口渇や多尿ー糖尿病の初期症状と合併症の症状
糖尿病に初期症状はありますか、という質問をよくいただきます。糖尿病の初期や軽度の時には自覚症状がほとんどありません。「健康診断で血糖値が高い指摘された。」、「クリニックで尿糖は出ているといわれた。」、「HbA1cが高いといわれた。」など、症状がないのに検査値の異常ではじめて指摘される方が多い病気です。どうやって糖尿病に気づくのかという点では、健診や人間ドックで血液検査や尿検査を受けることはとても重要です。写真のような検査結果とともに再検査の指示が出た際には医療機関を受診なさってください。
糖尿病がある程度進行し、血糖が高い状態が続くと以下のような症状が出てきます。
血糖値が高い状態が続くと、どのような症状が出てくるのでしょうか。血糖コントロールが悪くなるときに見られる症状をあげてみます。
・のどが渇く(口渇)
血糖が高いために水を飲んで血液を薄めようと脳が生理的に反応するためです。
・水をたくさん飲む(多飲)
のどが渇くのでたくさん飲む。水ではなくペットボトルのジュース(清涼飲料水は糖質が入っています)をたくさん飲んでさらに血糖値が上がり、倒れてしまう人がいます。これをペットボトル症候群といいます。
・トイレが近い(頻尿)
たくさん水分をとる結果、たくさん尿がでるという生理現象です。
・疲労感
何もしていないのに常に疲れやすくなります。インスリンの作用不足によりブドウ糖がうまく使えなくなり、体がエネルギー不足に陥るためです。
さらに血糖値が悪化すると、
・体重が減る、痩せる(体重減少)
インスリン不足により不足したエネルギーを補うために、筋肉や脂肪が使われてしますからです。この状態を放置すると糖尿病性ケトアシドーシスに至る危険が高いです。すぐに受診してください。
さらに進行すると深刻な糖尿病の合併症を引き起こします。以下は合併症による症状です。
・視力の低下(糖尿病性網膜症)
高血糖のために眼底の血管が障害されることが原因です。血糖値が高い状態が続くと7~10年ほどで現れます。進行すると失明することもあります。
・手足のしびれや痛み(糖尿病性神経障害)
特に足の感覚が鈍くなることがあります。手足の先がビリビリ、じんじんとしびれたり、感覚が鈍くなり痛みを感じにくくなったりすることもあります。
・立ちくらみ(自律神経障害)
たちくらみを起こしやすくなります。便秘・下痢、発汗も自律神経障害の症状です。男性であれば勃起がしづらくなる、いわゆる勃起不全(英語Erectile Dysfunction , ED)の症状も自律神経障害の一つです。
・傷が治りにくい、感染症にかかりやすい
高血糖の状態では体の抵抗力が低下するため、皮膚にできた傷が治りにくかったり、感染しやすくなったりします。悪化すると足の指や踵などが壊死する足壊疽を引き起こします。治療は数か月に及ぶことが多く、足を切断しないと救命できない状態となります。
・足のむくみ(糖尿病性腎症)
高血糖のため腎臓の糸球体が壊れてしまうためです。血糖が高い状態が続くと約10~13年で人工透析が必要な体になってしまいます(ただし、個人差があります)。
・心筋梗塞・脳梗塞のリスクを高める
高血糖状態は動脈硬化を促進し、心臓病や脳血管疾患のリスクを高めます。これにより、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な健康問題が引き起こされる可能性があります。
女性では、妊娠中に血糖値が上昇する妊娠糖尿病があります。胎盤から分泌されるホルモンがインスリンを効きづらくさせ、その結果血糖値が上昇します。これは、妊娠中の健康診断での血糖値の検査によって通常発見されます。妊娠糖尿病がある場合、母体だけでなく胎児にも影響を及ぼす可能性があるため、食事の管理、適切な運動、必要に応じてインスリン治療が行われます。妊娠糖尿病は大抵の場合、出産後には血糖値が正常に戻りますが、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高まるとされています。
糖尿病の初期には自覚症状に気づきにくいため、早期発見が困難な病気ですが、理解と適切な対応により管理することが可能です。定期的な健康診断と生活習慣の見直しは、糖尿病の予防および管理においてとても重要です。自覚症状がなくても、上記の症状に心当たりがある場合は、早めに医療機関を訪れることをお勧めします。