LDLコレステロールを下げる食事-控える食品・摂りたい食品・調理の工夫
5.おわりに
高コレステロール血症(高LDLコレステロール血症)は、動脈硬化を促進し、心筋梗塞・脳梗塞などの重大な心血管疾患リスクを高める生活習慣病です。日本人のスクリーニング基準では、LDLコレステロール140mg/dL以上が高LDLコレステロール血症、120〜139mg/dLが境界域とされています。LDLコレステロール(いわゆる「悪玉コレステロール」)が血管壁に蓄積すると、血管の内側に脂質の塊(プラーク)が形成され、動脈が硬く狭くなります。さらにこのプラークが破れると血栓が形成されやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。
このような血管へのダメージを防ぐうえで、LDLコレステロールを適正な範囲に保つことが重要です。そのための治療の基本が食事療法です。食事だけで十分に改善する方もいますし、リスクの高い方では薬物療法を組み合わせた方がよい場合もあります。食事療法は「薬を使わないための方法」というだけでなく、薬を使う場合でも治療効果を高め、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐための土台になります。

図1.LDL(悪玉)とHDL(善玉)の働き
コレステロールには大きく2種類あります(図1)。LDL(悪玉)コレステロールは肝臓から血管へコレステロールを運搬し、HDL(善玉)コレステロールは血管からコレステロールを回収して肝臓へ戻す役割を担っています。このバランスが崩れ、LDLが増えすぎたりHDLが減ったりすると、血管壁にコレステロールが蓄積して動脈硬化が進みます。
このLDLの合成量を左右する最大の食事因子が「飽和脂肪酸」です。体内に飽和脂肪酸が入ると、肝臓のLDL受容体(血中からLDLを回収する仕組み)の働きが抑制されます。その結果、血液中のLDLが肝臓に取り込まれにくくなり、LDLコレステロール値の上昇につながります。
つまり、問題は食べ物に含まれるコレステロールの量よりも、飽和脂肪酸の摂りすぎによって「LDLを肝臓に回収する仕組み」が働きにくくなることです。これが、食事療法において飽和脂肪酸のコントロールが中心となる理由です。

図2.LDLコレステロールが動脈硬化を発症させるメカニズム
コレステロール値の改善では、「何を減らすか」だけでなく「何を積極的に摂るか」という視点が重要です。以下の3つがポイントとなります。
① 飽和脂肪酸・トランス脂肪酸を減らす(原因を断つ)
飽和脂肪酸は、肝臓がLDLを血液中から回収する「受容体(回収の窓口)」の働きを妨げる最大の要因です。この窓口が機能しなければ、いくら他の対策をしても血中LDLは下がりにくいままです。まず最優先で取り組むべきポイントです。
② 食物繊維・不飽和脂肪酸を積極的に摂る(排出を助ける)
水溶性食物繊維はいわば「コレステロールの吸着スポンジ」です。腸内でコレステロールを吸着し、便とともに体外へ排出する働きを持ちます。また、魚や植物に含まれる不飽和脂肪酸は、肝臓の回収窓口を正常に保つサポートをします。
③ 総エネルギーを適正に管理する(土台を整える)
食べすぎや飲みすぎは肥満・内臓脂肪の蓄積につながります。内臓脂肪が増えるとLDL(悪玉)が上昇し、HDL(善玉)が低下します。内臓脂肪が増えると、肝臓が余分な脂質(VLDL)をより多く作り出すようになり、これが血中でLDLに変換されます。同時に、中性脂肪が増えることでHDLが変質・分解されやすくなり、善玉コレステロールが減ってしまいます。つまり、食べすぎによる肥満は「悪玉を増やし、善玉を減らす」という悪影響をもたらします。適切な食事量を守ることは、コレステロールのバランスを整えるために重要です。

