3回目ワクチン接種の副反応-ワキの痛みと腫れ・脇のリンパ節腫脹-
オミクロン株の蔓延が始まった中で、本邦でも3回目の新型コロナウイルスワクチン接種が始まりました。いつ接種するのかについては、当初2回目から8か月以上経過した段階でとされていましたが、5か月以上経過した時期で接種を受けられることとなっています。お住まいの自治体や2回目・3回目・4回目の接種時期にもよりますが、2022年10月の段階で、オミクロン株対応ワクチンの接種券や予診票、接種会場のご案内がお住まいの自治体から郵送されてきたという方も徐々に増えてきているかと思います。また、アメリカではBQ.1株やBQ.1.1株、BF.7株などの新規変異株の割合が急増しており、日本でも第8波の到来が懸念されております。
5回目の接種も可能となる方も出てくるようになり、ワクチンも様々な種類から選べる時代にかわってきました。オミクロン株対応ワクチンはBA.1株対応のものとBA.4/BA.5対応のものがありますので、どっちがよいか迷っておられる際には「【コロナ】オミクロンワクチンの効果と副反応/副作用-ファイザー・モデルナとBA.1とBA.4/BA.5の比較-」をご覧ください。
「2022年のインフルエンザ流行予測-大流行・コロナ同時流行はあるのか-」では、2022年10月時点でアメリカで割合が急増している新規変異株BQ.1、BQ.1.1、BF.7株と第8波の予測などをご紹介しています。いつ流行が始まるかなどご不安な方は、こちらで最新情報をご確認ください。
2022年1月の時点で、日本ではファイザー社、武田/モデルナ社の2種類のワクチンが使用されています。接種の意味については、2回目接種から時間が経過することで低下したコロナ抗体価を上昇させるといった効果が報告されています。一方で、安全性はどうなのか、ワクチンの後遺症はないのかなどの疑問を持たれ、打つべきか打たないべきか迷っておられる方もいらっしゃるかもしれません。今回は、副反応の発現頻度と接種後の注意点を見ていきたいと思います。
6.最後に
1回目・2回目の新型コロナウイルスワクチン接種後も接種した側の首や鎖骨周辺、脇(ワキ)の下のリンパ(頚部リンパ節・鎖骨上窩リンパ節・腋窩リンパ節と言います)の腫れ・腫脹を認めることがありました。3回目のワクチン接種後には、こうしたリンパ腺/リンパ節の腫れが1・2回目接種後よりも目立つことが報告されています。腫れるリンパ節はどこなのかを含め、ご紹介していきます。なお、体全体のリンパ節については、「痛くない首のしこり~リンパ腫の可能性も~」で説明しておりますので、こちらもご覧ください。
さて、当院でファイザー製の新型コロナウイルスワクチン接種をされた方においても、接種翌日に脇の下のリンパ節が腫れる、脇の下が痛い、あるいは脇を完全にしめようとすると痛いといった症状を呈する方が見られています。いずれの方においてもリンパ節の腫れ、脇が痛いあるいは脇の下が痛いといった症状は1週間程度で改善していました。なお、いずれの接種者も、1・2回目にはリンパ節の腫れは認めませんでした。症状がいつまで残るかについては個人差もあり、今後の調査が待たれるところですが、違和感は少し長めに続く可能性があります。なお、1・2回目の副反応については、「ファイザー製コロナワクチンの副反応の割合ー日本人のデーター」にまとめていますので、そちらをご覧ください。
さて、脇の下のリンパ節の腫れ、脇の痛みはどの程度の頻度で起こるのでしょうか。その他の副反応(ワクチンの場合は副作用のことを副反応と呼びます)を含めて、厚生労働省で示されたPMDAからの報告をお示しします(厚生労働省のHPより引用、一部改変)。
表1はファイザー製ワクチン接種後の副反応を示したものです。3回目のブースター接種後のリンパ節症、つまりリンパ節に関連した異常は5.2%でした。1・2回目の接種後ではリンパ節症の発現割合は0.4%でしたので、「1・2回目の接種後はリンパ節は腫れなかったのに、3回目の接種後にはリンパ節が腫れた」という方がある程度いらっしゃることがわかります。
