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腎性貧血

1.腎性貧血とは?

2.腎性貧血の症状

3.腎性貧血の原因

4.診断方法

5.治療法

 

1.腎性貧血とは?

 腎性貧血は、慢性腎臓病(CKD)によって引き起こされる貧血です。通常、体内の酸素が不足すると腎臓がこれを感知し、エリスロポエチン(EPO)というホルモンを産生して骨髄に赤血球を増やすよう指令を送ります。この酸素濃度の感知には HIF(低酸素誘導因子)が重要な役割を果たしています。HIFは酸素不足を察知すると活性化され、EPO産生を促進します。

 しかし、腎機能が低下すると、HIFが正常に働いても腎臓のEPO の産生能力が損なわれるため、十分な赤血球が作られず、体内の酸素運搬能力が低下して貧血が生じます。

 

 

2.腎性貧血の症状

 腎性貧血の症状は、一般的な貧血と似ていて、以下のような症状が現れることが多いです。

 

  • 体がだるい、疲れやすい
  • 息切れや動悸がする
  • 集中力の低下やめまい

 

 これらは、赤血球が減ることで体に必要な酸素が十分に行きわたらなくなることが原因です。さらに、症状が進行すると、酸素不足を補うために心臓がより強く働こうとします。この状態が続くと、心臓に大きな負担がかかり、心不全などの心臓の病気を引き起こすリスクが高くなります。

 また、心不全が進むと、心臓の働きが弱まり、血液の流れが悪くなります。結果的に腎臓に届く血液が減り、すでに弱っている腎臓の機能がさらに低下してしまいます。こうして、心臓と腎臓が互いに悪影響を及ぼし合う負のスパイラルに陥ることがあります。

 

 

3.腎性貧血の原因

 私たちの体は、赤血球という細胞が酸素を運ぶことで、全身の臓器や筋肉がしっかりと働いています。赤血球は、腎臓から出るエリスロポエチンというホルモンの指令によって作られます。

 しかし、腎臓の機能が低下することで、このホルモンが十分に作られなくなり、赤血球が減ってしまいます。その結果、体に必要な酸素が足りなくなり、酸素不足による貧血が起こります。

 


4.診断方法

 貧血の原因は多岐にわたるため、腎性貧血の診断は、他の貧血原因を除外して行います。

1)貧血の確認と他原因の除外

 血液検査でヘモグロビン値の低下を確認します(男性13g/dL未満、女性12g/dL未満)。次に、鉄・ビタミンB12・葉酸欠乏や血液疾患(白血病、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群など)、心疾患・肝疾患・膠原病などの炎症性疾患による貧血を除外します。

 

2)腎性貧血の確定診断

 慢性腎臓病が存在し、他の明らかな貧血原因がない場合に腎性貧血と診断します。必要に応じて血中エリスロポエチン(EPO)濃度を測定し、貧血の程度に対してEPO濃度が相対的に低値であることを確認します。

 

5.治療法

 腎性貧血の治療は、主に以下の方法がとられます。

1)エリスロポエチン製剤(ESA 製剤)

 EPO を人工的に作った注射薬で、体内に直接ホルモンを補給します。発売日順に列挙します。

 

  • エスポー®(エポエチン α/β):週1〜3回
  • ネスプ®(ダルベポエチン α):週1回〜隔週
  • ミルセラ®(エポエチン β ペゴル):月1回

 

 注射の回数が少ないほど通院負担は軽くなりますが、効きすぎてヘモグロビン (Hb) が急上昇すると血栓の危険があるため、月1回前後の採血で値をチェックしながら用量を調節します。

 

2) HIF-PH 阻害薬

 酸素不足のシグナルを安定化させて体内の EPO 産生を高める経口薬です。注射が苦手な⽅や通院回数をさらに減らしたい⽅に選択肢が広がりました。発売日順に列挙します。

 

  • エベレンゾ®(ロキサデュスタット):週3回(透析日または隔日)
  • ダーブロック®(ダプロデュスタット):1日1回
  • バフセオ®(バダデュスタット):1日1回
  • エナロイ®(エナロデュスタット):1日1回
  • マスーレッド®(モリデュスタット):1日1回 

 

 いずれも鉄の利⽤効率を改善する利点がありますが、血栓症・⾼⾎圧 など ESA 製剤と同様の副作用に注意が必要です。また、制酸剤やリン吸着薬 とは服⽤時間をあける必要がある種類もあるため、服薬スケジュールは医師・薬剤師と確認してください。

 

3)鉄剤の補充

 鉄剤を内服または注射することにより、赤血球を作る材料として鉄を補います。

 

4)生活習慣の改善

 腎臓への負担を減らすため、食事(塩分・たんぱく質など)の制限や栄養バランスの工夫を行います。

 

6.まとめ

 腎性貧血は慢性腎臓病の合併症として多く見られ、放置すると体のだるさや息切れなど日常生活に支障をきたします。早期に医療機関で検査を受け、適切な治療を行うことが大切です。腎臓病と診断された方は、定期的な血液検査を欠かさず、貧血の兆候に注意しましょう。

 

 

【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)

市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医

 

略歴

2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修

2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科

2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学

2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業

2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教

2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任

その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任

 

最新の医学知識をわかりやすく発信し、地域の“かかりつけ医”として健康を支えます。
本記事は一般情報です。診断・治療は必ず医師の診察をお受けください。

 

 

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