健康診断や人間ドックで指摘される腎臓病の原因とは
健診や人間ドックの結果で、「eGFRが低下しています」と記載されていることをご覧になったことがあるかもしれません。また、要精密検査(要精査)となっていないまでも、血清Cre(クレアチニン)やeGFRの部分にC判定と書かれており、どういう意味だろうとお感じの方もいらっしゃるかと思います。また、こうした結果が届いたけれども何科に行けばよいのかわからないという方もいらっしゃるかもしれません。尿の異常全般や血液検査で指摘を受けた場合には腎臓内科や内科で相談をし、尿潜血のみであれば泌尿器科でもよいと考えましょう。
さて、続いて腎機能障害の意味を見ていきたいと思います。
腎機能が低下していると言われた場合、腎臓自体に原因があるのか、腎臓には問題がなくても腎臓に入ってくる血行が悪いなどの問題があるのか、尿の流れが悪くなり腎臓が悪くなっているのかを考えることになります。特に腎臓自体に問題がある場合には蛋白尿が見られる場合が多いのですが、腎臓に入ってくる血行が悪いだけでは尿異常は通常起こりません。
図.尿検査によりどの部位に原因があるかを考える
尿蛋白陽性かどうか、尿潜血といって尿の中に血液成分が混じっているかどうか、それらがプラスマイナス(±)なのか、1プラス(1+)なのか、2プラス(2+)なのか、3プラスなのか(3+)で考えられる病気は変わってきます。目で見てわかる血尿が見られる場合などは、尿路結石や尿路系の腫瘍などの可能性も考えることになります。尿蛋白の異常の場合は「血尿~ストレスや疲れだけが原因ではありません~」、尿潜血の異常の場合は「尿蛋白陽性と言われたら―蛋白尿の基準値や原因とは―」をご覧ください。
「腎臓病の原因は何ですか。アルコールでしょうか。」
「ストレスや食生活の乱れで腎臓が悪くなったんでしょうか。」
「普段は食事に気をつければいいのでしょうか。」
「子供が学校検診で再検査と出たのですが、遺伝はありますか。」
腎臓病の入院・外来診療では、こうしたご質問をいただくことが多いです。腎臓病は、20代までのお若い方の場合はたった一つの原因で説明される場合も少なくありません。例を挙げるならば、このような回答になります。
「おそらくはかぜをひいたことがきっかけで、IgA腎症という腎臓病を発症しました」
「のう胞という液体のたまった袋が腎臓にできる常染色体優性多発性のう胞腎という病気です。遺伝性の病気ですので、体質としてお持ちになっているということになります」(参考:「腎嚢胞に関連する症状」)
IgA腎症だけ、常染色体優性多発性嚢胞腎だけ、というように、腎臓病の原因が一つだけに絞られるというわけです。しかし、ご年齢を重ねてくると単一の病気で説明できない場合があります。
腎機能低下や尿異常、画像上の腎臓の形態異常などを含めて腎臓病と呼ばれます。腎臓病には複数の原因があることが少なくありませんが、わかりやすくこれを日本代表のサッカーに例えてみましょう。例えば、日本代表のサッカーでアウェーの試合で2-1のスコアで負けてしまった場合の敗因の分析では例えばこのようなものがあります。
1)相手のゲームメーカーの10番に自由に中盤でボールを持たれてしまい、10番からのパスでゲームを作られた
2)日本の左サイドバックが相手の中盤につりだされてしまい、スペースの空いた日本の左サイドを相手に使われた
3)時差ぼけで体調が本調子ではなかった
4)球際での弱さ、必死さが相手チームより劣っていた
この敗因分析の一つ一つの要素には、実は軽重があります。つまり、「敗因の主因は1)2)だが4)もある。オマケのような原因の一つとしては3)もある。」などです。こうした分析をすることで、次戦の対策に生かすわけです。
さて、腎臓病の原因を詳しく調べる腎生検という検査を行う場合にも、腎臓病の原因を詳細に分析します。例を挙げるならばこのようなものになります。
1)糸球体(尿を作る場所)の中のメサンギウムという領域が拡大していて、そこにIgAという免疫グロブリンがくっついている。IgA腎症と考えられる。
2)糸球体に入る血管をみると、初期の糖尿病による変化がみられる。
3)糸球体の中や周囲の血管をみると、動脈硬化性の変化がみられる。
腎生検というのは、多くの情報を得ることができ、例えば1)~3)のように得られた情報が列挙されます。このうち、どれが最も大事かを考え、重要性が高い順に対策を立てることになるわけです。例えば、「1)が主体であり、2)3)の変化もみられる」などです。
治療方針を決めるときには、1)に対してはこの治療薬、2)に対してはこの治療薬、3)に対してはこのような生活上の注意、というように分けて考えることになります。(参考:「慢性腎臓病の食事療法」)