メニュー

腎臓病とむくみの関係ー腎性浮腫とは

1.腎性浮腫とは

2.腎機能低下とむくみのメカニズム

3.腎疾患別のむくみの特徴

4.早期受診するべき注意する症状

5.CKDステージに応じた水分・塩分管理

6.むくみの治療法

 

 

1.腎性浮腫とは

 腎性浮腫(じんせいふしゅ)は、腎臓の機能低下により体内の水分とナトリウムの調節ができなくなることで発生するむくみです。健康な腎臓は1日約180リットルの血液を濾過し、体に必要な水分量を適切に調節しています。この機能が低下すると余分な水分が体内に蓄積し、むくみとして現れます。

 

2.腎機能低下とむくみのメカニズム

 腎性浮腫は主に以下の3つのメカニズムで発生します。

1)水分・ナトリウム貯留

 腎機能が低下すると、余分な水分とナトリウムを尿として排出する能力が低下し、体内に蓄積されます。特にeGFR(推算糸球体濾過量)が45mL/分/1.73m²以下になると、この機能低下がより目立ってきます。

 

2)血清アルブミンの低下

 腎臓からタンパク質が漏れ出すタンパク尿が続くと、血液中のアルブミン濃度が低下します。アルブミンは血管内に水分を保持する重要な役割を持つため、その減少により水分が血管外に漏れ出し、組織にむくみが生じます。詳しくは、「アルブミンが低いとどうなる?ー原因・症状・改善策」もご覧ください。

 

3)レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の活性化

 腎血流量の低下により、RAASという血圧調節システムが活性化し、アルドステロンというホルモンが分泌されます。

 アルドステロンは腎臓でナトリウム(塩分)を体内にためこむ働きがあります。ナトリウムに引き寄せられる形で、水分も一緒に体に貯留します。その結果、血液量が増加して血管内の圧力が上昇し、血管から組織へ水分が漏れだしてむくみが生じます。さらに高血圧や心不全のリスクも高まり、悪循環を形成します。

 この流れを止めるために、アルドステロンの作用を抑える薬や、余分な水分・ナトリウムを排出する利尿薬を使用します。

 

3.腎疾患別のむくみの特徴

Q:急性腎炎と慢性腎炎では、むくみの現れ方に違いがありますか?

 はい、疾患によってむくみの特徴は大きく異なります。

1)急性糸球体腎炎

・発症様式

 数日~1週間程度と、短い期間で急に発症します。

・特徴

 足や顔のむくみ、まぶたが腫れぼったくなるなどの症状が見られます。進行すると、全身にむくみが拡大します。

・症状

 尿量減少、高血圧、血尿などが見られます。進行すると、肺に水があふれる肺水腫という状態となり、息苦しさが見られるようになります。

 

2)慢性糸球体腎炎

・発症様式

 数ヶ月〜数年かけて、ゆっくりと進行します。

・特徴

 足の浮腫が見られることが多いですが、最初は自身では気づかず、健康診断や人間ドックなどで初めて指摘されることも少なくありません。脛の下の方から始まり、少しずつ上行するなどします。

・症状

 蛋白尿や進行性の腎機能低下が見られます。自覚症状が軽微であることも多く、検査をしないと気づかないことが多いことも特徴です。

 

Q:ネフローゼ症候群のむくみは他の腎臓病と何が違いますか?

 ネフローゼ症候群は、高度な蛋白尿が見られる病気です。以下のようなむくみが現れます。

・移動する浮腫

 体位によってむくむ場所がかわります。ネフローゼ症候群では水分量がかなり多くなっているため、重力に従って水分が移動し、むくみが移動するように感じることがあります。

・皮膚の光沢

 むくみが高度になると、皮膚がパンパンに腫れたように見えます。このため皮膚の光沢が見られるようになり、治療によりむくみが軽減すると、しわが出てくるように見えます。

・非対称性の浮腫

 例えば足に血栓ができると、血栓ができた側の足のむくみが目立つことがあります。血栓が足から肺にとぶと肺塞栓という突然死につながる状態に悪化しうるので、急ぎ受診が必要です。

・陰嚢浮腫

 男性では陰嚢にもむくみが見られることがあります。

 

4.早期受診するべき注意する症状

 早めに受診したほうがよい症状、間髪入れずに緊急に受診したほうがよい症状にわけて説明いたします。

Q:どのような症状があれば緊急で受診が必要ですか?

 以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

・呼吸困難

 安静時の息切れ、横になった時の呼吸困難

・急激な体重増加

 2-3日で3kg以上

・高度の全身浮腫

 ふとももや腹部、背中まで腫れが及ぶ

・乏尿

 1日の尿量が400mL未満

・血圧の急激な上昇

 収縮期血圧(上の血圧) 180mmHg以上

・意識状態の変化

 頭痛、吐き気、視野異常

 

Q:どのような症状があれば早めに受診が必要ですか?

