下痢の原因と治し方-食事の注意と使う薬-
1.下痢の原因
2.下痢の診断法
3.下痢の治療法
4.下痢の予防策
5.よくある質問
はじめに
下痢(英語:diarrhea)の種類は、腸管の運動の異常により起こる急性下痢、下痢の症状が長期間続く慢性下痢と大きく二種類に分けられ、その原因は感染症からストレスまで多岐にわたります。ここでは、下痢の原因や対処法、そして予防策について解説します。
主な原因を以下に挙げます。
1)感染症
・ウイルス性
ロタウイルスやノロウイルスなどは特に冬に流行するウイルスで水のような下痢を呈します。これらのウイルスは少量でも感染するほど感染力が強く、家族や集団での感染が広がりやすいため注意が必要です。その他にも下痢になるウイルスはありますが、数日以内に改善することが多いため、検査でどのウイルスかを特定することはほぼありません。
・細菌性
サルモネラ菌やカンピロバクターなど、食中毒を引き起こす細菌によるものです。代表的なものとして、生卵や鶏肉の加熱不足が原因となるサルモネラ菌、鶏肉の生食などで感染しやすく特に夏場に多いカンピロバクターなどがあります。

その他にも、おにぎりや弁当など手で触れた食品に繁殖しやすく毒素が原因のため加熱でも防げない黄色ブドウ球菌や、牛肉の生食などが原因となり血便を伴う激しい下痢を引き起こす腸管出血性大腸菌(O157など)が挙げられます。特にO157は重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発するリスクがあるため、早めの受診が必要です。
2) 生活・食事
・食品アレルギー
アレルギー体質であると、特定の食品を食べることでアレルギー反応が起こり、下痢をすることがあります。
・過敏性腸症候群(IBS)
日常のストレスや食事が原因で腸が過敏になり、下痢を繰り返します。朝起きた後や、通勤時や通学時におなかの痛みや下痢が見られるなどが典型的な症状です。

・消化不良
牛乳・ヨーグルトなどに含まれる乳糖(ラクトース)を体内で適切に消化しきれない乳糖不耐症や、小麦などに含まれるグルテンを消化できないグルテン不耐症など、特定の食物を消化する酵素が不足している場合に下痢を引き起こすことがあります。
・お酒の飲みすぎ
アルコールが肝臓や腸に影響を及ぼすことで下痢が出やすくなります。お酒を飲まない日には下痢が見られなくなると、お酒が原因の可能性が高くなります。
3)薬剤の副作用
抗生物質などが、腸内の正常な細菌バランスを崩してしまい、下痢を引き起こすことがあります。
4) 炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患(IBD)とは感染症ではなく、免疫の異常によって腸に慢性的な炎症が生じる病気の総称で、クローン病や潰瘍性大腸炎が代表的です。下痢のほかに血便や体重減少、腹痛を伴うことが多く、長期的な治療管理が必要となります。
5)内分泌疾患
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症では、腸の動きが活発になりすぎることで下痢を引き起こすことがあります。また、糖尿病が進行すると自律神経が障害され、腸の動きが乱れることで慢性的な下痢が起こることがあります。これらは下痢以外にもさまざまな症状を伴うことが多いため、下痢が長引く場合は内分泌疾患の可能性も考慮した受診をお勧めします。
下痢の原因を特定するためには、以下のような診断方法があります。
1)診察
診察では、詳しい症状の内容や食事、生活習慣、病歴についての質問があります。また、お腹を触って痛みなどがないかを確認する触診や、お腹の音を聞くことで腸の動き程度を確認する聴診をします。

2)便検査
大人の下痢において大半の場合で、便の検査をすることはありません。高熱が続いている、または入院しているなど特殊な場合に、便の中のウイルス、細菌、寄生虫を検査し、感染症の有無を確認することがあります。
3)血液検査
炎症性腸疾患など特殊な病気を疑う場合に限り、血液中の炎症反応などを確認するために行われることがあります。
4)内視鏡検査
腹痛や血便を伴うなど、クローン病や潰瘍性大腸炎などが疑われる場合に、大腸や小腸の内部をカメラで直接観察することで炎症や潰瘍の有無を確認します。

下痢の治し方は原因に応じて異なります。以下に主な治療法を紹介します。
1)水分補給
下痢による脱水を防ぐために、十分に飲み物を摂取することが大切です。また、水分とともにナトリウムやカリウムといった電解質が不足するため、OS1などの経口補水液(ORS)やスポーツドリンクがおすすめです。

