甲状腺とは
1.甲状腺の位置
2.甲状腺の役割
5.甲状腺の病気
甲状腺(読み方:こうじょうせん)は、首の前部に位置する蝶の形をした小さな臓器を指します。喉ぼとけのすぐ下に位置し、左右対称の2つの葉(右葉と左葉)から成り立っています。甲状腺を触って確認しようとしても、小さく柔らかい臓器なためわからないことが多いです。しかし、腫れやしこりがある場合には触るとわかるようになります。
甲状腺の主な役割は、甲状腺ホルモンと呼ばれるホルモンの生成と分泌です。サイロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3)という2種類のホルモンを生成・分泌し、体内のほぼすべての細胞に影響を与え、体のさまざまな機能を調整します。
甲状腺ホルモンは次のような働きをします。
1)代謝の調整
食べ物から摂取したエネルギーの消費と合成が効率的に行われるのを助けます。
2)体温の調整
代謝速度を調節し、体の温度を一定に保つ役割を果たします。そのため、甲状腺の機能が落ちると、寒さに弱くなります。
3)心拍数の調整
心拍数や血圧を調節し、心臓の正常な機能を維持します。
4)成長と発達の支援
胎児や成長期の子供の成長や発育を促す役割があります。
甲状腺ホルモンの調節は、脳の下垂体と視床下部によって行われます。血液中の甲状腺ホルモンが減少すると、下垂体は甲状腺刺激ホルモン「TSH」を分泌し、甲状腺のホルモン分泌と合成を促します。加えて、視床下部は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン「TRH」というTSHの分泌を促すホルモンを分泌します。逆に、血液中の甲状腺ホルモンが増加しすぎると、視床下部や下垂体がTRHやTSHの放出を抑え、甲状腺ホルモンの合成・分泌が減少します。このようにして、血液中の甲状腺ホルモンの量が一定になるしくみになっています。
図1.甲状腺ホルモンの調節
甲状腺疾患には、甲状腺ホルモンが増加する甲状腺機能亢進症や、逆に甲状腺ホルモンが減少する甲状腺機能低下症、甲状腺の良性・悪性腫瘍があります。
1)甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症を引き起こす病気には、甲状腺に対する異常な抗体(自己抗体)によって甲状腺ホルモンが過剰産生され続けてしまう「バセドウ病」、ウイルス感染などの原因により甲状腺機能が破壊され、甲状腺ホルモンが血液中に流れ出すことで生じ、発熱や痛みをともなう「亜急性甲状腺炎」と、発熱や痛みをともなわない「無痛性甲状腺炎」があります。
2)甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症を引き起こす病態には、自己免疫によって甲状腺が破壊される「橋本病(慢性甲状腺炎)」や、亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎の後に甲状腺ホルモンの産生が低下するもの、バセドウ病に対する放射線治療後に甲状腺ホルモンの産生が低下するものなどがあります。
3)甲状腺の結節・腫瘍
甲状腺結節は、甲状腺にできるしこり全般のことを指します。甲状腺腫瘍はその一つで、良性、悪性のものがあります。悪性腫瘍である甲状腺がんは、「乳頭がん」、「濾胞がん」、「髄様がん」、「未分化がん」などの種類があり、もっとも多いのは乳頭がんです。良性のものには、「腺腫様甲状腺腫」、「濾胞腺腫」などがあります。良性と考えられる場合でも、一部が悪性になる可能性も考えて経過観察することが一般的です。甲状腺に腫れやしこりを感じる場合は甲状腺の病気の可能性があるため、医療機関受診をご検討ください。