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腎臓病とカリウム管理:高カリウム血症を防ぐ食品選びと調理のポイント

1.カリウムとは

2.カリウムと腎臓の関係

3.カリウムを多く含む食品

4.カリウム含有量を減らす調理法

5.調味料とカリウム

6.カリウム管理のポイント

7.薬剤とカリウムの関係

8.アシドーシスとカリウムの関係

 

 

1.カリウムとは

 カリウム(英語:potassium)は、ナトリウムに次いで体内に多く存在する電解質であり、細胞内液の主要な陽イオンとして、神経伝達、筋肉の収縮、心臓のリズム調整など、多くの生理機能に関わる必須ミネラルです。健康な腎臓は血中カリウム濃度を3.5~5.0mEq/L(ミリ当量/リットル)の適切な範囲に維持していますが、腎機能が低下すると調節機能が衰え、高カリウム血症を引き起こすリスクが高まります。

 

 カリウムは主に尿中に排泄されるため、腎臓病患者にとって血中カリウム値のコントロールは重要な課題となります。一方で、カリウムは血圧調整にも関わっており、適切な摂取は高血圧予防に有効です。ただし、健康な方と腎臓病患者では、推奨されるカリウム摂取量が大きく異なることに理解が必要となります。

 

図1.腎臓におけるカリウムの移動

 

2.カリウムと腎臓の関係

 腎臓は血中カリウム濃度を調節する主要な臓器です。健康な腎臓は過剰なカリウムを尿中に排泄し、血中濃度を適正範囲に維持します。しかし腎機能が低下すると、カリウムの排泄能力も低下し、高カリウム血症のリスクが高まります。なお、カリウムの排出能力には個人差があるため、同じ腎機能レベルでもカリウム値の変動に差が生じることがあります。

 

 慢性腎臓病(CKD)のステージとカリウム管理の関係と目安は以下の通りです。もともと血清カリウム値が高めまたは低めの方もいらっしゃるので、詳細は医療機関でご確認ください。

 

表1.CKDステージ別のカリウム摂取量の目安

CKDステージ

eGFR値(mL/分/1.73m²)

カリウム管理の重要度

推奨カリウム摂取量

G1-2

60以上

通常の注意でよい

制限は一般的に不要

G3a

45-59

意識し始める

過剰摂取を避ける

G3b

30-44

注意が必要

2,000-2,500mg/日

G4

15-29

重要

1,500-2,000mg/日

G5

15未満

最も重要

1,500mg/日程度

 

 高カリウム血症(血清カリウム値>5.5mEq/L)は、重篤な不整脈や心停止などの命に関わる状態を引き起こす可能性があります。初期症状には筋力低下、しびれ、動悸などがありますが、症状がないまま進行することもあり注意が必要です。

 

3.カリウムを多く含む食品

 カリウムは多くの食品に広く含まれていますが、特に注意すべき高カリウム食品は以下の通りです。

 

非常に高いカリウム含有量(一回量で400mg以上)

  • 干し柿(1個60g):約500mg
  • プルーン(5個30g):約200mg
  • 干しあんず(5個20g):約300mg
  • アボカド(1/2個80g):約600mg
  • ココアパウダー(スプーン1杯6g):約80mg
  • 納豆(1パック40g):約300mg

 

高いカリウム含有量(一回量で200-400mg)

  • バナナ(1本100g):約360mg
  • ほうれん草(小鉢1皿70g):約490mg
  • じゃがいも(中1個150g):約630mg
  • さつまいも(中1/2本100g):約470mg
  • トマトジュース(コップ1杯200ml):約520mg

 

中程度のカリウム含有量(一回量で100-200mg)

  • みかん(1個100g):約150mg
  • りんご(1/2個100g):約110mg
  • 桃(1個200g):約360mg
  • トマト(中1個150g):約315mg
  • 牛乳(コップ1杯200ml):約300mg
  • 焼き魚(1切れ80g):約250-350mg

 

 

 カリウム制限が必要な方は、これらの食品の摂取量や摂取頻度に注意が必要です。しかし、完全に避けるのではなく、適切な調理法と組み合わせることで、栄養バランスを保ちながらカリウム摂取を管理することが可能です。

 

4.カリウム含有量を減らす調理法

 カリウムは水溶性のミネラルであるため、適切な調理法によってカリウム含有量を減らすことができます。以下は効果的な調理法ですので、レシピを考える際の参考にしてください。

 

Q:どのような調理法がカリウムを減らすのに効果的ですか?

