逆流性食道炎
2.原因
3.症状
4.診断方法
5.治療法
6.予防
7.おわりに
逆流性食道炎(読み方:ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)は、胃酸や十二指腸液が食道に逆流し、食道の粘膜が炎症を起こす病気です。この病気は成人の10~20%程度がかかっていると推定されるほど頻度が高く、特に高齢者に多く見られます。ここでは、逆流性食道炎になる原因や治療方法、予防策ついて解説します。
逆流性食道炎になる主な原因は3つあります。
① 下部食道括約筋(LES)の機能低下
この下部食道括約筋という筋肉は、図のように食道と胃のつなぎ目付近にある筋肉です。通常、胃酸が食道に逆流するのを防ぐ役割を果たします。しかしLESが通常通りに働かない場合、胃酸が食道に逆流して炎症を引き起こすことがあります。また、年齢を重ねることでLESが緩みやすくなり、それに伴って胃酸の逆流が起こりやすくなります。
② 胃に圧がかかる
肥満はお腹の中の脂肪が増えて胃などの臓器が圧迫されます。他にも、お腹を強く締めつけるような衣服を着用したり、猫背のように背中の丸まった姿勢や畑仕事等でしゃがんだ姿勢をとったりすると、腹圧を上昇させる原因となります。胃の中の食べ物と胃酸を胃の外側から押し上げることなり、結果として胃酸の逆流の一因となります。
③ 胃酸が多く分泌される
高脂肪食や、お酒に含まれるアルコール、お茶やコーヒーに含まれるカフェイン、煙草に含まれるニコチン等は胃酸の分泌を促進すると言われています。胃酸が過剰に分泌されることで胃酸が逆流するリスクも高くなります。
逆流性食道炎の主な症状は以下の通りです。
・胸やけ
左胸や、胸骨の後ろなど胸の中央(正中)に焼けるような痛みや不快感を覚えます。
・逆流
酸味のある液体が口に戻る(酸っぱいものがあがってくる)感覚が見られます。
・のどの痛み
特に朝起きたときに咽頭痛を感じることが多いです。
逆流性食道炎には、以下の方法が用いられます。
・問診と診察
どの時間帯に症状が起きやすいか、どのような症状があるかなどの確認が中心となります。また、胸の痛みの場合は狭心症などの心臓の病気や気胸などの肺の病気のこともあるため、他の病気がないかの検査や診察もされます。
・内視鏡検査
食道の内側を直接観察し、炎症の程度を確認します。これには食道がんなど、より深刻な病気がないか確認する目的も含まれます。
・pHモニタリング
食道内の酸度を測定し、胃酸の逆流を確認します。実際に行われることは少ないです。
・食道マノメトリー
食道の筋肉の動きと下部食道括約筋の機能を評価します。こちらも実際に行われることは少ないです。
逆流性食道炎の治療は、症状の軽減と生活の質の向上を目指します。主な治療法は以下の通りです。
・ライフスタイルの改善:
食事の量と頻度を見直し、寝る前の食事を避けることが重要です。また、肥満の解消、喫煙や飲酒の制限も症状緩和に役立ちます。
・薬物療法
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(PCAB)であるボノプラザン(タケキャブ®)の他、ランソプラゾール(タケプロン®)、ラベプラゾール(パリエット®)、エソメプラゾール(ネキシウム®)、オメプラゾール(オメプラール®)といったプロトンポンプ阻害薬(PPI)やガスター®、アルタット®、アシノン®などのH2受容体拮抗薬などが使用されます。これらの薬は胃酸の分泌を抑制し、胃酸による粘膜への刺激を軽減します。食道に戻る胃酸が弱まる状態が長く続くことで食道の粘膜が修復されていき、症状を改善させます。
・手術
重症の場合に限り稀に手術を行う場合があります。
逆流性食道炎の予防のため「やってはいけないこと」または「やらない方がよいこと」をいくつか紹介します。
・食べてすぐ寝る習慣
食後すぐは胃酸が多く分泌された状態となります。食後に座ったり立ったりした状態であれば重力によって胃酸が逆流しづらいですが、食後すぐ横になると胃酸の逆流が起こりやすくなります。
・脂っこいものやアルコールを多く摂取すること、食べすぎの習慣
脂っこいものや、アルコールを多く摂取すると胃酸が過剰に分泌される場合があります。また、過食をすることによって胃の中が食べたものと胃酸でいっぱいになり、胃酸の逆流が起こりやすくなります。
・ストレスをためること
ストレスによって自律神経が乱れると、胃酸の分泌量が適切にコントロールできなくなることがあり、逆流性食道炎を引き起こすきっかけになる場合もあります。
逆流性食道炎は日々の食生活や生活習慣、姿勢等に気をつけることで、ある程度予防することができる病気です。食べすぎや飲みすぎ等に日頃から注意をしましょう。