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便秘-原因と薬の使い分け-

1.便秘とは?

2.便秘の原因

3.便秘の症状

4.便秘の診断方法

5.便秘の治療法

6.まとめ

 

1.便秘とは?

 便秘(英語:constipation)は、排便の回数が減少し、便の排出が困難になる状態を指します。便が硬くなることも少なくありません。便秘は一時的なものであることが多いですが、長期間続くと腹痛や吐き気、嘔吐が見られる、おなかが張って苦しくなる、食欲が低下するなど、生活の質を著しく低下させる原因となります。

 

 

2.便秘の原因

 便秘の原因は多岐にわたります。主な原因は以下の通りです。

(1)食事習慣

 ・食物繊維の不足

 食物繊維は便の量を増やし、腸の動きを促進します。食物繊維が不足すると便秘になりやすくなります。穀物、イモ類、豆類、ひじき、果物などが、食物繊維を豊富に含む食品です。

 ・水分不足

 水分は便を柔らかくし、スムーズな排便を助けます。水分摂取が足りないと便秘を引き起こすことがあります。

(2)生活習慣とストレス

 ・運動不足

 運動は腸の動きを活発にします。一方、運動不足は便秘の原因となることがあります。普通に生活している方が入院すると便秘になることが多いのですが、極端に運動量が減ることが一因です。

 ・ストレス

 ストレスによって自律神経が乱れることで腸の動きが抑制されることがあり、便秘の原因となります。毎日の生活習慣に気をつけ、ストレスを溜めすぎないことが大切です。

 

 

 ・排便習慣の乱れ

 排便を我慢することが多いと、便が硬くなりやすく、結果として便秘になりやすくなります。

(3)医学的な要因

 ・薬物の副作用

 一部の薬物は便秘を引き起こすことがあります。気管支を拡張させたりパーキンソン病の治療薬として用いられたりする抗コリン薬、咳止めに使われるコデインを含む薬剤、GLP-1作動薬などの糖尿病の治療薬を用いると、便秘になることがあります。

 ・病気

 腸閉塞や過敏性腸症候群、糖尿病や血液透析を要する慢性腎臓病、甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢進症など、特定の病気が便秘の原因となることがあります。ストレスが誘因となりやすい過敏性腸症候群は、男性は下痢が見られるタイプが多く、女性では便秘が見られるタイプが多いとされています。

 

3.便秘の症状

 便秘の主な症状は以下の通りです。

 ・排便の頻度が少ない

 通常、週に3回未満の排便が便秘の基準とされています。

 ・硬い便

 コロコロした硬くて乾燥した便が出ることが多いです。受診の際には、硬い便かどうかは大事な情報なので、医療機関でお伝えください。

 ・排便時の痛み

 排便時に痛みや不快感を覚えることがあります。

 ・腹部の膨満感や痛み

 お腹の張っている感じが続いたり、腹痛が見られたりすることがあります。

 ・不完全な排便感(残便感)

 排便後も便が残っている感じがすることがあります。残便感とも呼びます。

 ・おならが出ない

 大便だけでなくおならが出なくなったら腸閉塞(イレウス)の可能性があります。危険な症状の一つなので、早急に医療機関を受診しましょう。

 ・便が細くなる、便に血が混じる

 便が黒い場合も胃腸の中で出血している場合があります。こうした症状は重篤な病気が隠れていることがありますので、医療機関でご相談ください。

 

 

4.便秘の診断方法

 便秘の診断では、症状や病歴を詳しく伝えることが重要です。パーキンソン病の治療薬や甲状腺機能低下症など、全身の病気に合併して便秘が起こることもあります。便秘と関係ないと思う病気や治療薬が、実は便秘に関連していることがあるため、便秘以外の症状や治療中の病気・薬剤も診察の際にお伝えください。

