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2024-25年のインフルエンザ流行予測

[2024.09.20]

2024-25シーズンのインフルエンザの流行予測

 図1は2024年9月までのオーストラリアにおけるインフルエンザの感染状況を示しています。横軸は1年間の週数を示しており、一番左は1月、一番右は12月です。縦軸はインフルエンザの感染者数を示しています。日本での夏の時期は南半球であるオーストラリアにおける冬にあたるため、半年間ずれて似たようなインフルエンザの流行状況になっています。

 

 2023年のオーストラリアでのインフルエンザの感染状況は紺色で示される経過です。昨年のオーストラリアでは、早い段階でインフルエンザ感染が始まり、長期間続くという特殊なパターンでした。昨年、2023年の日本も、インフルエンザの大流行が見られた年でした。昨年の日本では、2023年9月から2024年1月初めまでインフルエンザA型が蔓延し、2024年1月から3月までB型が流行しており、早い段階から流行が始まり長期間続くという、オーストラリアと類似のパターンをとっていたことがわかります。

 

図.2024年のオーストラリアにおけるインフルエンザ感染状況

(Australian Government Department of Health and Aged CareのHPより引用、一部改変)

 

 2024年の日本のインフルエンザの流行はどうなりますか、というご質問をよくいただきます。図のエメラルドグリーンで表示されている2024年の報告件数をご覧ください。2024年9月時点でのオーストラリアの最新の情報からは、2023年、2017年と比べると、4つの特徴があげられます。

 

【2024年のオーストラリアの感染状況の特徴】

 ・流行の開始(立ち上がり)は2023年と同程度の時期

 ・ピーク時の感染者数は2022年と同程度に高い

 ・ピーク時期は2023年よりやや遅い

 ・ピーク時期は2017年より早め

 

 以上の情報から、予想される日本でのインフルエンザの流行予想は下記の通りです。

 

【流行開始】

 2024年は、2023年ほど流行時期が早いわけではないのですが、秋を感じる頃から感染が始まることが予想されます。9月から流行が始まった昨年よりはやや遅くなるものの、散発する程度で見られるのは10月頃から見られる可能性があります。

【ピーク時の蔓延状況】

 コロナ禍で人類が学んだことは、「コロナ時の行動制限が解除された後は、コロナ以外の多くの感染症がかなり流行する」ということでした。2022年のオーストラリア(図の水色)や昨年である2023年の日本のインフルエンザの蔓延は、行動制限の解除の影響も反映されていたことが考えられます。つまりは2022年と2023年については、国別のコロナ対応としての行動制限解除の差を考慮しなければなりません。

 とはいえ、今年のオーストラリアのピーク時の感染者数がかなり多いことを踏まえると、日本でも流行のピーク時には相当な感染者数になることが予想されます。

【ピークの時期】

 続いて、ピークの時期についてです。茶色で示される2017年は、日本では年明けの1-2月に流行したシーズンです。オーストラリアにおける2017年と今年を比較すると、今年の方が7週間程度流行のピークが早かったことになります。これを踏まえると、今シーズンの日本では年末付近で流行のピークがくるかもしれません。感染者数が顕著に増加し始める(グラフでいう流行の傾きが急峻になる)時期からピークまでは6週間程度と考えられるため、秋が深まる頃から感染者数が顕著に増加する可能性が考えられます。

 

 すなわち、現時点では長期間に及ぶかは何とも言えませんが、流行のピークではかなり感染者数が増えること、昨シーズンである2023-24シーズンほどは流行は長期化しないことが予想されます。2025年に入ってからではなく年内からインフルエンザの流行が始まることが予想されますので、お早めにインフルエンザワクチンの接種をお済ませください。

 なお、コロナの行動制限時または制限解除後の各種感染症の蔓延状況で示されたように、感染症の流行は社会の状況や別のウイルスの流行状況によって変化します。上記の予測はあくまで参考とお考えください。

 

2024年はインフルエンザワクチンが重要である理由

 2024年は鳥インフルエンザが世界各国で報告されています。アメリカでは牛の間でインフルエンザが蔓延し、ヒトへの感染例も複数報告されました。当院ブログにございます「アメリカ合衆国における鳥インフルエンザ(H5N1)の感染状況」、「メキシコでの鳥インフルエンザ死亡例の報告」をご覧ください。ヒト→ヒト感染がひとたび始まれば、一気に大流行となる可能性があります。また、新規のインフルエンザでは毒性の強いインフルエンザ株となる可能性もあるため、各国政府はかなり緊張感を持って対応にあたっています。

 

 

 当院での診療状況としては、2024年7-8月は、インフルエンザA型の陽性例が散見されておりました。いずれの場合も重症化の所見がないかどうか、鳥インフルエンザ蔓延の兆候ではないかなど、かなり注意を払って診察をしておりました。鳥インフルエンザ流行への懸念からは、2024-25シーズンはインフルエンザワクチン接種が重要になってくるものと考えられます。

 

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