・持続する足やまぶたの浮腫

 3日以上持続する

・尿の泡立ち

 蛋白尿があると、尿が泡立つ

・夜間頻尿

 一晩に3回以上の夜間尿がある

・全身の倦怠感

 日常生活に支障がでる程度

 

5.CKDステージに応じた水分・塩分管理

Q:CKDステージG3bですが、1日の水分摂取量はどのくらいが適切ですか?

 慢性腎臓病では、CKDステージに応じた水分・塩分管理が重要です。GFRが低下し、慢性腎臓病のステージが進行すると、むくみがより起こりやすくなります。尿量が減少してむくむ場合には水分制限や利尿薬の開始・増量が必要になります。一方で、十分に尿量が出る時期では水分制限は必要ありません。一般には、糖尿病ではむくみやすく、多発性嚢胞腎ではむくみが出にくいという特徴がありますが、個人差が大きいので病状に応じて判断することが推奨されます。

 病状によっては十分に飲水量を確保することで、尿量を確保し、より多くの尿毒素を尿から排泄させるようにします。 一方、塩分制限はどの病期でも1日6g未満とすることが推奨されます。

 

6.むくみの治療法

1)薬物療法

 腎性浮腫の治療には、腎機能に応じて以下の薬剤が使用されます。

① 利尿薬

 利尿薬は余分な水分と塩分の排出を促進し、むくみの改善に効果的です。下記が一般的な利尿薬ですが、慢性心不全や肝硬変の場合にはサムスカ®(トルバプタン)という水利尿薬が使われることがあります。

 

表1.利尿薬の種類と特徴

利尿薬の種類

代表的な薬剤名

作用の強さ

主な副作用

ループ利尿薬

ラシックス®(フロセミド)

ルプラック®(トラセミド)

ダイアート® (アゼソミド)

強力

低カリウム血症、低ナトリウム血症、GFR低下

サイアザイド系利尿薬

フルイトラン®(トリクロルメチアジド)

ナトリックス®(インダパミド)

中等度

低カリウム血症、低ナトリウム血症、高カルシウム血症、高尿酸血症

カリウム保持性利尿薬

アルダクトン®(スピロノラクトン)

軽度

高カリウム血症、GFR低下

 

➁ SGLT2阻害薬

 ・フォシーガ®(ダパグリフロジン)

 ・ジャディアンス®(エンパグリフロジン)

 

 もともと糖尿病治療薬として開発されましたが、慢性腎臓病や慢性心不全にも効果があることがわかり、適応追加された薬です。軽度の利尿作用があり、心不全や腎臓病患者のむくみ改善にも効果があることがわかっています。

 

③ ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)

 ・エンレスト®(サクビトリルバルサルタン)

 

 心不全治療薬として開発されましたが、現在は高血圧にも使われます。サクビトリルはネプリライシン阻害薬といって、ナトリウム利尿ペプチドを増加させる作用があります。ナトリウム、すなわち塩分を尿から出すことで体の水分も同時に減らし、腎臓病患者のむくみにも効果を示すことがあります。

 

④ その他の重要な薬剤

 ・ACE阻害薬・ARB

 血圧降下とタンパク尿の減少の効果があります。ネフローゼ症候群の中でも膜性腎症では、これらの薬で病勢を抑えられることがあります。

 ・アルブミン製剤

 重度の低アルブミン血症の場合に用いることがあります。

 

2)透析療法

 腎機能が著しく低下した場合には、血液透析や腹膜透析により水分と老廃物の除去が行われます。透析により適切な水分管理が可能となり、むくみの改善が期待できます。

 

3)疾患に応じた治療

 ネフローゼ症候群や急性腎障害といった腎臓病では、多くの場合、その背景に原因があります。背景に多発性骨髄腫などの血液の病気や全身性エリテマトーデスなどの膠原病があれば、それに対する治療を行います。また、肺炎や新型コロナウイルス(COVID-19、SARS-CoV-2)感染症が原因で急性腎障害になったのであれば、感染症に対する治療を並行して行います。むくみだけに目を奪われすぎず、病態全体を見ることが肝要です。

 

 

【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)

市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医

 

略歴

2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修

2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科

2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学

2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業

2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教

2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任

その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任

 

最新の医学知識をわかりやすく発信し、地域の“かかりつけ医”として健康を支えます。
本記事は一般情報です。診断・治療は必ず医師の診察をお受けください。

 

 

「腎臓内科」に戻る

 

© 2025 市川駅前本田内科クリニック
当サイトの文章・画像の無断転載を禁じます。引用は出典明記・引用符・必要最小限・主従関係を満たす場合に限ります。
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME