BQ.1、BQ.1.1、XBBー第8波につながる新たな変異株とはー
東京都、鹿児島県でXBB系統、神奈川県ではBQ.1株が確認されたのを皮切りに、新たな変異株蔓延により第8波が形成されつつあると考えられます。新たな派生型の変異株はどのような特徴があるのか、最新の世界の感染状況から解説したいと思います。
新規変異株が世界各国で検出
2022年10月、日本政府はBA.4/BA.5対応ワクチン接種を早急に導入することとしました。オミクロン株対応ワクチンをすすめている背景にあることは、① 各国で新規変異株(読み方:しんきへんいかぶ)が出現している、② 入国規制の緩和・円安により他国での新規変異株が時間をおかずに流入することが予想される、という2つの点です。変異株といっても別名を含めていろいろな名前・種類があって混乱しやすいので、重要な変異株のみご紹介していきます。
特に注意するべき株は、2022年9月以降アメリカで割合が急増しているBQ.1株、BQ.1.1株(通称 ケルベロス株)、同じ時期にシンガポールで認め急拡大しているXBB系統(通称 グリフォン株)です。BQ.1株、BQ.1.1株は欧米各国で感染を認めており、ワクチン接種や感染免疫による中和抗体からの逃避能が高い可能性が示唆されております。BQ.1株、BQ.1.1株の感染状況は、「新規変異株 BQ.1株、BQ.1.1株、BF.7株」をご覧ください。一方、XBB系統はインドやバングラデシュなどのアジア各国で確認され、ワクチン接種や感染免疫による中和抗体からの逃避能が高いことが示唆されています。他には、2022年6月にインドで確認されたBA.2.75株(通称 ケンタウロス株)なども日本国内での感染が報告され始めています。
シンガポールでコロナ感染者数・中等症以上患者数ともに増加
日本ではBA.5株によるいわゆる第7波が下火になってきていた2022年9月、シンガポールでは感染拡大を認めていました。図1はシンガポールにおける過去1年間の新型コロナウイルス感染者数を示しています。この時期は感染者数(陽性者数)が増加傾向の国はアジア各国では少なく、実は見る人が見ると違和感のある推移です。
下記はシンガポールにおいて、新型コロナウイルス感染症のためにICU以外の病床である一般床に入院していた人数を示しています。図1と図2を比較すると、ピークの時期も同じであり、概ね同じ推移をとっていることがわかります。
一方、図3は酸素投与が必要な患者数を示しています。酸素投与が必要であるということは、日本では中等症以上の患者ということになります。図1・2と図3を比較するとわかるように、これまでの日本の第7波までの感染拡大の時期と同様、感染者数が増えてから少しタイムラグがあって中等症以上の患者数が増えていることがわかります。ここではお示ししていませんが、ICU患者数は増加はあるものの頭打ちとなっており、感染力(伝播力)は強い可能性があるものの重症化までには至らない可能性が考えられています。
シンガポールで増加するXBB系統
このシンガポールの感染者数増加の背景には、XBB系統の増加が考えられています。ワクチン接種をしている、あるいは過去に感染したことがある場合でも再感染をきたしたため、感染者数が増加しているのではないかと推察されています。10月半ばの段階では日本国内での感染は認めていませんが、入国時の検疫で確認されています。今後注意が必要な変異株といえるでしょう。
ヨーロッパ各国で増加するBQ.1.1株
ヨーロッパ各国でも新型コロナウイルス感染者数の増加が見られています。図4はフランス・ドイツ・イタリアでのコロナ感染者数の推移です(JHU CSSE COVID-19 Data より引用)。フランスではBQ.1.1株の増加が見られており、10月のヨーロッパ各国の感染者数の増加もこの変異株が影響していると考えられます。
日本で陽性者数増加が認められれば新規変異株の拡大を考える
これまでの第7波までと同様、陽性者数の増加が見られた場合には、上述で紹介したものを含めた新規変異株が蔓延し始めた可能性を考える方がよいでしょう。その感染拡大が第8波と後に言われるようになる可能性は十分あります。2022年10月下旬の段階で札幌市を含めた北海道全体、秋田、山形、岩手の各県ではコロナ陽性者数が増加傾向にあります。いつから第8波が始まるのかとご心配の方もいらっしゃると思いますが、他都府県への波及が見られれば既に新規変異株が流行っている(市中感染している)可能性を考える必要があるでしょう。
10月下旬の時点で気温の低下と相まってか、かぜ症状の方が増加しており、コロナ陽性の方も今後増えてくるのではないかという印象があります。東北以北のコロナ陽性者数の増加傾向が日本全国に波及し、第8波が意外と早く到来するかもしれません。年内を含む年末年始に陽性者数増加が見られる可能性があります。
今シーズンはインフルエンザ感染の蔓延も予想されています。「2022年のインフルエンザ流行予測-大流行・コロナ同時流行はあるのか-」「アメリカでインフルエンザ/コロナの感染が拡大しつつある」でご紹介している通り、2022-2023年はインフルエンザの流行も懸念されていることから、この冬は十分に注意をした方がよさそうです。忘年会・新年会シーズンを迎えるにあたり、最新の情報を確認なさるようにしてください。
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