高血圧を放置するとどうなるのか?
高血圧は、自覚症状が少ないため軽視されがちですが、放置すると重大な健康リスクを引き起こします。血管や重要な臓器に負担がかかり続けることで、深刻な病気の原因となるため、早期に治療を始めることが重要です。

高血圧が続くと、血管に過剰な圧力がかかり、ダメージが蓄積されます。その結果、次のような危険性が高まります。
1.脳血管障害(Cerebral Vascular Disorder: CVD)
2.心臓病(虚血性心疾患 Ischemic Heart Disease:IHD、心不全 Heart Failure:HFなど)
3.腎臓病(慢性腎臓病 Chronic Kidney Disease:CKD、腎不全 Renal Failure: RFなど)
4.その他の影響

1.脳血管障害(Cerebral Vascular Disorder: CVD)
高血圧が続くと、脳の血管に強い圧力がかかり、血管の壁が次第に傷つきます。この状態が続くと、血管が硬くなる(動脈硬化)だけでなく、弱くなった部分が膨らみ(動脈瘤)、破裂しやすくなります。これが脳出血の原因になります。また、血管壁に脂質がたまって血管が狭くなる(狭窄)と、血流が途絶えやすくなり、脳梗塞を引き起こすことがあります。
脳血管障害により、言語障害や半身麻痺、記憶障害などの後遺症が残る場合があります。最悪の場合、生命に関わる重大な危険性もあります。

2.心臓病(虚血性心疾患 Ischemic Heart Disease:IHD、心不全 Heart Failure:HFなど)
高血圧は、心臓を取り巻く冠動脈にも影響を及ぼします。血管に高い圧力がかかり続けると、冠動脈の内壁に傷がつき、そこに脂質がたまりやすくなります。これにより動脈硬化が進行し、血液の流れが悪くなると、心臓への酸素供給が不足します。この状態が狭心症や心筋梗塞の原因となります。
さらに、高血圧は心臓自体にも直接負担をかけます。血液を送り出す際に余分な力が必要になるため、心臓の筋肉が肥大化します(心肥大)。しかし、筋肉が肥大すると心臓の動きがかえって効率的でなくなり、最終的には心不全を引き起こすことがあります。
つまりは、高血圧が原因で狭心症、心筋梗塞、さらには心不全といった深刻な状態に進行する可能性があるわけです。

3.腎臓病(慢性腎臓病 Chronic Kidney Disease:CKD、腎不全 Renal Failure:RFなど)
腎臓は、体内の血液をろ過して老廃物や余分な水分を排出する役割を持っています。この腎臓内の血管に高い圧力がかかると、血管が傷つき、腎臓の働きが徐々に低下します。また、腎臓の機能低下は血液のろ過が不十分になることで水や老廃物が蓄積し、さらに高血圧を悪化させるという悪循環に陥ることがあります。
進行すると慢性腎臓病や腎不全を引き起こし、透析が必要になる場合もあります。

動脈硬化
全身の血管で動脈硬化が進行することで、手足の血流が悪くなる末梢動脈疾患や、大動脈瘤といった疾患を引き起こすことがあります。
眼の病気
高血圧は目の奥の網膜の血管にも影響を及ぼし、視力低下や失明につながることもあります(高血圧性網膜症)。
高血圧は、早い段階で治療を始めることで、血管や臓器へのダメージを最小限に抑えることができます。特に、生活習慣の改善や適切な薬物療法を取り入れることで、血圧を適切にコントロールし、血管への負担を軽減することが期待されます。また、臓器への影響を抑える効果もあります。その結果、全身の健康状態が維持され、健康寿命を延ばす可能性があります。

もし、高血圧を指摘されてからしばらく放置してしまった場合でも、治療を始めるのに遅すぎるということはありません。具体的にどのような診療をし、治療を行っていくかは、「高血圧の診療で行うこと」、「高血圧の治療」で解説しております。健康診断や人間ドックで高血圧を指摘された際には、医療機関でご相談ください。
【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)
市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医
略歴
2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修
2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科
2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学
2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業
2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教
2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任
その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任
最新の医学知識をわかりやすく発信し、地域の“かかりつけ医”として健康を支えます。
本記事は一般情報です。診断・治療は必ず医師の診察をお受けください。












