足がつる・こむら返りの原因・対処・予防
1.足がつる(こむら返り)とは
足がつるのは、筋肉を動かす神経が一時的に強く興奮して起こります。
「こむら」とはふくらはぎのことで、こむら返りは、ふくらはぎなどの筋肉が突然、自分の意思とは関係なく強く硬く収縮して痛むけいれんです。多くは数秒から数分でおさまりますが、その後しばらく筋肉痛が残ることもあります。足の裏や足の指、太ももに起こることもあります。
多くの場合、足首を手前にゆっくり反らすとおさまります。一度きりで思い当たる原因(運動・立ち仕事など)があるものは、ほとんど心配いりません。ただし、くり返す・日中にも起こる場合は、体からのサインのことがあります。
2.足がつるしくみと、主な原因
筋肉を動かす神経が一時的に興奮しすぎて、筋肉が縮んだまま戻れなくなる現象です。いくつかの要因が重なって起こります。
足がつるとき、筋肉そのものというより、その筋肉を動かす神経(運動神経や、背骨の中を通る脊髄の反射のしくみ)が一時的に強く興奮し、抑えが効かなくなって、筋肉が縮んだまま戻れなくなります。この「神経が興奮しやすくなる」背景には、次のような要因が重なります。
① 筋肉の疲労・姿勢
運動や立ち仕事のあと、また就寝中につま先が下がって筋肉が縮んだ姿勢になると、神経が興奮しやすくなります。夜間や明け方に多いのは、このためでもあります。

図.足の底屈でこむら返りが起こりやすくなります
② 脱水とミネラル(電解質)のバランス
電解質とは、ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウムなどのミネラルのことで、神経が信号を伝えたり、筋肉が縮んだりゆるんだりする働きを支えています。大量の汗・下痢・嘔吐、利尿薬の使用、腎臓の病気などでこのバランスが乱れると、神経や筋肉が興奮しやすくなり、足がつる一因になります。
③ 冷え
体が冷えると筋肉が硬くなり、神経が興奮しやすくなります。冬や明け方に増えやすいのは、これも理由のひとつです。
④ 加齢
年齢を重ねると、筋力や柔軟性が落ち、活動量が減り、夜間の頻尿で睡眠が分断されるなど、いくつかの変化が重なって、つりやすくなります。
⑤ 薬
利尿薬や、脂質を下げる薬(スタチン)などが、足のつりに関係することがあります。
⑥ 腰や神経・血管の問題
腰の病気や末梢神経の障害、足の血管(動脈・静脈)の問題が背景にあることもあります(くわしくは第4章で説明します)。
3.タイプを見分ける(重要)
「足がつる」と感じても、原因の異なる別の状態が混じっています。
とくに、歩くたびに痛むもの・姿勢によって変わるもの・全身がつるものは、こむら返りとは原因も対応も異なります。次の表で、ご自分の症状がどのタイプに近いかを確認してみてください。
表2 「足のつり」のタイプと見分け方
| タイプ | 特徴 | 考えられること |
|---|---|---|
| ①典型的な 夜間のこむら返り |
夜間・明け方に突然ふくらはぎが硬くなり、足首を反らすと改善する | 疲労・姿勢・冷え・加齢など(多くは心配が少ない) |
| ②歩くと痛む | 歩くたびにふくらはぎが痛み、休むと数分で改善。足の冷えや脈の触れにくさを伴うことも | 足の動脈の病気(末梢動脈疾患) |
| ③姿勢で変わる | 立つ・歩くと足に痛み・しびれ・力の入りにくさ。座る・前かがみ・自転車で楽になる | 腰の病気(腰部脊柱管狭窄症など) |
| ④全身性 | 手など全身もつる、しびれ・脱力・動悸、下痢・嘔吐、利尿薬・透析、大量の発汗を伴う | 電解質・腎機能・血糖・甲状腺の確認が必要 |
出典:American Family Physician/Age and Ageing ほかをもとに作成
4.背景に注意したい状態 ― 腰・神経・血管・全身
くり返す・治りにくいときは、腰・末梢神経・血管・全身の病気が隠れていないかを確認します。
腰や神経根:腰部脊柱管狭窄症やヘルニアなど、腰の神経が圧迫される病気がある方では、足のつりが多いことが報告されています。これは、ふくらはぎへ向かう神経が腰のあたりで圧迫・刺激を受けると、その神経が興奮しやすく(異常に発火しやすく)なり、足がつりやすくなるためと考えられています。

