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健診で心雑音を指摘されたら?原因・症状・受診の目安

 健康診断や人間ドックで「心雑音があります」と言われて、驚かれた経験はありませんか。心臓に何か重大な病気があるのではないかと不安になる方も多いでしょう。しかし、心雑音が必ずしも病気を意味するわけではありません。心雑音とは何か、どのような原因があるのか、どのような場合に詳しい検査が必要なのか、受診の目安などについてみていきましょう。

 

 

1.心雑音とは

2.心雑音の種類

3.レバイン分類(Levine Grading)

4.受診の目安

5.医療機関での検査

6.治療と経過観察

7.日常生活での注意点

8.まとめ

 

 

1.心雑音とは

 心雑音とは、聴診器で心臓の音を聞いたときに、通常の心音(ドクン、ドクンという規則正しい音)以外に聞こえる雑音のことです。心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割を果たしており、その過程で血液が心臓の部屋(心房・心室)や弁を通過する際に音が生じます。通常はスムーズな血流音ですが、何らかの理由で血液の流れが乱れると、「ザーザー」「シュー」といった雑音として聞こえることがあります。心雑音自体は「病気そのもの」ではなく、「何らかの理由で血液の流れが乱れている状態」を示しています。つまり、心雑音が聞こえた=すぐに心臓病というわけではありません。

 

2.心雑音の種類

 心雑音は大きく「機能的心雑音」と「器質性心雑音」に分けられます。

1)機能性雑音(無害性雑音)

 機能性雑音は、心臓の構造に異常がないにもかかわらず聞こえる雑音です。以下のように、健康な人でも聞かれることがあります。

 

 

 ① 成長期の子ども

 成長期は血流が盛んで心拍出量が多いため、血液の流れる速度が速くなり、雑音として聞こえることがあります。

 ② 若い方や痩せ型の方 

 胸壁が薄く心臓との距離が近いため、心臓の音が聞こえやすくなります。

 ③ 貧血のある方 

 血液が薄くなると、少しでも酸素を運ぶために血流が速くなります。単位時間あたりの通過する血流量が増加するため、乱流が生じやすくなります。

 ④ 甲状腺機能亢進症の方 

 新陳代謝が活発になり心拍数と心拍出量が増えるため、血流速度が増加し、雑音が生じます。

 ⑤ 妊娠中の方

 循環血液量が増加し、心拍出量も増えるため、一時的に雑音が聞こえることがあります。

 ⑥ 発熱時

 体温上昇に伴い心拍数が増加し、血流が速くなるため雑音が生じやすくなります。

 

 これらは治療の必要がなく、経過観察のみで問題ありません。

 

2)器質性雑音(病的雑音)

 器質性雑音は、心臓の弁や壁などに何らかの異常があることで生じる雑音です。先天性心疾患(生まれつき心臓の構造に異常がある病気)と、弁膜症や心筋症など後天性心疾患があります。これらは程度によって治療が必要になる場合があります。

 

 

主な原因疾患

 心雑音を引き起こす代表的な疾患には以下のようなものがあります。

 ① 先天性心疾患

 生まれつき心臓の構造に異常があるもので、心臓の壁に穴が開いていたり、弁の機能に異常があったりすることで、血流の乱れが心雑音として聞こえます。子どもの頃に指摘されていなくても、大人になってから偶然発見されることもあります。

 A.心室中隔欠損症(VSD)

 左心室と右心室を隔てる壁(心室中隔)に生まれつき穴が開いている先天性心疾患です。穴を通る血流により収縮期雑音が聴取されます。穴が小さいほど雑音が大きく聞こえることが特徴的です。穴が小さければ自然に閉じることもあり無症状ですが、穴が大きいと左心室から右心室へ血液が漏れ、心不全(詳しくは、「心不全とは?-種類と主な原因」をご覧ください。)や肺高血圧(肺の血管の圧力が高くなる状態)を引き起こすことがあります。

 B.心房中隔欠損症(ASD)

 心房と心房の間の壁に穴が開く病気です。肺動脈弁領域での収縮期駆出性雑音が聴取されます。自覚症状が少ないことも多く、学校健診などで心雑音や心電図異常から発見されることがあります。

