めまい・ふらつきの原因と受診の目安-回転性・浮動性・立ちくらみの見分け方
1.めまい・ふらつきの主なタイプ
同じ「めまい」でも、感じ方によって考えられる原因が変わります。
受診のときは、次のどれに近いかをお伝えいただくと、原因をしぼり込みやすくなります。ただし、感じ方だけで原因を確定できるわけではないため、起こり方や伴う症状とあわせて確認していきます。
表1 めまい・ふらつきの主なタイプ
| タイプ | こんな感じ方 | 主に考えられること |
|---|---|---|
| 回るめまい (回転性めまい) |
天井や周囲がぐるぐる回る、寝返りで起こる、吐き気を伴う | 内耳(三半規管・耳石・前庭神経)の異常が多い。まれに脳(小脳・脳幹) |
| ふわふわするめまい (浮動性めまい) |
ふわふわする、雲の上を歩くよう、頭がぼーっとする、体が揺れる | 貧血・血圧・心臓・脳神経・お薬・加齢など、幅広い |
| 立ちくらみ・ 気が遠くなる(前失神) |
立つとクラッとする、目の前が暗くなる、冷や汗、しゃがみ込みたくなる | 血圧の低下(起立性低血圧)、不整脈、心臓、脱水・貧血 |
| 歩くとふらつく (平衡・歩行の障害) |
まっすぐ歩けない、足元が不安定、転びやすい | 脳・神経・筋力・視力・首や腰・お薬・加齢が複合 |
出典:Bisdorff ら(2009)、Newman-Toker ら(2015)ほかをもとに作成

2.回るめまい(回転性めまい)
周囲がぐるぐる回るめまいの多くは耳の奥の異常ですが、まれに脳の病気が隠れていることがあります。
天井や周囲が回る、寝返りでめまいがする、強い吐き気を伴う――こうした症状は回転性めまいと呼ばれ、多くは内耳の三半規管・耳石器・前庭神経など、平衡感覚に関わる部分の異常で起こります。代表的なものは次のとおりです。
良性発作性頭位めまい症(BPPV):もっとも頻度の高いめまいのひとつです。内耳の耳石が本来の場所から外れて三半規管に入り込むことで、寝返り・起き上がり・上や下を向くなど、特定の頭の位置で数秒〜1分ほどの回転性めまいが起こります。難聴や耳鳴りは通常目立ちません。耳石を元に戻す体操(耳石置換法)が治療の中心です。
前庭神経炎:突然、強い回転性めまいが始まり、数時間〜数日続きます。難聴は伴わないことが多く、強い吐き気や歩きにくさを伴います。回復期にはめまいのリハビリ(前庭リハビリテーション)が役立ちます。
メニエール病:回転性めまいの発作を繰り返し、片耳の聞こえにくさ・耳鳴り・耳がつまった感じが変動するのが特徴です。発作は20分〜数時間程度が典型で、診断には聴力検査が役立ちます。
前庭性片頭痛:片頭痛のある方に起こる、繰り返すめまいです。頭痛を伴うことも伴わないこともあり、光や音への過敏、吐き気を伴うことがあります。「繰り返すめまい」の原因として意外に多く、見落とされやすいものです。
前庭神経鞘腫(ぜんていしんけいしょうしゅ、いわゆる聴神経腫瘍):急に強く回るめまいというより、片側の聞こえにくさ・耳鳴りとともに、ゆっくり進むふらつきとして現れることが多い病気です。片耳だけの症状が続くときに考えます。

3.ふわふわするめまい(浮動性めまい)
ふわふわするめまいは、血圧や貧血などの内科的な原因から、耳・脳・神経・お薬・心理的要因まで、幅広く関係します。
ふわふわする、雲の上を歩いているよう、頭がぼーっとする、体が揺れる感じ――こうしためまいは浮動性めまいと呼ばれます。内科クリニックとして、まず確認したい内科的な原因には、貧血、脱水、低血糖、電解質の異常、甲状腺の働きの異常、感染症・発熱、心不全、睡眠不足や過労などがあります。
一方で、浮動性めまいの原因はこれだけではありません。耳の働きの低下(両側前庭機能低下)、加齢によるバランス機能の低下、小脳や神経の病気、糖尿病などによる足の神経の障害、視力の低下、首の影響、不安や過換気、長く続くめまい(持続性知覚性姿勢誘発めまい:PPPD)など、複数の要因が重なることもあります。とくにご高齢の方では、軽い脱水・お薬・貧血・筋力や視力の低下などが重なって、はっきりした一つの病名がなくても強いふらつきを感じることがあります。
4.立ちくらみ・気が遠くなる感じ(前失神)
立ちくらみや「気が遠くなる感じ」は、脳への血流が一時的に落ちることで起こり、血圧や心臓が関係します。
立ち上がるとクラッとする、目の前が暗くなる、冷や汗が出る、その場にしゃがみ込みたくなる――こうした「失神しそうな感じ」は前失神と呼ばれ、脳への血流が一時的に不足して起こります。背景には、起立性低血圧、脱水、貧血、血管迷走神経反射、不整脈、心臓の病気(弁膜症など)、低血糖、お薬による血圧低下などがあります。
起立性低血圧:立ち上がったときに血圧が下がりすぎる状態で、一般に立位3分以内に、上の血圧(収縮期)が20mmHg以上、または下の血圧(拡張期)が10mmHg以上下がるものをいいます。ご高齢の方、糖尿病や自律神経の障害のある方、脱水のとき、降圧薬・利尿薬を使っている方で多くなります。
不整脈・心臓の病気:脈が遅くなる、または速くなる不整脈(洞不全症候群、房室ブロック、心室頻拍、心房細動など)でも、めまい・ふらつき・失神感が起こります。

5.歩くとふらつく・首の動きでふらつく
「ふらつき」は内耳のめまいだけでなく、脳・神経・筋力・視力・首や腰・お薬などが複合的に関係します。

歩くとふらつく・バランスが悪い
まっすぐ歩けない、足元が不安定、転びやすいといった症状では、内耳のめまいだけでなく、脳・神経、足腰や背骨、筋力、視力など、複数の要因が関係します。主なものは次のとおりです。
脳・神経の病気:パーキンソン病やパーキンソン症候群、小脳の病気、脳梗塞の後遺症、足の末梢神経の障害(糖尿病などによるもの)では、バランスや歩行が不安定になります。
足腰・背骨の問題(整形外科的な原因):腰部脊柱管狭窄症や、首の脊髄が圧迫される頸髄症(けいずいしょう)では、歩行時のふらつきや足のもつれが起こることがあります。変形性の膝・股関節による痛みや不安定さも、歩きにくさにつながります。
筋力・視力・加齢:加齢に伴う足(とくに太ももや膝まわり)の筋力低下(サルコペニア)、視力の低下、加齢によるバランス機能の低下なども要因になります。
ご高齢の方では、これらが単独ではなく重なって起こることが多く、はっきりした一つの病名がなくても、ふらつきや転倒につながります。転倒予防の観点からも、原因を整理して評価することが大切です。
首の動きでふらつく
首を動かしたときにふらつく場合、首の関節や筋肉の影響が関係することがあります。ただし、首が原因のめまい(頸性めまい)は診断が難しく、耳のめまい・脳血管の病気・血圧の異常・不整脈などを確認したうえで判断する、いわば「他を除いてから考える」性質のものです。とくに首を上に向ける・首を回すと倒れそうになる、手足のしびれなどの神経症状を伴う場合は、まれに脳に向かう血管(椎骨脳底動脈)の問題が隠れていることもあり、慎重な評価が必要です。
6.すぐに受診・救急受診が必要なサイン
次のような症状を伴うめまいは、脳卒中や心臓の病気など、緊急性の高い病気の可能性があります。
以下にあてはまる場合は、様子をみずに、すぐに医療機関(必要に応じて救急)を受診してください。
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 物が二重に見える
- 顔や手足のしびれ・麻痺、片側に力が入らない
- 立てない、まっすぐ歩けない
- 今までにない激しい頭痛、強い首の痛み
- 意識を失った
- 胸の痛み、強い動悸、息切れ、冷や汗を伴う失神感
- 突然の聞こえにくさ・耳鳴り
- 頭を打った後のめまい
- ご高齢の方や脳卒中のリスクが高い方で、突然始まり持続するめまい
7.当院の診療
内科のかかりつけ医として、めまい・ふらつきの内科的な原因を確認し、必要に応じて専門の医療機関へおつなぎします。
当院では、めまいの感じ方だけでなく、起こり方・続く時間・誘因・耳の症状・神経の症状・血圧や脈の状態・内服薬などを確認しながら原因を考えます。そのうえで、症状や経過に応じて、血圧・脈拍・酸素飽和度の測定、立ち上がったときの血圧の変化(起立試験)、歩行やふらつき・神経学的な診察、心電図・心エコー・ホルター心電図、採血(貧血・電解質・血糖・腎機能・肝機能・甲状腺・炎症など)といった必要な検査を行います。お薬の影響が疑われるときは、内容を一緒に見直します。
一方で、耳の専門的な検査・治療が必要なときや、脳のMRIなどの画像検査が必要なときは、画像は連携医療機関と協力して評価し、必要に応じて耳鼻咽喉科・脳神経内科・脳神経外科・整形外科などの専門医療機関へご紹介します。頭痛を伴う場合や、くり返すめまいでお困りの場合も、まずはご相談ください。
よくあるご質問
頭の位置を変えたときに数秒〜1分ほどの回転性めまいが起こる場合は、良性発作性頭位めまい症(BPPV)のことが多く、耳石を元に戻す体操で改善が期待できます。ただし、しびれ・麻痺・ろれつが回らないなどの症状を伴うときは、別の病気の可能性があるため受診してください。
起立性低血圧や脱水、お薬の影響などが考えられます。水分をとる、ゆっくり立ち上がるなどで和らぐこともありますが、繰り返す、実際に気を失う、動悸や胸の症状を伴う場合は、血圧や心臓の評価のため受診をおすすめします。
まずは内科のかかりつけ医で、血圧・貧血・不整脈・お薬など内科的な原因を確認するのがよいでしょう。片耳の聞こえにくさや耳鳴りが中心なら耳鼻咽喉科、しびれ・麻痺・ろれつが回らないなどの神経症状を伴うときは、すぐに救急や脳神経の専門医療機関の受診が必要です。
めまい・ふらつきは、耳の奥の平衡感覚だけでなく、血圧・貧血・不整脈・心臓・脳・神経・首・お薬・加齢など、幅広い原因で起こります。「回るか、ふわふわか」だけでなく、いつ・どのくらい続き・何で誘発され・どんな症状を伴うかが、原因を考えるうえで大切です。ろれつが回らない・しびれや麻痺・立てない・激しい頭痛・胸の症状・突然の難聴などを伴うときは、緊急性の高い病気の可能性があり、すぐに受診してください。当院では内科的な原因を確認し、必要に応じて専門の医療機関へおつなぎします。
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【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)
市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医
略歴
2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修
2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科
2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学
2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業
2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教
2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任
その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任
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