経験的には、リンパ節が腫れる際に痛みを伴っていることが多い印象です。腫れや痛みの程度によって、数日~数週間続きます。女性に多い印象がありますが、男性でも起こるようです。また、沖縄県名護市にある北部地区医師会病院の調査では、3回目のファイザーワクチンを接種した670名のうち、3人に1人が脇の下のリンパの腫れを認めたということです。同院のホームページにおいて、ほとんどが2‐3日以内に改善したとも報告されました。
ワクチン接種後のリンパの腫れを認めた場合、ワクチン接種後の副反応以外にもリンパ節が腫れる病気があります。理由がはっきりしない場合、ご心配な場合は医療機関でご相談ください。
また、女性の場合は脇の下のリンパ節が腫れると、乳がん(乳癌)や乳腺症といった病気と見分けがつきにくいことがあるかもしれません。乳がんでは脇の下のリンパ節に転移が見られると、脇の下にしこりを触れることがあります。もし健康診断や人間ドックで乳腺のしこりを指摘された、乳頭から血液混じりの分泌物が見られている、過去に乳がんと診断された、などの場合には、病気あるいはその疑いがある側と反対側でワクチンを接種することを検討しましょう。自宅でセルフで脇脱毛を行っている、医療用脱毛を受けた後であるなどで、脇の下が赤い、痛いなどの炎症を疑う場合にも区別がしづらくなることがありますのでご注意ください。
なお、武田/モデルナ製ワクチン接種後の副反応は表2の通りです。武田/モデルナ製では1・2回目からリンパ節の腫れや痛みが見られる割合が高かったという特徴があります。現時点では、3回目だからリンパ節の腫れや痛みが目立つということは言えません。今後、3回目接種後の調査数が増えた段階で、念のため再評価をするのがよいでしょう。
ファイザー製であれ武田/モデルナ製であれ、注射を接種した部位の痛みは右側にしろ左側にしろ、1・2回目と同様に80%程度の方に見られます。腕が痛い、腕が上がりにくい、寝返りをうって接種した腕を下にすると痛みに気づくといった症状はほぼ必発と思って臨むのがよいでしょう。一般に、接種部位の痛みは1週間以内に改善します。接種翌日に症状が目立ちますが、その後徐々に和らいでいくことが特徴です。
3回目接種後の全身性の反応として、だるさや頭痛、筋肉痛も概ね40~60%の頻度で起きます。寒気や関節痛なども20~40%程度で起こりますので、誰しも出現してもおかしくない副反応です。発熱の程度によっては、寒気が強く感じられることがあります。
接種翌日にだるさが強く見られることがあったり、発熱が見られることがあったりします。特に発熱が見られる場合には、ワクチンの副反応なのかコロナにかかったのか判断に迷うことになります。接種翌日には遠出や体を使うようなご予定を入れないほうが無難かもしれません。
当院スタッフの最新のオミクロンワクチン(オミクロン株BA.4/BA.5対応コロナワクチン)接種後の副反応をご紹介します。
・接種時
- 皮下注射のインフルエンザワクチンの際には薬が入る時の軽い痛みがあったが、コロナワクチン接種では以前と同様痛みがなかった。
・接種翌日
- 接種部位の痛みは寝返りのときだけ気になるものの、普段はあまり気にならない程度で、インフルエンザワクチン接種を同じ程度の軽いものだった。
- 36.8-37.0℃程度までの微熱。
- 少し眠気がある程度の軽いだるさ。
- 軽い頭痛が2回ほどあったが、いずれも10分程度で薬を飲むほどではない。
- 前回接種時に見られた接種部位の発赤や腫れはない。
・接種翌々日
- 接種部位の痛みは寝返りのときだけ気になるものの、普段はあまり気にならない程度で、インフルエンザワクチン接種を同じ程度の軽いものだった。
- 接種した側の脇をしめると、しめる角度によっては脇の下が少し痛いことがある。夕方以降にひきつれるような痛みを感じるようになった。
これはあくまで一人の経験ですので、副反応には個人差があることが一般的です。ご参考にとどめておくようにしてください。
ワクチン接種後の副反応には個人差があります。1・2回目よりも3回目以降の方が副反応が軽かったという方もいらっしゃれば、3回目以降の方が接種翌日の熱が高くなったという方もいらっしゃるなど様々です。データを参考にしながら、心の準備をしておくとよいでしょう。
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