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帯状疱疹ワクチン(シングリックスとビケン生ワクチン)ー予防効果・認知症リスク低下

 帯状疱疹は、80歳までに約3人に1人が経験する身近な病気です。強い痛みや後遺症(帯状疱疹後神経痛)を残すこともありますが、ワクチンで予防が可能です。さらに最新の研究では、認知症の発症リスクを下げる可能性も報告されています。

 

1.帯状疱疹とはどんな病気?

 帯状疱疹は、子どものころにかかった水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が、治った後も神経の中に潜み続け、加齢や疲労・ストレスによって免疫が低下したときに再び活動することで発症します。身体の片側に帯状に広がる水ぶくれ(水疱)と強い痛み、しびれ感が特徴です。

 

発症率 80歳までに約3人に1人が発症
特徴的な症状 からだの片側に帯状に広がる水ぶくれと強い痛み・ピリピリしたしびれ
好発部位 胸・背中・顔(目の周囲など)・腰など
注意すべき後遺症 帯状疱疹後神経痛(PHN)— 皮疹が治っても痛みやピリピリ感が数か月〜数年続くことがある

 

症状の経過

1

前駆期

皮疹が出る数日前から、ピリピリ・ズキズキする痛みや違和感が現れます。

2

急性期

赤い発疹が現れ、水ぶくれになります。強い痛みを伴うことが多く、発疹出現後約1週間は皮疹が増えることがあります。

3

治癒期

水ぶくれはかさぶたになり、通常は2〜4週間で皮膚症状が改善します。

4

痛みが残ることも

皮膚が治った後も痛みが続くことがあり、これを帯状疱疹後神経痛(PHN)といいます。

 

重症化・後遺症が出やすい方

特に注意 50歳以上の方(年齢とともに発症率・重症度が上昇します)
特に注意 糖尿病・がん・免疫抑制剤を使用中の方
特に注意 目の周囲に発症した場合(角膜炎・視力障害のリスクがあります)
注意 強いストレスや疲労が続いている方

2.2種類のワクチンの違い

 現在、日本では2種類の帯状疱疹ワクチンが接種可能です。予防効果・効果の持続期間・接種できる方の条件に違いがあります。

 

  シングリックス当院推奨 ビケン
ワクチンの種類 組み換えサブユニットワクチン
(不活化ワクチン)
乾燥弱毒生水痘ワクチン
(生ワクチン)
接種回数 2回
※1回目から2〜6か月後に2回目
1回
帯状疱疹予防効果 約90% 約60%
効果の持続 10年程度 5年程度
免疫が低下している方 接種可 接種不可
接種対象年齢 50歳以上 50歳以上

※ 市区町村によっては費用助成制度があります。対象年齢・条件はお問い合わせください。
市川市ホームページより(リンク切れにご注意ください)

 

3.シングリックスと認知症予防—最新の研究より

 帯状疱疹ワクチンが、帯状疱疹の予防にとどまらず、認知症の発症リスクを下げる可能性を示す研究が相次いで報告されています。

 

Nature Medicine 2024

シングリックスで認知症診断なしの期間が平均164日延長

オックスフォード大学 / 米国 20万人以上の電子カルテデータを使用

米国で旧ワクチン(Zostavax)からシングリックスへ切り替えた20万人以上のデータを比較した大規模研究です。シングリックス接種群は認知症と診断されるまでの期間が、男女あわせると平均164日長く、認知症リスクが17%低下していました。効果は男女ともに認められましたが、女性でより顕著でした。

図1.米国における認知症の発症
(女性 P<0.00001, 男性 P=2x10-4
Nature Medicine 2024より引用、一部改変

17%

認知症リスク低下
(旧ワクチンとの比較)

164日

認知症なしで
過ごせた日数の延長

20万人+

解析対象者数

 
Nature / Cell 2025

軽度認知障害の発症抑制・認知症による死亡リスクの低下も確認

スタンフォード大学ほか / ウェールズ約28万人・オーストラリアの医療記録を分析

ウェールズとオーストラリアの医療記録をもとに、約28万人を9年間追跡した大規模な研究です。ワクチン接種者は軽度認知障害(MCI)と新たに診断される割合が約20%低下しました。すでに認知症と診断されていた方では、認知症による死亡リスクが約30%低下していました。

約20%減

MCI(軽度認知障害)と
診断される人の割合

約30%

認知症による
死亡リスクの低下

9年間

追跡期間

 
なぜ帯状疱疹ワクチンが認知症に関係するの?(メカニズムの仮説)
 帯状疱疹の原因ウイルスは初感染後も神経の中に潜み続けます。加齢で免疫が低下すると、ウイルスが再活性化して慢性的な神経炎症を引き起こし、アルツハイマー病に関連するアミロイドタンパクの蓄積を促すとも報告されています。ワクチンでウイルスの再活性化を抑えることが、神経炎症を減らし認知機能を守る可能性があると考えられています。
 
※研究者たちは「結果は非常に有望だが、帯状疱疹ワクチンを認知症予防のためだけに接種することを推奨するにはさらなる検証が必要」としています(Harvard T.H. Chan School of Public Health, 2025)。現時点では「帯状疱疹の予防」が主目的であり、認知症への影響は追加的な恩恵の可能性として理解するのが適切です。
 
参考文献:Taquet M, et al. The recombinant shingles vaccine is associated with lower risk of dementia. Nature Medicine 30, 2777–2781 (2024) / Geldsetzer P, et al. Nature 2025; Cell 2025 / Harvard T.H. Chan School of Public Health (2025)

 

 

【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)

市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医

 

略歴

2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修

2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科

2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学

2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業

2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教

2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任

その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任

 

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