 野菜や果物に含まれるカリウムは、水にさらす、茹でる、ゆでこぼすなどの方法で減らすことができます。特に効果的なのは「下ゆで」で、細かく切った食材を多めの湯でゆでてから調理することにより、最大50%のカリウムを除去できます。

 

表2.カリウム摂取量を減らすための調理方法

調理法

カリウム減少率

効果的な食材と調理のポイント

水にさらす

10~20%

じゃがいも、さつまいもなどの根菜類。小さく切って30分以上水にさらす。水は時々交換するとより効果的。

下ゆで(ゆでこぼし)

30~50%

ほうれん草、じゃがいもなどの野菜類。小さく切って多めの湯で5~10分ゆでた後、湯を捨てる。

下ゆで後の二次調理

40~60%

下ゆでした食材を使って煮物や炒め物にする。下ゆで時に出たゆで汁は使用しない。

水洗い

5~15%

フルーツや葉物野菜。流水でよく洗い、表面のカリウムを減らす。

缶詰の活用

10~30%

果物や豆の缶詰は、シロップや水を捨てることでカリウムを減らせる。ただし豆缶は塩分に注意。

 

Q:じゃがいものカリウムを効果的に減らす方法はありますか?

 じゃがいもは日本の食卓で頻繁に登場する高カリウム食品です。中サイズのじゃがいも1個(約150g)には約630mgのカリウムが含まれています。カリウムを効果的に減らすには、皮をむいて小さく切り(5mm角程度)、30分以上水にさらした後、多めの湯で10分程度ゆでて湯を捨てます。この方法でカリウム含有量を約40~50%減らすことができ、630mgから約350mg程度まで減らせます。水にさらす際は時々水を交換するとさらに効果的です。また、ポテトチップス(1袋60g:約720mg)や冷凍フライドポテト(Mサイズ100g:約500mg)などの加工食品にも多量のカリウムが含まれていることに注意しましょう。

 

 

Q:じゃがいもの品種(男爵、メークイン、キタアカリなど)によってカリウム含有量に差はありますか?

 じゃがいもの品種によるカリウム含有量の差はほとんどありません。男爵、メークイン、キタアカリ、インカのめざめなど、どの品種も中サイズ1個(約150g)あたり約630mg程度のカリウムを含んでいます。品種の違いは主に食感や調理適性(ホクホク感、煮崩れしやすさなど)に表れるものであり、カリウム含有量には大きく影響しません。

 

 そのため、カリウム制限が必要な方は品種を気にする必要はなく、どの品種を選んでも同様のカリウム除去処理(下ゆで、水にさらすなど)を行うことで、同等の効果が期待できます。重要なのは、適切な下処理と摂取量の管理です。

 

Q:下ゆでの効果を最大化する方法はありますか?

 効果的な下ゆでには以下のポイントがあります。食材を小さく切る(5mm角程度)ことで表面積を増やし、カリウムの溶出を促進します。茹で時間は野菜の種類により調整し、ほうれん草なら2-3分、じゃがいもなら10分程度が目安です。茹で湯は多めに使用し(食材の5-10倍の水量)、茹でた後の湯は必ず捨てます。

 

Q:冷凍野菜はカリウム含有量が少ないのですか?

 冷凍野菜は製造過程でブランチング(短時間の加熱処理)が行われるため、生野菜よりもカリウム含有量が10-30%程度少なくなっています。手軽にカリウム制限食を作る際の良い選択肢です。

 

Q:納豆の種類(ひきわり、粒納豆など)でカリウム含有量に差はありますか?

 納豆の種類によるカリウム含有量の差はほとんどありません。粒納豆、ひきわり納豆、小粒納豆など、どの種類も1パック(約40g)あたり約300mg程度のカリウムを含んでいます。製造方法や大豆の処理方法の違いによる影響は軽微です。そのため、カリウム制限が必要な方は種類を気にする必要はなく、摂取量の管理が重要です。

 

 

5.調味料とカリウム

Q:塩分とカリウムの関係はどうなっていますか?

 減塩食品やカリウム塩(塩化カリウム)を含む調味料には注意が必要です。腎機能が低下している方がカリウム塩を使用すると、高カリウム血症のリスクが高まります。「減塩しょうゆ」「減塩味噌」などの製品は、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで代替していることがあるため、カリウム制限が必要な方は成分表を確認しましょう。

 

Q:調味料のカリウム含有量はどれくらいですか?

