腎代替療法(血液透析・腹膜透析・腎移植)の比較
1.腎代替療法とは?
2.血液透析(HD)
3.腹膜透析(PD)
4.腎移植
腎臓は、毒素などの老廃物と水分の二つを出す役割を担っています。その他、血液を作る指令を出したり、カルシウム・リンを調整して骨の強さを保ったりする働きもあります。しかし、腎臓の機能が低下し、老廃物や余分な水分を排出できなくなると、腎代替療法が必要になります。
「血液透析(HD)」「腹膜透析(PD)」「腎移植」 の3つがあり、それぞれ方法や特徴が異なります。どの治療を選ぶかは、生活スタイルや健康状態に応じて決めることが重要です。
1)自己血管内シャント
動脈と静脈をつなぎ合わせることで、透析に適した血流量を確保する方法です。一般的に前腕や上腕に作られます。透析を続けるうちに狭窄や閉塞が起こることがあり、定期的な管理が必要となります。利き腕ではない方でなおかつ、なるべく体から遠い手の先の方でシャントの吻合部を作る(動脈と静脈をつなぐ)ことが一般的です。ただし、つなぐ動脈や静脈の状態が悪いと、手術後にシャント血管の発達が見込めないと考えられるので、どこで吻合部を作るかはケースバイケースです。
図2.自己血管内シャント
2)人工血管内シャント
自己血管が使用できない場合、人工血管を埋め込んでシャントを作成する方法です。グラフトとも呼ばれます。感染症や血栓ができるリスクがやや高く、定期的なメンテナンスが重要となります。人工血管は体内に埋め込まれており、体の外には何も露出しません。
図 3.人工血管内シャント(グラフト)
3)パーマネントカテーテル(長期留置カテーテル)
内シャントが作成できない場合や内シャントが適切でない人に使用されます。感染や閉塞が起こることがあり、定期的な管理が必要となります。鎖骨の上付近からカテーテルが出ている状態になります。
図4.パーマネントカテーテル
腹膜透析は、患者さん自身が自宅で透析液を交換し、お腹の中の腹膜をフィルターとして利用する治療法です。この治療では、あらかじめお腹にカテーテルを埋め込む手術が必要です。透析液をお腹に入れて数時間置いた後、老廃物を含んだ透析液を排出することで血液を浄化します。腹膜透析には、以下の二つの方法があります。
図5.腹膜透析
1)CAPD(持続携行式腹膜透析 / ツインバッグ法)
1日4回程度、決まった時間に自分で透析液を交換する方法です。1回20~30分で、職場や外出先でも行うことができます。
2)APD(自動腹膜透析)
寝ている間に機械を使って自動で透析液を交換する方法です。日中は自由に行動できるため、仕事や生活の自由度が高いです。大半の人はこちらの方法を用いていますが、APDのみで透析の量や除水の量が足りなければ、日中の透析液貯留も追加することがあります。例えば、APDの最後に透析液を注入して、お昼ごろに手動で透析液を外に出すなどとすることがあります。この場合、お昼から寝る前までは腹膜透析をお休みすることができます。
血液透析より比較的に社会生活がしやすい腹膜透析ですが、長期間使用すると腹膜の機能が低下する可能性があり、腹膜透析の継続が難しくなることがあります。また、お腹にカテーテルを留置するため、入浴に手間がかかることや、出口部感染、腹膜炎といった感染症に注意する必要があり、清潔な環境で管理することが重要となります。
腎移植は、健康な腎臓を持つドナーから腎臓を移植し、新しい腎臓の働きによって老廃物や余分な水分を排出できるようにする治療法です。移植には、家族など生きているドナーから提供を受ける生体腎移植と、亡くなった方から提供を受ける献腎移植の2種類があります。移植後は、免疫抑制剤を一生飲み続ける必要がありますが、透析が不要になり、生活の質が大きく向上するのが大きな利点です。移植された腎臓は人間の腎臓本来の機能に近いため、合併症が少ないと考えられます。
しかし、ドナーがすぐに見つかるとは限らず、献腎移植の場合は14年以上の待機が必要になることもあります。待期期間の最新情報については医療機関でご相談ください。
どの腎代替療法を選択するかは、患者さんの生活スタイルや健康状態によって異なります。
・通院が可能で、医療スタッフの管理を受けながら治療を行いたい → 血液透析(HD)
・自宅で治療を行い、仕事や旅行の自由度を保ちたい → 腹膜透析(PD)(食事や水分制限が比較的緩やかになることが多い)
・透析をせずに生活したい → 腎移植
腎代替療法は長期にわたる治療となるため、自分のライフスタイルに合った方法を選ぶことが重要です。医師やご家族と十分に相談しながら、最適な治療法を選びましょう。
表1.腎代替療法の選択肢