ヒトメタニューモウイルスについて
昨今、日本でも感染拡大・流行が懸念されているヒトメタニューモウイルス(英語:hMPV,human metapneumovirus)について説明します。
1.概要
2.感染経路
3.症状
5.潜伏期間
6.診断
7.治療
8.予防策
1.概要
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、2001年に初めて発見された呼吸器感染症の原因となるウイルスです。このウイルスは乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層に感染し、特に気管支炎や肺炎などの下気道感染を引き起こすことが特徴です。流行はインフルエンザやRSウイルスなどと同様に、主に3月頃から6月頃にかけて発生することが一般的です。
2.感染経路
感染者の咳やくしゃみを介して、空気中のウイルスを吸い込むことで感染する飛沫感染、ウイルスが付着した手で目、鼻、口に触れることによる接触感染と考えられています。
3.症状
発熱、鼻水(鼻汁)、鼻づまり(鼻閉)、咳、たん、のどの痛み(咽頭痛)のほか、気管支炎や肺炎を起こすこともあります。子供の間で広まりやすく、特に2歳以下の乳幼児は、気管支炎や肺炎を起こすことが多く、入院治療が必要となる場合があります。
4.大人が感染した場合の特徴
ヒトメタニューモウイルスは小児だけでなく、大人もうつります。健康な成人が感染した場合、通常は軽いかぜのような症状で済むことが多いです。鼻水、喉の痛み、咳などが主な症状で、数日から1週間程度で自然に回復する場合がほとんどです。ただし、高齢者や基礎疾患を持つ場合(心疾患や慢性閉塞性肺疾患など)、免疫力が低下している場合は、より重症な気管支炎や肺炎といった下気道感染に進行することがあります。
5.潜伏期間
感染すると通常、2~5日の潜伏期間を経て症状が現れます。インフルエンザは1~4日程度なので、インフルエンザよりは少し時間をおいてからうつるという印象です。
6.診断
6歳未満でヒトメタニューモウイルスを疑う場合には迅速抗原検査やPCR検査などによる診断方法があります。新型コロナウイルス(COVID-19、SARS-CoV-2)と同様の診断方法とお考え下さい。PCR検査は精度が高いですが、抗原検査の方が迅速に診断できます。なお、これらの検査は6歳以上では保険適応外になるため、症状から推測する形となります。
7.治療
ヒトメタニューモウイルスに対する特効薬はありません。そのため、治療は症状を緩和しつつ、自身の免疫力で回復していくことを待つことになります。症状が強い期間は、解熱鎮痛薬や咳止め(鎮咳薬)などを用います。また、重症例では、酸素投与を含めた入院治療を要することがあります。
8.予防策
新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどの対策と同様に、手洗いやうがいが重要です。また、特に感染が疑われるような症状がある人と接する場合、不特定多数の方と接触する場合には、マスクを着用することでウイルスへの暴露機会を減らすようにしましょう。