汗。進んでくると、頭痛や吐き気、体が重くだるい、集中できず「ぼーっとする」。さらに進むと、呼びかけへの受け答えがおかしい、まっすぐ歩けない、意識がもうろうとする――この段階は危険です。
とくに、次のような場面で起こりやすくなります。
- エアコンをつけずに室内で過ごしている高齢の方
- 屋外での作業や運動の最中
- 水分を控えていたとき
- エアコンなしで眠った夜から、翌朝にかけて
本人より先に、まわりの人が「いつもと様子が違う」と気づくことも多いものです。ご家族や同僚の目が、とても大切です。
医療現場では、熱中症を重さによってⅠ度(軽症)・Ⅱ度(中等症)・Ⅲ度(重症)の3段階に分けます。環境省「熱中症環境保健マニュアル」でも使われている分け方で、どう対応すべきかの目安になります。前述の「症状の移り変わり」を、対応とあわせて整理したのが次の表です。
表3 熱中症の重症度と対応の目安
| 重症度 | 主な症状 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| Ⅰ度 (軽症) |
めまい・立ちくらみ、筋肉のつり(こむら返り)、手足のしびれ、大量の汗。意識ははっきりしている。 | 涼しい場所で休み、水分と塩分をとる。自分で水が飲めるか確認する。改善しなければ受診。 |
| Ⅱ度 (中等症) |
頭痛、吐き気・嘔吐、体のだるさ(倦怠感)、集中力や判断力の低下。 | 自分で水が飲めない・症状が続くときは、医療機関を受診する。 |
| Ⅲ度 (重症) |
意識がない・もうろうとする、けいれん、まっすぐ歩けない、体が熱い。 | ためらわず119番。体を冷やしながら救急隊を待つ。 |
参考:環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」
4.応急処置と、救急車を呼ぶ目安
「涼しい場所 → 体を冷やす → 水分・塩分」。飲めない・意識がないなら、すぐ119番です。

熱中症が疑われるときは、次の順に落ち着いて対応します。軽いうちに体を冷やし、水分・塩分を補うことで、重症化を防げます。
5.毎日の予防のポイント
のどが渇く前に、こまめに水分。がまんせずエアコン。高齢の方やお子さんには、まわりの目を。
熱中症は、ふだんの心がけで多くを防げます。とくに高齢の方やお子さんは、本人が気づきにくいため、まわりのサポートが重要です。
- のどが渇く前に、こまめに水分をとる(環境省の目安は、食事以外で1日あたり約1.2リットル)。
- 朝起きたとき・入浴後・就寝前など、タイミングを決めて飲む習慣をつける。
- 室温が上がりすぎないよう、がまんせずエアコンを使う(室温の目安は28℃以下)。
- 外出時は日陰を選び、帽子や日傘、通気性のよい涼しい服装にする。
- 暑くなり始めの時期から、無理のない範囲で少しずつ体を暑さに慣らす。
6.水分補給のよくある誤解(Q&A)
大量に汗をかいたときは、水とともに塩分も失われています。水だけを大量に飲むと、血液中の塩分が薄まり、かえって体調が悪くなることがあります(低ナトリウム血症)。汗を多くかいた場面では、スポーツドリンクや経口補水液で、水分と塩分を一緒に補うのが基本です。
ただし、これらには塩分・糖分が含まれます。糖尿病・心不全・腎臓病・高血圧などで、塩分やカロリーの制限を指示されている方は、自己判断で増やさず、適した飲み物や量について主治医にご相談ください。ふだんの軽い発汗であれば、水やお茶に加えて食事から塩分をとれていれば足ります。
高齢の方は、暑さやのどの渇きを感じにくく、家の中でも熱中症になります。実際、搬送された人の半数以上が高齢者で、もっとも多い発生場所は住居です(図2・図3)。室温計を見える場所に置き、エアコンを早めに使い、声をかけて一緒に水分をとることが、いちばんの予防になります。
- 2025年の熱中症搬送は過去最多(10万510人)。ピークは7月で、6月の急増も目立ちました。
- 気温が高い日だけでなく、「急に暑くなった日」「湿度が高い日」「熱帯夜の翌日」も要注意。暑さ指数(WBGT)28以上で搬送が急増します。
- 患者の約6割が高齢者、最も多い発生場所は「住居」。屋外だけの問題ではありません。
- 「意識がない・自分で水が飲めない・けいれん」はためらわず119番。応急処置は、涼しい場所・体を冷やす・水分塩分の順。
- 経口補水液は脱水時の飲み物で、日常補給には不向き。高血圧・心不全・腎臓病・糖尿病などで制限のある方は、必ず主治医にご相談ください。
- 総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値)」 https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」 https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
- 環境省 熱中症予防情報サイト(暑さ指数・予防・応急処置) https://www.wbgt.env.go.jp/
- 厚生労働省「熱中症を防ぎましょう(予防・対処)」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/
- 日本高血圧学会 減塩・栄養委員会 監修「経口補水液の適正使用について」
【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)
市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医
略歴
2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修
2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科
2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学
2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業
2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教
2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任
その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任
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