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バセドウ病

1.バセドウ病とは

2.原因

3.症状

4.診断

5.治療

6.注意と病気の予後

 

 

1.バセドウ病とは

 バセドウ病(英語:Graves' disease)は、甲状腺の機能が過剰になることで発症する自己免疫疾患の一種です。甲状腺は、首の前部に位置し、代謝や体温調節、エネルギーの消費などを調整する甲状腺ホルモンを分泌しています。このホルモンが過剰に分泌される症状を「甲状腺機能亢進症」と呼び、身体にさまざまな症状が現れます。甲状腺の病気の中で、甲状腺ホルモン不応症という甲状腺ホルモンが体内で適切に働かない病気があり、指定難病となっています。一方、バセドウ病は難病指定はなされていません。

 

2.バセドウ病の原因

 バセドウ病は、免疫系が甲状腺を刺激することで引き起こされます。免疫系がTSH受容体抗体 (TRAb)などの自己抗体を何らかの原因により産生し、甲状腺を刺激することで甲状腺ホルモン(T4やT3)が通常よりも多く分泌されてしまいます。この過剰なホルモン分泌によって代謝が異常に活発化し、さまざまな身体の不調を引き起こします。

 バセドウ病は男性よりも女性に多く、遺伝的な要因や、ストレス、ウイルス感染などの環境要因の影響を受けます。家族に甲状腺疾患を抱える人がいる場合、発症リスクが高まります。また、妊娠・出産などの大きな体の変化も発症の引き金となる可能性があります。

 

3.バセドウ病の症状

1)頻脈や息切れ

 心拍数が増加し、心臓が過度に働くために息苦しさを感じやすくなります。

2)眼球突出(眼瞼後退)

 バセドウ眼症と呼ばれ、眼球が飛び出して見えるようになる場合があります。喫煙をしている方はこの症状が出やすいといわれています。また、初期症状としてこの症状がみられることは比較的少ないです。

3)体重減少

 代謝が活発になるため食欲が亢進しますが、いくら食事をとっても痩せるといった症状がでることがあります。中には、食欲が増進することにより太る人もいます。

4)発汗や暑がり

 代謝が活発化することで、体温が上がり汗をかきやすくなります。また、微熱が出る人もいます。

5)手や足の震え

 手足の震えが起き、文字が書きにくいなど、日常生活に支障をきたすことがあります。

6)精神症状

 過剰な甲状腺ホルモンにより精神的に不安定になったり、集中力が低下したりすることがあります。また、不眠を引き起こすこともあります。

7)月経不順(生理不順)

 女性の場合、過剰な甲状腺ホルモンにより、生理の周期が短くなったり、長くなったりするようになることがあります。また、不妊を引き起こすこともあります。

8)甲状腺クリーゼ

 バセドウ病などの甲状腺機能亢進症を患っている人が、手術や感染症などの強いストレスを受けると、甲状腺ホルモンの過剰分泌に体が耐え切れなくなり、複数の臓器が機能低下し命にかかわることもあります。

 

4.バセドウ病の診断

1)血液検査

 血中のホルモンの量を検査し、過剰なホルモン分泌を確認します。バセドウ病では、多くの場合、甲状腺刺激ホルモンのTSHが低く、甲状腺ホルモンのFT3やFT4が高くなります。また、TSH受容体抗体(TRAb・TSAb)の値が高くなります。その他にも、バセドウ病の場合、抗TPO抗体(TPOAb)や、抗サイログロブリン抗体(TgAb)が陽性となることもあります。

2)超音波検査

 甲状腺の大きさや血流、腫瘍の有無などを確認するために、超音波検査(エコー)が行われます。甲状腺は腫大し、血流亢進を伴っていることが一般的です。

図1.超音波検査の様子

 

3)アイソトープ検査・シンチグラフィ

 放射性ヨウ素、または、テクネシウムを摂取し、投与した物質がどれだけ甲状腺に集まったのか(放射性ヨード摂取率)を調べることがあります。高いレベルで検出される場合、バセドウ病の可能性が高まります。また、シンチグラフィと呼ばれる検査があり、投与した物質から発せられる放射線をガンマカメラという特殊なカメラで撮影し、これにより作成された画像(シンチグラム)から甲状腺の形状や大きさを調べることがあります。

図2.核医学検査装置のガンマカメラ

 

5.バセドウ病の治療

 バセドウ病の治療は、甲状腺ホルモンの過剰分泌を抑えることを目的とし、以下の治療法があります。

1)抗甲状腺薬

 甲状腺ホルモンの生成を抑制する薬を服用します。主な薬剤には、メルカゾール®やチウラジール®、プロパジール®があります。再発を繰り返す場合は、放射性ヨウ素治療や手術が検討されます。

2)放射性ヨウ素治療

 放射性ヨウ素を服用し、甲状腺細胞を破壊して、甲状腺ホルモンの産生を抑える方法です。

3)手術

 他の治療法が効果を示さない場合や、腫瘍がある場合は、甲状腺の一部または全体を切除する手術が行われることがあります。放射性ヨウ素治療や手術後は、甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります。甲状腺ホルモンが低値になれば、生涯にわたって甲状腺ホルモンを薬で補い続けることになります。

 

6.生活上の注意と病気の予後

 トウガラシなどの代謝を促進させる刺激物や、お茶やコーヒーなど甲状腺ホルモンの分泌を活発にするカフェインの摂取は控え、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。バセドウ病は、甲状腺の自己免疫疾患の一つで、適切な治療によってコントロール可能な疾患です。しかし、治療を怠ると命にかかわることがあるため、定期的な診察や検査を受け、治療計画をしっかりと守ることが重要です。

 

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