XEC株-2025年冬に増加するコロナ変異株-
3.XEC株とは
新型コロナウイルス(COVID-19、SARS-CoV-2)は、ここ数年間は1-2月の冬の時期、8月頃の夏の時期の年2回流行が見られています。直近の国内感染者数の推移については、図1をご覧ください。2024年もKP.3株が8月をピークにして流行しましたが、2024-2025年の冬にかけては新たな流行が見られるのでしょうか。まずは2024年12月現在、どの変異株が世界や日本で主流となっているか、感染状況を見てみたいと思います。
図1.日本国内の過去2年間のコロナ感染者数の推移
(東京都保健医療局のHPより引用、一部改変)
図2は米国CDC(疾病予防管理センター)のデータで、アメリカ合衆国における直近の変異株の推移と予測を表したものです。
図2.アメリカでのコロナ変異株の割合の推移
(米CDCのHPより引用、一部改変)
ご覧のとおり、アメリカにおいて2024年8月から10月の時点では、KP.3.1.1株、KP.2.3株、KP.3株が流行していました。これらの株はいずれもJN.1系統に属し、変異株としては近縁の種類です。これらJN.1系統の変異株の割合は徐々に減少し、10月からは新たな変異株であるXEC株の割合が増加してきました。12月に入ってからは、XEC株が最も流行している株になっていると予測されています。
図3は、東京都で検出されている2024年10月から11月にかけての変異株の推移です。ご覧いただくと、東京都でも米国CDCのデータと同様に、JN.1系統であるKP.3株は減少しており、XEC株が増加していることがわかります。
興味深いことは、東京都と米国の間でXEC株の増加している時期に差が見られない点です。日本国内で行動制限を意識していた時期は、諸外国で流行が始まって少ししてから日本国内でも新たな変異株が流行するという印象でした。若干の時相差も見られなくなってきたのは、行動制限が意識されなくなってきたこと、蔓延しやすさという意味でのXEC株の感染力が強いことを表しているのでしょう。
図3.東京都でのコロナ変異株の割合の推移
(東京都保健医療局のHPより引用、一部改変)
なお、この10月から11月にかけての時期は感染状況も下火になっていることも影響してか、少ない検体数での結果になっています。米国CDCの図と異なり、KP.3株の割合にばらつきがあるように見えるのは検体数の少なさが影響していると考えられるでしょう。
XEC株はオミクロン系統のBA.2.86株から派生した変異株です。東京大学医科学研究所を中心とした研究チームの発表(The Lancet Infectious Diseases)によれば、「オミクロンXEC株は、オミクロンKP.3.3株への自然感染により誘導された中和抗体に対して、現在の主流行株であるオミクロンKP.3.1.1株よりも高い逃避能を有し、高い伝播力(実効再生産数)を有する」ことが示されています。
医療現場の実感としては、12月上旬の時点でコロナ抗原検査陽性数が少しずつ見られるようになっています。XEC株の高い伝播力などを踏まえると、今後のコロナ陽性者数が増加し、その流行ではXEC株が主流となる可能性が高いと考えられます。
コロナウイルスの主な感染経路は、咳、くしゃみ、会話などによる飛沫感染です。また、ドアノブや机、手すりの上に付着したコロナウイルスに手が触れると、ウイルスが付着した手で鼻や口などを触ることで感染が起こることが知られています。こうした感染を防ぐためには、こまめな手洗いや手指消毒、適切な換気、咳エチケットの徹底が重要です。感染が流行している時期には、みなさまも十分にご注意ください。