末梢神経の障害:糖尿病などで足の神経が傷むと、神経が興奮しやすくなり、つりやすくなることがあります。
足の静脈の問題(静脈瘤・下肢のうっ滞):むくみや脚の重だるさを伴うことが多く、静脈の圧が高い状態が続くと、ふくらはぎの血流や神経の環境が悪くなり、つりやすくなると考えられています。実際、静脈瘤の治療後に足のつりが軽くなる方がいることが報告されています。ただし、つりは静脈の病気に特有の症状ではないため、むくみ・重だるさ・皮膚の色の変化などとあわせた見極めが必要です。
薬や全身の病気:利尿薬・スタチンなどの薬、腎臓病・透析、肝硬変、甲状腺機能低下症、妊娠などが背景になることがあります。
5.今すぐの対処と、ふだんの予防
つったときは、あわてず足首を反らしてふくらはぎを伸ばします。ふだんはストレッチ・保温・筋力維持が基本です。
つったとき
あわてず、つま先を手前にゆっくり引いて(足首を手前に反らして)、ふくらはぎを伸ばします(ひざは伸ばしたまま)。痛みがおさまったら、その部分を温め、必要に応じて水分とミネラルを補います。無理に立ち上がろうとしないでください。
夜間につったときは、立ち上がらずに伸ばすのが安全です。あらかじめ寝る位置を工夫して、足元か横に壁がある状態にしておくと、足の裏を壁に当て、ひざを伸ばしてつま先を自分のほうへ向けることで、ふくらはぎを伸ばせます。立ち上がっての転倒を避けられるので、ご高齢の方や睡眠薬を使っている方にも実用的です。壁がなければ、足先にタオルやバンドを引っかけ、ひざを伸ばしたまま手前に引いても、同じように伸ばせます。

普段の予防
- 就寝前に、ふくらはぎを軽く伸ばすストレッチをする
- 足を冷やさず、寝るときも保温する(明け方の冷えに注意)
- 適度な運動で筋力と柔軟性を保つ
- 長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを避け、足をこまめに動かす
- 日中・運動時を中心に、こまめに水分をとる
- 食事からミネラルをとる(野菜・果物・乳製品・大豆製品・海藻など)
- お酒の飲みすぎに注意する
6.芍薬甘草湯を使うときの注意
「芍薬甘草湯」はよく効きますが、毎日の連用には注意が必要です。原則は必要なときだけ(頓用)です。
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、つったときにすばやく効くため、こむら返りによく使われ、市販もされています。ただし「甘草(カンゾウ)」という生薬を多く含み、長く毎日飲み続けると、偽アルドステロン症や低カリウム血症を起こすことがあります。手足のだるさ・力の入りにくさ・むくみ・血圧の上昇・脈の乱れ(不整脈)などが、そのサインです。

7.当院でできること
足のつりの背景を、内科のかかりつけ医として幅広く確認し、必要な検査やお薬の調整までご相談いただけます。
当院は内科のかかりつけ医として、まず「典型的なこむら返りか、足の血管や腰・全身の問題か」を見極めます。血液検査で電解質(ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム)・腎機能・血糖・肝機能・甲状腺などを調べ、尿検査とあわせて背景をしぼり込みます。つりやすさに関わる利尿薬などのお薬を見直すこともできます。
なかでも、水分やミネラル(電解質)の管理は、腎臓内科として日ごろから診療している分野です。漢方を使う場合も、甘草の量や持病をふまえて選び、必要に応じて血液中のカリウムを確認しながら使います。足の血管や腰・神経の関与が疑わしいときは、必要に応じて専門の医療機関をご案内します。くり返す足のつりでお困りの方は、ご相談ください。
よくあるご質問
くり返す、日中にもつる、しびれや力の入りにくさを伴う、歩くたびに痛む、片方だけ腫れる、といった場合は受診をおすすめします。タイプによって対応(血管・腰・電解質の検査など)が変わるため、まず見極めが大切です。
不足がある場合は意味がありますが、欠乏のない方の夜のこむら返りに対しては、サプリメントの効果は限定的と報告されています。基本は、就寝前のストレッチ・保温・筋力維持・適度な水分です。水分やミネラルの制限を受けている方は、摂り方が異なるため主治医にご相談ください。
関係する方がいます。静脈の圧が高い状態が、ふくらはぎのむくみや神経・筋肉の環境に影響し、つりやすさにつながると考えられ、治療後に軽くなる例も報告されています。ただし、つりは静脈の病気に特有の症状ではないため、むくみや重だるさなどとあわせた評価が必要です。
原則は「必要なときだけ(頓用)」です。毎日の連用は、低カリウム血症などを起こすことがあります。とくに高血圧・心不全・腎臓病のある方や、ほかの薬を飲んでいる方は、続けて使う前に医師・薬剤師にご相談ください。
足がつる(こむら返り)は、筋肉を動かす神経が一時的に過剰に興奮して起こります。疲労・縮んだ姿勢・冷え・加齢に、脱水やミネラル(電解質)のバランス、腰や末梢神経・足の血管などの要因が重なって生じます。「夜間に突然つる/歩くと毎回痛む/姿勢で変わる/全身がつる」とタイプを見分けることが大切で、②〜④は別の病気が背景のことがあります。よく使われる芍薬甘草湯は頓用が原則です。当院では、血液・尿検査で背景を確認し、対処・予防・お薬の調整までご相談いただけます。
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【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)
市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医
略歴
2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修
2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科
2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学
2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業
2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教
2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任
その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任
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