 なお、必要に応じて以下の検査が行われることがありますが、診察のみの場合も少なくありません。また、最初の診察では検査をしなくても、治療経過に応じて検査が行われるという場合もありますので、医師とよくご相談ください。

 ・身体検査

 腹部の診察を行い、異常所見がないかを確認します。

 ・画像検査

 腹部X線やCTスキャンを使用して、腸の便やガスの状態などを確認します。

 ・血液検査

 全身状態や特定の病気の有無を確認することがあります。

 ・大腸内視鏡検査

 大腸を内側から直接観察し、異常をチェックします。

 

5.便秘の治療法

 以下に便秘の治し方をあげていきます。生活習慣の改善だけで便秘が解消されなければ、薬物療法も検討することになります。

(1)生活習慣の改善

 ・食事の改善

 野菜、果物、全粒穀物など、食物繊維を多く含む食べ物を積極的に摂取しましょう。全粒穀物には、玄米や雑穀米、全粒粉のパンなどがあります。

 ・水分摂取

 1日に1.5~2リットルの水分をとるように心がけ、こまめな水分補給を意識しましょう。特に朝目覚めてすぐ水や白湯を飲むことで腸の動きが活性化されます。なお、腎臓病や心臓病があるなど、医師から水分制限を指示されている場合には、医師の指示に従ってください。

 

 

 

 ・運動

 ウォーキングやストレッチ、体操など、定期的な運動を取り入れましょう。

 ・規則的な排便習慣

 毎日同じ時間にトイレに行く習慣をつけましょう。

 

(2)薬物療法

 市販薬の便秘薬のほかに、病院で処方される薬があります。整腸剤で腸内環境を整える場合もありますが、ここでは処方される下剤の種類と特徴、具体例を紹介します。

  • 上皮機能変容薬

 この薬は小腸や腸粘膜上皮に作用して腸管内の水分分泌を増加させ、腸管内の便輸送を高めて排便を促進する薬です。ルビプロストン(アミティーザ®)は比較的効果が強く、リナクロチド(リンゼス®)は便秘型過敏性腸症候群に適応とされている薬です。エロビキシバット(グーフィス®)は便の形状を整えると共に、排便を促すという特徴を持っています。

薬剤:ルビプロストン(アミティーザ®)、リナクロチド(リンゼス®)、エロビキシバット(グーフィス®

 

 

  • 刺激性下剤

 この薬は腸を刺激して腸の動き(蠕動運動)を活発にし、排便を促す薬です。すぐに排便が促される即効性をもち、値段も安価です。この薬剤が主流だった時期は、常用薬として処方されることも多かったのですが、依存性や習慣性、薬物耐性などの問題も指摘され、現在では頓用程度にとどめることも多くなってきました。ただし、他の薬剤が使えないなどの場合には、この薬剤を中心に処方されることもあります。

薬剤:センノシド(プルゼニド®、アローゼン®)、ピスコルファートナトリウム(ラキソベロン®) など

  • 浸透圧性下剤

 この薬は腸管内に水分を呼び込み、便を軟化させることで排便を促す薬です。酸化マグネシウムは、腎臓に異常のある、あるいは腸閉塞がある方では高マグネシウム症をきたす危険性がありますので、注意が必要です。

薬剤:酸化マグネシウム、ラクツロース(ラグノス経口ゼリー®)、マクロゴール4000(モビコール®) など

  • 外用薬

 直腸まで便がおりてきていて出口で詰まっている際や、薬が飲めない際に用いることがあります。

薬剤:浣腸薬、炭酸水素ナトリウム(新レシカルボン坐剤®) など

  • その他

 麻子仁丸、大黄甘草湯といった漢方薬や、摘便という処置が行われることもあります。

 

6.まとめ

 便秘は多くの人が経験する問題であり、適切な対応を行うことで改善が期待できます。生活習慣の改善や医師の指導のもとで治療を受けることが重要です。便秘に悩む場合は、早めに医師に相談し、適切な治療を受けることをお勧めします。

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