 C.肺動脈弁狭窄症(PS)

 肺動脈弁が狭いことで、血液の通り道が狭くなる病気です。狭窄部を血液が通過する際の収縮期駆出性雑音が聴取されます。

 D.ファロー四徴症(TOF)

 複数の心臓の異常が組み合わさった病気で、肺動脈狭窄による収縮期雑音が聴取されます。

 E.動脈管開存症(PDA)

 大動脈と肺動脈をつなぐ動脈管が閉じないことで、血液が本来流れないルートを流れる病気です。特徴的な連続性雑音(機械様雑音)が聴取されます。収縮期から拡張期にかけて途切れずに聞こえるのが特徴です。

 

 ② 後天性心疾患

 生まれた後に何らかの原因で心臓に異常が生じるもので、以下のような疾患があります。

 

 

 A.心臓弁膜症

 心臓には4つの弁(大動脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、三尖弁)があり、血液が一方向に流れるよう制御しています。心臓弁膜症には、この弁が十分に開かなくなる「狭窄症(きょうさくしょう)」や、きちんと閉じずに血液が逆流する「閉鎖不全症」があります。

 弁膜症が生じる主な原因には、加齢による弁の変性(特に大動脈弁の石灰化)、リウマチ熱の後遺症、感染性心内膜炎による弁の損傷、先天的な弁の形態異常(二尖大動脈弁など)があります。この病気が進行すると、心臓への負担が増え、息切れ、動悸、めまい、胸の痛みなどの症状が現れ、心不全につながることもあります。心不全については、詳しくは、「心不全の症状、検査と治療」をご覧ください。

 代表的な弁膜症は以下のようなものがあります。

 A-1.大動脈弁狭窄症(AS: Aortic Stenosis)

 A-2.僧帽弁閉鎖不全症(MR: Mitral Regurgitation)

 A-3.大動脈弁閉鎖不全症(AR: Aortic Regurgitation)

 A-4.僧帽弁狭窄症(MS: Mitral Stenosis)

 

 B.心筋症

 心臓の筋肉(心筋)に異常が起こる病気です。心臓のポンプ機能が低下したり、心室の壁が厚くなったりすることで心雑音が生じることがあります。

 

 

 主なタイプには以下があります。

 B-1.拡張型心筋症(DCM)

 心室が拡大し、収縮力が低下する。ウイルス感染、アルコール多飲、遺伝などが原因となる。

 B-2.肥大型心筋症(HCM)

 心室の壁が異常に厚くなり、血液の流出が妨げられる。多くは遺伝性で、若年者の突然死の原因となることもある。

 B-3.拘束型心筋症(RCM)

 心筋の内膜が硬くなり、心室が十分に拡張できなくなる。比較的まれなタイプ。

 

 心筋症は進行すると心不全や不整脈を引き起こすため、定期的な経過観察が重要です。

 

 C.感染性心内膜炎

 

 

 心臓の内側(心内膜)や弁に細菌が感染し、付着して増殖することで、弁の破壊や損傷を引き起こす重篤な病気です。発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状を伴い、新たな心雑音が出現したり、既存の心雑音が変化したりします。「原因不明の発熱が続き、実は感染性心内膜炎だった」ということがあり、長期入院を要することがあります。

 歯科治療、抜歯、内視鏡検査など、細菌が血液中に入る可能性のある処置が原因となることがあり、特に既存の心臓弁膜症や人工弁を持つ方ではリスクが高くなります。早期の診断と抗菌薬による治療が重要で、治療が遅れると敗血症(血液中に細菌が広がる重篤な状態)や弁の破壊による急性心不全を引き起こすことがあります。

 器質的心雑音は、放置すると心不全や不整脈などの重大な問題に進行することがあるため、正確な診断と経過観察、必要に応じた治療が重要です。

 

3.レバイン分類(Levine Grading)

 心雑音の強さを評価する際には、レバイン分類(Levine分類)という6段階のスケールが用いられます。これは聴診器で聴取される雑音の大きさを、Ⅰ度(最も小さい)からⅥ度(最も大きい)まで分類したもので、心雑音の程度を客観的に記録・共有するための国際的な基準です。