 下記に調味料別のカリウム含有量をお示しします。

 

表3.調味料別のカリウム含有量

調味料の種類

使用量

カリウム含有量

腎臓病患者の使用における注意点

通常の醤油

大さじ1杯(15ml)

約60-100mg

適量使用可

減塩醤油

大さじ1杯(15ml)

約150-300mg

カリウム塩使用の場合が多いため注意

通常の味噌

大さじ1杯(18g)

約100-150mg

少量なら使用可

減塩味噌

大さじ1杯(18g)

約200-350mg

カリウム塩使用の場合が多いため注意

ケチャップ

大さじ1杯(15g)

約90-120mg

トマト由来のカリウムを含む

小さじ1杯(6g)

ほぼ0mg

カリウムはほとんど含まない

塩化カリウム(カリウム塩)

小さじ1杯(6g)

約3,000mg以上

腎機能低下者は使用不可

 

Q:減塩調味料の代わりにどのような調味料を使うべきですか?

 カリウム制限が必要な方は、カリウムを使用していない香辛料やハーブ、酢、レモン汁などの酸味を活用すると良いです。にんにく、しょうが、わさび、からし、酢、レモン汁、ハーブ類(バジル、パセリ、タイムなど)は比較的カリウム含有量が少なく、料理に風味を加えることができます。また、だしを効かせた調理法も塩分控えめでおいしく食べられる方法です。

 

 

6.カリウム管理のポイント

 カリウムの管理に重要なポイントは下記のとおりです。

 

  • 腎機能に応じたカリウム摂取量の調整
  • 高カリウム食品の摂取頻度と量の調整
  • 適切な調理法の活用(下ゆで、水さらしなど)
  • 減塩調味料のカリウム含有量に注意
  • 定期的な血液検査による血清カリウム値のモニタリング

 

Q:カリウム制限は一生続ける必要がありますか?

 腎機能の状態によって異なります。CKDステージ1-2では制限が不要な場合も多く、ステージ3以降で段階的に制限が必要になります。定期的な検査で腎機能をモニタリングしながら、医師と相談して調整していきます。

 

Q:カリウム制限中でも外食はできますか?

 工夫次第で外食も楽しめます。和食系の定食店では、ご飯と煮魚や焼き魚を選び、野菜の小鉢は控えめに。事前にカリウム含有量の少ないメニューを把握しておくことが大切です。

 

Q:家族の食事と分けて作る必要がありますか?

 基本的な調理法は同じで構いません。カリウム制限が必要な方の分だけ下ゆでを追加したり、調味料を調整したりすることで、家族全員が同じ食事を楽しめます。

 

Q:カリウム管理と水分摂取の関係はありますか?

 適切な水分摂取は腎臓の働きを助け、カリウムの排泄を促進します。ただし、重度の腎機能低下がある場合は、水分摂取量も制限される場合があります。医師の指示に従った水分摂取を心がけましょう。一般的に尿量が保たれている方は、適度な水分摂取(1日1.5~2リットル程度)がカリウム排泄に有効です。

 

 

Q:じゃがいも以外の根菜類のカリウム管理方法を教えてください

 根菜類は下処理によってカリウムを効果的に減らせます。

 

表4.根菜類に含まれるカリウムと減らすための工夫

根菜類の種類

一般的な使用量

カリウム含有量

効果的な下処理法

さつまいも

中1/2本(100g)

約470mg

皮をむいて5mm角に切り、30分水にさらした後、下ゆで10分で約40%減(約280mgに)

里芋

中3個(120g)

約770mg

皮をむいて小さく切り、水さらし後に下ゆで。ぬめりと一緒にカリウムも除去される

大根

煮物1人前(150g)

約345mg

比較的低めだが、葉の部分(小鉢1皿50g:約200mg)は注意が必要

にんじん

中1本(150g)

約450mg

皮をむいて小さく切れば、そのまま調理可能な場合が多い

 

Q:果物はどのように摂取すればよいですか?