飽和脂肪酸が多いのは、肉の脂身・バター・生クリーム・チーズなどの動物性脂肪、そして菓子パンやインスタント食品など多くの加工食品に使われている植物性油脂(パーム油)などです。これらを「完全に断つ」必要はありません。大切なのは「何を選ぶか」「代わりに何を食べるか」「食べすぎを防ぐ」という3点を意識することです。
① 食材を意識して選ぶ
飽和脂肪酸を減らすうえで、まず取り組みやすいのが食材の選び方です。同じ肉でも霜降り牛肉から赤身・鶏むね肉へ切り替えるだけで、飽和脂肪酸の摂取量は大幅に減ります。また、肉の脂身や鶏の皮は調理前に取り除く習慣をつけるだけでも効果があります。乳製品はバター・生クリームから低脂肪タイプへ切り替え、調理油はバターからオリーブオイルや菜種油に変えることで、LDLを下げる方向に作用する不飽和脂肪酸を日常的に摂ることができます。加工食品を選ぶ際は、原材料表示で「マーガリン」「ショートニング」「植物性油脂」の記載がないかを確認してみてください。
また、特に控えたい食品の目安は以下の通りです。
② 代わりに何を食べるか
飽和脂肪酸を減らすだけでなく、LDL値を下げる方向に働く食品を積極的に取り入れることも重要です。青魚(EPA・DHA)や大豆製品・食物繊維を意識して摂ることで、コレステロールの排出を助け、肝臓の回収機能をサポートすることができます。
以下は、積極的に摂りたい食品リストです。
日本動脈硬化学会では、動脈硬化予防の食事として、減塩に配慮した「日本食パターン(The Japan Diet)」を推奨しています。主食・主菜・副菜をそろえ、肉や動物性脂肪に偏りすぎず、魚、大豆製品、野菜、海藻、きのこ、果物を上手に取り入れる食べ方です。最近の研究でも、日本食パターンは脂質代謝の改善や心血管疾患予防に有用とされています。詳しくは 日本動脈硬化学会「The Japan Diet」のページ をご覧ください。

③ 食べすぎを防ぐ工夫
食事の量を適正に保つことも、コレステロール管理で重要です。まず意識したいのが「食べる速さ」です。早食いは満腹感を感じる前に食べすぎてしまう原因になります。よく噛んでゆっくり食べることで、少ない量でも満足感が得られやすくなります。また、野菜・海藻・汁物から食べ始める「ベジタブルファースト」は、食後血糖値の急上昇を抑えるだけでなく、主食・主菜の食べすぎを自然に防ぐ効果もあります。間食は無糖ヨーグルトやナッツ・果物など、少量で満足感を得やすいものを選ぶようにしましょう。

外食やコンビニを利用する際も、以下の点を意識するだけで大きく変わります。
外食時
揚げ物単品より魚定食・野菜多めの定食形式を選ぶ。ごはんの量を少なめにしてもらう一言も効果的です。
コンビニ
サラダチキン・サバ缶・豆腐・海藻サラダを活用。おにぎりを選ぶなら鮭・昆布など脂質の少ない具材を選びましょう。
居酒屋・ファミレス
枝豆・冷奴・刺身・焼き魚を先に注文する。揚げ物や脂の多い肉料理は後回しにするだけで、自然と摂取量を抑えられます。
④ 調理の工夫
食材の選び方と合わせて、調理法を意識することも効果的です。「揚げる」よりも「焼く・蒸す・茹でる・煮る」を選ぶことで、食材に含まれる余分な脂を落とすことができます。炒め物の油は大さじ1を基本に計量する習慣をつけ、出汁・香辛料・酢・レモンを活用することで、油を減らしながらも満足感のある味付けが可能です。また、肉や魚はグリルや網焼きにすると余分な脂が自然に落ち、ソテーやフライより大幅に脂質を抑えられます。電子レンジや蒸し調理も、油を使わずにしっとり仕上がるためおすすめです。
食事療法は「完璧にやらなければならない」ものではありません。全てを一度に変えようとせず、まず一つ、取り組みやすいところから始めてみてください。続けることで体の変化を実感できると、次の一歩も踏み出しやすくなります。食事のことで気になることや、どこから始めればよいかわからない場合は、お気軽にご相談ください。
【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)
市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医
略歴
2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修
2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科
2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学
2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業
2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教
2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任
その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任
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