2) 食事療法
下痢の症状が強いときは、水分やゼリー、ペースト状のものなどであれば、下痢は悪化しづらくなります。おかゆなど水分の割合が多く、一つ一つの大きさが小さいものは次に消化がよいものとなります。消化に良い食品などで、しっかりと栄養を取るとともに、腸を休めることが大切です。

食べると悪いものは、ラーメンなど、脂肪が多くカロリーの高いものや、食物繊維の多い食品、コーヒーや辛いものといった刺激のあるものなどで、できるだけ避けるようにしましょう。
3)薬物療法
一般的には腸内の細菌環境を整える整腸剤が処方されます。また、症状が強い場合には、止痢薬(下痢止め)も処方されることがあります。また、細菌性が疑われる場合には、抗生剤が処方されることがあります。一方、過敏性腸症候群が疑われる場合には、腸の動きを調整する薬を用います。
4)生活習慣の改善
ストレスを軽減し、自律神経を整え、規則正しい生活を心がけましょう。睡眠をしっかりとり、オフの時間も作ったり、趣味を楽しんだりすることがよいでしょう。
下痢を予防するためには、以下の対策が有効です。
1)手洗いの徹底
外から帰ってきたときや、トイレの後、食事の前は石鹸を使い、しっかりと細菌やウイルスを洗い流すことが大切です。

2)食品の衛生管理
加熱用の食材は加熱不足が無いようにし、また、食材の保存に注意を払いましょう。また、汚染されたまな板の上で調理したものを食べると下痢をすることがあるので、まな板や包丁なども洗ってから使うようにしましょう。

3)適切なワクチン接種
子供に多いウイルス性胃腸炎の原因となるロタウイルスは、予防接種を受けることで、胃腸炎による下痢の重症化を予防することができます。お子さんがいらっしゃる場合は、ご検討ください。
4)夏場・気温の高い時期の食中毒対策
気温や湿度が上がるにつれて細菌が繁殖しやすくなり、食中毒のリスクが高まります。特にカンピロバクターやサルモネラ菌、黄色ブドウ球菌による食中毒は、暑い時期に多く報告されます。気温が上がる時期は、作り置きや食材はすぐに冷蔵・冷凍し、お弁当には保冷剤を活用するなど、食品を、室温に長く置かないことを意識するだけで食中毒のリスクを大きく減らせます。

Q.下痢が止まらないのですが、どうしたらよいですか?
まず、血便や黒い便が出ている、38度以上の発熱が続いている、激しい腹痛や強い吐き気があるといった症状を伴う場合は、我慢せずすぐに内科を受診してください。そのような症状がない場合は、まず自宅でこまめに水分を補給しながら、消化の良いものを少量ずつ食べて腸を休めましょう。それでも3〜5日以上改善しない場合は内科への受診をお勧めします。下痢が長引く背景には、感染症、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、バセドウ病など、治療が必要な原因が隠れていることがあります。
Q.コーヒーを飲むと下痢になるのですが、なぜですか?
コーヒーに含まれるカフェインには腸の動きを活発にする作用があり、敏感な方では下痢を引き起こすことがあります。空腹時に飲む場合は特に影響が出やすいため、食後に飲むようにするだけでも改善することがあります。
Q.下痢のときにおならが増えるのはなぜですか?
下痢のときは腸内環境が乱れ、腸内細菌のバランスが崩れることでガスが発生しやすくなるためです。おならが増えるだけでなく臭いが強くなることもあります。
Q.下痢が続いておしりの穴が痛いのですが、大丈夫ですか?
下痢が続くと肛門周囲が繰り返し刺激されて炎症を起こしやすくなるため、痛みが出ることがあります。下痢が改善すれば自然と落ち着くことが多いですが、痛みが強い場合や出血を伴う場合は痔や肛門周囲膿瘍のほか、大腸がんが原因となっていることもありますので、症状が続く場合は一度受診をお勧めします。
おわりに
下痢は誰しもが経験するお腹の不調ですが、対処と予防策をしっかりと行うことで、下痢が起こりづらくなります。もし下痢が長く続き止まらない場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)
市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医
略歴
2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修
2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科
2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学
2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業
2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教
2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任
その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任
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