腎盂腎炎
「腎盂腎炎を知恵袋で調べるとやばい病気と書かれていたのですが大丈夫でしょうか」、「どのくらいで治るのですか」「いつからかかっていたのでしょうか」などのご質問をいただくことがあります。腎盂腎炎について、原因やチェックするべき症状、治療法などを見ていきたいと思います。
1.腎盂腎炎とは
2.腎盂腎炎の原因
3.腎盂腎炎の症状
6.腎盂腎炎の治療
腎盂腎炎(読み方:じんうじんえん)は、腎盂炎(読み方:じんうえん)とも呼ばれ、腎臓から尿を作られて集まられる場所である腎盂やその周辺を中心に腎臓に細菌感染が及んで炎症をきたす病態を言います。腎臓は血流豊富な臓器ですので、血流を通って全身に細菌がぐってしまう菌血症や敗血症といった生命の危機が及ぶ状態にもなりえます。このため、腎盂腎炎は重症として対応する必要があります。
腎盂腎炎の前触れとして膀胱炎が見られることが一般的です。このため、膀胱炎を繰り返している場合にはこの時点で何らかの対応が望ましいでしょう。女性に多い膀胱炎が悪化して起こることが多いため、腎盂腎炎も女性に起こりやすい病気といえます。腎盂腎炎になれば尿の中に細菌が見られることが一般的ですが、その尿を誰かが触れることは普通はないはずですので、周囲にうつるというタイプの病気ではありません。
ストレスで腎盂腎炎が起こるわけではありませんが、忙しい仕事のためになかなかトイレに行けないことがきっかけで膀胱炎となり、膀胱炎が悪化して腎盂腎炎になるということもあります。こうした場合は仕事のストレスが原因のようにも見えるかもしれません。また、性行為後に膀胱に細菌が膀胱内に一部侵入し、膀胱炎を起こすこともあります。性行為後に水分を摂って排尿すると膀胱炎は起こりにくくなります。なお、性行為が原因というと性感染症(いわゆる性病)を連想しがちですが、膀胱炎とは別の病気ですので注意しましょう。
腎盂腎炎の典型的な症状は、発熱と腰痛、さらに典型的には腎臓付近をたたくと痛みを感じる叩打痛というものです。腎臓の実質全体に炎症が起こりますので、ざっくりと腎臓付近を叩くと痛みを生じます。また、発熱に伴って頭痛が見られたり、寒気や悪寒、だるさ、倦怠感として感じることもあります。発熱自体は高熱が見られることが典型的です、最初は微熱程度のこともあります。膀胱炎の後に発熱が見られはじめた場合には、左右の腰のやや上付近をたたいて痛みがないかどうかチェックをするようにしましょう。
腎盂腎炎には明確な診断基準があるわけではなく、検査や診察上の所見を総合的に判断します。診断のための検査方法は、まず血液検査と尿検査です。血液検査では炎症反応の数値が高くなるほか、尿検査では尿中に白血球が見られます。なお、当院の院内迅速機器でしたら、数分で尿中に白血球があるかどうかや炎症反応の数値を確認することができます。CTでは炎症を起こしている腎臓周囲の脂肪組織の濃度上昇が見られます。
腎盂腎炎で重要なことは、自己判断で診断する、あるいは治療方針を考えることは大変危険であるという点です。常染色体優性多発性嚢胞腎でよく見られる腎嚢胞感染や腎膿瘍、腎梗塞など、似たような症状を呈する病気があります。診断によって治療方針が大きく変わります。
例を挙げてみましょう。感染性心内膜炎と呼ばれる心臓の弁に細菌がついて発熱を呈する病気がありますが、心臓の弁についた細菌の塊が腎臓にとんでいくと腎梗塞を起こして腰痛が見られることがあります。つまり、感染性心内膜炎+腎梗塞では、腎盂腎炎でみられる発熱と腰痛という二大症状が見られうるということになります。感染性心内膜炎は腎盂腎炎よりも抗菌薬(抗生物質を含む)を長期に使ったり、複数の抗菌薬で治療を開始したりする必要があります。時には心臓の弁をとりかえる開胸手術が必要になるなど、腎盂腎炎よりも重症と考えられる病気です。
腎嚢胞感染は腎盂腎炎よりも治療期間が長くなり、腎盂腎炎と同様に治療を行うと高率に再燃します。以上からわかるように、診断・治療は必ず医療機関の指示に従うことが重要です。
腎盂腎炎は、単純性腎盂腎炎と複雑性腎盂腎炎に大別されます。基礎疾患という、背景に何らかの病気があって腎盂腎炎を起こしている場合を複雑性腎盂腎炎とよび、単純性腎盂腎炎は基礎疾患のないものです。
複雑性腎盂腎炎における基礎疾患には、尿路系の基礎疾患と全身性の基礎疾患があります。
・尿路系の基礎疾患
膀胱尿管逆流、膀胱留置カテーテル使用中、尿路結石、尿路奇形、神経因性膀胱、など
・全身性の基礎疾患
糖尿病、移植後や膠原病などの治療として免疫抑制薬使用、慢性腎臓病などの腎疾患、など
腎盂腎炎には、比較的短期間で治る急性腎盂腎炎と、治療に反応しなかったり症状を繰り返す慢性腎盂腎炎に大別されます。腎盂腎炎は放置しておけば自然治癒するものではなく、抗菌薬による治療が必要となります。治療期間は個人差があるものの、膀胱炎では4-5日間、腎盂腎炎では10-14日間程度が目安です。
なお、細菌感染に対する抗菌薬治療の他、腎盂腎炎に至る原因が何であるかという点も再発防止という点で重要です。
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