 一般的に、Ⅰ〜Ⅱ度の雑音は小さく、静かな環境で注意深く聴診しないと聞こえない程度です。Ⅲ〜Ⅳ度になると明瞭に聞こえ、Ⅴ〜Ⅵ度は非常に大きな雑音で、聴診器を胸壁から離しても聞こえるほどです。ただし、雑音の強さが必ずしも病気の重症度と一致するわけではなく、小さな雑音でも重要な病気が隠れていることがあるため、総合的な評価が重要です。

 

表.レバイン分類の詳細

 

 レバイン分類は心雑音の強さを示すものであり、機能性雑音か器質性雑音かを判断するには、雑音の性質、聴取される時期やタイミング、心エコー検査などの結果を総合的に評価する必要があります。

 

4.受診の目安

 

 健康診断で心雑音を指摘された場合、要受診(循環器内科受診)というような指示が記載されることが多いです。特に以下のような症状がある際には。早めに循環器内科を受診することをお勧めします。

1)息切れや動悸がある

 階段の上り下りや軽い運動で息が切れる、安静時でも動悸を感じる

2)胸痛や胸部圧迫感がある

 胸が締め付けられるような痛みや違和感、重苦しさを感じる

3)めまいや失神したことがある

 立ちくらみや意識を失ったことがある、ふらつきが頻繁にある

4)疲れやすい、むくみがある

 以前に比べて疲労感が強い、日常生活動作が辛く感じる

5)以前に心臓の病気を指摘されたことがある

 過去に心疾患の診断や治療を受けたことがある

 

 一方で、無症状で今回初めて指摘された場合でも、念のため循環器内科での精密検査を受けることが望ましいです。特に中高年の方や、家族に心臓病の方がいる場合はより注意が必要です。

 

5.医療機関での検査

 循環器内科を受診すると、通常は以下のような検査が行われます。

1)問診・聴診

 いつから症状があるか、どのような時に症状が出るか、過去の病歴や家族歴などを詳しく聞き取ります。また、聴診器で心音を確認し、雑音の性質や時期、強さなどを評価します。

2)心電図検査

 心臓の電気的な活動を記録する検査で、不整脈や心筋の異常を調べます。

3)胸部X線検査

 心臓の大きさや形、肺の状態を確認します。

4)心臓超音波検査(心エコー検査)

 最も重要な検査です。超音波を使って心臓の動きや弁の状態、血液の流れをリアルタイムで観察できます。痛みもなく、心臓の構造や機能を詳しく評価できるため、心雑音の原因を特定するのに非常に有用です。

 

 

 これらの検査結果から、機能性雑音か器質性雑音かを判断し、治療の必要性を検討します。

 

6.治療と経過観察

 検査の結果、機能性雑音と診断された場合は、基本的に治療の必要はなく、定期的な経過観察のみで問題ありません。ただし、原因となっている貧血や甲状腺の病気などがあれば、それらの治療を行います。

 器質性雑音で弁膜症などが見つかった場合、軽度であれば定期的な心エコー検査での経過観察を行います。中等度以上で症状がある場合や、心臓の機能が低下してきた場合には、薬物療法や場合によっては手術(弁置換術や弁形成術)が必要になることもあります。

 

7.日常生活での注意点

 

 心雑音を指摘された方は、以下の点に注意して生活しましょう。

  • 医療機関を受診し、医師の指示に従って経過を確認する
  • 新たな症状が出現したら早めに相談する
  • バランスの取れた食事と適度な運動を心がける
  • 禁煙し、過度の飲酒を避ける
  • ストレスをためない生活を心がける
  • 歯科治療の際には心雑音があることを必ず伝える(治療時に口の中の細菌が血液を介して心臓に到達し、感染性心内膜炎を起こすことがあるため)

 

8.まとめ

 健康診断で心雑音を指摘されても、必ずしも重大な病気があるとは限りません。しかし、自己判断せずに適切な検査を受けることが大切です。早期に原因を特定し、必要に応じて適切な治療や経過観察を行うことで、多くの場合、通常の生活を送ることができます。当院でも、心エコー検査を含めた心雑音の精査が可能です。ご不安な点があれば、お気軽にご相談ください。

 

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