 果物は適量を心がけ、缶詰の活用も効果的です。

 

表5.果物に含まれるカリウムと減らすための工夫

果物の種類

一般的な摂取量

カリウム含有量

摂取時の工夫

バナナ

1本(100g)

約360mg

1/2本程度を目安に。他の高カリウム食品と重ならない日に

りんご

1/2個(100g)

約110mg

比較的低めで摂取しやすい。皮をむくとさらに安心

1個(200g)

約360mg

生よりも缶詰1/2個分(シロップを捨てる)の方がカリウム少なめ(約180mg)

みかん

1個(100g)

約150mg

1個程度なら問題ない場合が多い

 

7.薬剤とカリウムの関係

Q:血圧の薬を飲んでいますが、カリウム値に影響しますか?

 はい、一部の血圧薬はカリウム値に影響します。ACE阻害薬やARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)は、カリウム値を上昇させる可能性があります。また、カリウム保持性利尿薬であるスピロノラクトン(アルダクトンA®)の他、エプレレノン(セララ®)、エサキセレノン(ミネブロ®)、フィネレノン(ケレンディア®)といったミネラルコルチコイド受容体拮抗薬もカリウム上昇に注意が必要です。

 

表6.薬剤におけるカリウムへの影響

薬剤の種類

カリウム値への影響

注意点

ACE阻害薬

上昇させる可能性

定期的な血液検査でモニタリングが重要

ARB

上昇させる可能性

カリウム制限との併用で注意深く管理

カリウム保持性利尿薬

上昇させる

スピロノラクトンは特に注意が必要

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬

上昇させる

エプレレノン、エサキセレノン、フィネレノンなど、比較的新しい薬剤

直接的レニン阻害薬

上昇させる可能性がある

アリスキレンなど、利尿薬ではなく血圧を下げる仕組みが異なる降圧薬

ループ利尿薬

低下させる可能性

フロセミドなど、逆にカリウム補給が必要な場合も

サイアザイド系利尿薬

低下させる可能性

ヒドロクロロチアジド、インダパミドなど、長期使用時はカリウム値の低下に注意

 

Q:サプリメントでカリウムを含むものはありますか?

 はい、一部のサプリメントにはカリウムが含まれています。特に注意すべきものは以下の通りです。

 

  • マルチビタミン・ミネラルサプリメント
  • スポーツ系サプリメント
  • 一部の漢方薬や健康茶
  • スポーツドリンク、栄養ドリンク

 

 サプリメント使用前には必ず医師に相談してください。

 

 

Q:食事以外でカリウム値に影響するものはありますか?

 いくつかの薬剤や健康食品がカリウム値に影響することがあります。特に注意すべきものは以下の通りです。

 

カリウム値を上昇させる可能性のある薬剤

  • ACE阻害薬、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)
  • カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン)
  • ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(エサキセレノン、フィネレノン)
  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  • 免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス)
  • 抗菌薬(バクタ)

 

カリウムを含む健康食品・サプリメント

  • スポーツドリンク、栄養ドリンク
  • 一部のハーブ製品など

 

下剤の乱用

  • 下剤の過剰使用は低カリウム血症を引き起こす可能性があります

 

 これらの薬やサプリメントを使用している場合は、医師や薬剤師に相談し、血清カリウム値のモニタリングを定期的に行うことが重要です。

 

カリウム管理のバランス

 カリウム管理は単に摂取を制限するだけでなく、栄養バランスも考慮することが大切です。果物や野菜には食物繊維やビタミンなど重要な栄養素が含まれているため、完全に避けるのではなく、適切な調理法で摂取することを心がけましょう。また、食品の組み合わせや一回の食事でのカリウム摂取量の分散も効果的です。

 

 腎臓病の状態は個人によって異なるため、食事管理は医師と相談しながら進めることをお勧めします。定期的な血液検査と合わせて、自分にあった食事プランを考えていきましょう。

 

8.アシドーシスとカリウムの関係

 最後にアシドーシス(体液の酸性化)とカリウムの関係について簡単に説明します。アシドーシスは血清カリウム値を上昇させる要因となります。体内の酸が増えると、細胞内のカリウムが血中に移行するためです。腎臓病患者さんではアシドーシスを起こしやすいため、カリウム管理とともに酸塩基平衡にも注意が必要です。医師の指示に従い、必要に応じてアシドーシスの治療も行いましょう。

 

【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)

市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医

 

略歴

2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修

2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科

2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学

2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業

2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教

2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任

その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任

 

最新の医学知識をわかりやすく発信し、地域の“かかりつけ医”として健康を支えます。
本記事は一般情報です。診断・治療は必ず医師の診察をお受けください。

 

 

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