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2025-26年 コロナワクチン定期接種-データから判断する-

[2025.09.25]

 2025年10月1日から2026年3月31日の期間、高齢者の新型コロナウイルスに対する定期予防接種が行われます。市川市にお住まいの皆様は、コロナワクチン接種の際に市川市からの補助があるため、自己負担額は少なめで接種を受けることができます。ここでは、その概要を説明いたします。

 

1.市川市のコロナワクチン接種

2.2025年でも高齢者はコロナ入院が多い

3.コロナワクチン接種はなぜ必要か―VERSUS研究-

4.過去数年の経過から学ぶコロナの波

5.諸外国のワクチン接種の状況

 

 

1.市川市のコロナワクチン接種

① 対象

 市川市に住民登録があり、下記に該当する方。

 ・65歳以上

 ・60–64歳で、心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限されている方、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方(身体障害者1級相当)【要申込】。

② 実施期間

 2025年10月1日〜2026年3月31日

③ 自己負担額

 7,000円(非課税世帯・生活保護は無料)

※ 予診票の右上に自己負担額の記載があります。

④ 回数

 1回のみ(2回目以降は任意で全額自己負担)

 

 当院でも接種を受けることができます。ワクチン接種に関する詳細を知りたい方は、市川市ホームページをご覧ください。

 

2.2025年でも高齢者はコロナ入院が多い

 図1は、2025年第9-14週(3-4月頃)における、日本のコロナ陽性者数と入院者数の年齢別比較です。60歳以上だけ入院者数が跳ね上がっていることがおわかりになると思います。入院するほどの重症者がいるということは、人工呼吸器やECMO(人工肺とポンプを用いた体外循環による治療)といった生命の危機に瀕した場合のみ行うような治療が行われるのも60歳以上では多いことが推察されます。高齢者では死亡に至ることも2025年の時点でもあることをご認識いただければと思います。

 

 若年者でも味覚障害や嗅覚障害、倦怠感などの後遺症が数か月以上にわたって続くこともあり、コロナにかかることは避けたいものです。高齢者では入院を要するほどの重症化はいまだに起こっているため、過去のものなどと油断しないことが重要です。

 

図1.2025年第9-14週における日本のコロナ陽性者数と入院者数

(国立感染症研究所感染症疫学センターのデータより作成)

 

3.コロナワクチン接種はなぜ必要か―VERSUS研究-

 長崎大学 熱帯医学研究所が中心となり、国内多施設共同・症例対照デザインのコロナワクチンの有効性を調べる研究が行われました。これをVERSUS研究と言います。

 

 

 2024年10月〜2025年3月のシーズン解析(第12報)では、2024年に公費接種が行われたJN.1対応1価ワクチンの効果が報告されました。65歳以上におけるコロナの発症予防効果は52.5%、60歳以上における入院予防効果は63.2%でした。「コロナワクチンを受けた方がコロナの発症・入院が減る」ことを日本人で、しかも直近のワクチンで示された意義深い研究です。

 

4.過去数年の経過から学ぶコロナの波

① 季節性と流行波

 コロナが5類感染症に移行した後も冬と夏に流行を繰り返しています。高齢者施設・医療機関での集団発生も続いており、2026年初めの冬の波に備えるという意味で2025年10~12月に接種を受けるということは理にかなっています。2026年夏への対策も考えて、長期効果が期待されるレプリコンワクチン(コスタイベ®筋注用)を選択する、というのもよいでしょう。

 

② 免疫は徐々に落ちていく

 既感染や過去接種による免疫は時間とともに減衰していき、免疫回避的な新系統(例:JN.1→XECやLP.8.1等)が出現する、ということを繰り返してきました。最新株に対応したワクチンのブースター接種を行うことで、VERSUS研究で示されたように発症・入院のリスクを下げることが期待できます。

 

5.諸外国のワクチン接種の状況

 コロナワクチン接種は昔の話で、いまどきヨーロッパではワクチンを接種していないのでは…という認識の方もいるかもしれません。高齢者のコロナワクチン接種は、諸外国ではどうなっているのでしょう。

 

 

 アメリカ疾病予防管理センター(英語:Centers for Disease Control and Prevention, CDC)の情報によりますと、2025年春までの時点でメディケア加入の65歳以上のブースター接種率は27.8%でした。また、イギリスの北アイルランドにおける75歳以上の春のブースター接種率は、地域別にもよりますが29–57%であり、年齢が高いほど接種率は高めという報告でした。EU諸国では、80歳以上/70-79歳/60-69歳の接種率でみると、スウェーデン 83.5%/62.2%/11.6%、フィンランド 69.7%/60.3%/11.9%など北欧諸国は高めで、ポルトガル56.4%/46.6%/13.6%、スペイン 36.9%/27.3%/7.3%と南欧諸国は中程度、ギリシャは最も低く、1.4%/1.7%/0.5%でした。ほとんどの国で高齢になるほど接種率が高く、理にかなった制度設計になっていると考えられます。

 

【関連記事】

2025-26年のコロナワクチン一覧(LP.8.1、XEC対応)

 

 

【監修医】

本田 謙次郎(Kenjiro Honda)

市川駅前本田内科クリニック院長/医学博士
東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
総合内科専門医・腎臓専門医・透析専門医・厚生労働省認可 臨床研修指導医

 

略歴

2005 年 東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院・日赤医療センターで初期研修

2007 年 湘南鎌倉総合病院 腎臓内科

2009 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)入学

2013 年 東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒業

2014 年 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 助教

2020 年 市川駅前本田内科クリニック開院・院長就任

その他 宮内庁非常勤侍医、企業産業医等(日本銀行・明治安田生命・日鉄住金建材 ほか)歴任

 

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